栄養素辞典
脂肪酸
健康レシピ
2015年06月29日掲載
体内で脂肪として蓄えられる脂肪酸は、主にエネルギー源となったり、細胞膜やホルモンを形成する材料となったりと、私たちの生活にはなくてはならない栄養素です。しかし、摂りすぎると肥満や生活習慣病の原因となり、不足すると体のさまざまな機能に支障が出てきます。健康維持のためには、いろいろな脂肪酸をバランスよく摂取することが重要です。
脂肪酸は、脂質を構成する重要な化合物で、主に炭素(C)の長いつながりに、メチル基(-CH3)とカルボキシル基(-COOH)が結合したものを言い、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に区別されます。飽和脂肪酸とは構造上に炭素原子の二重結合がないもの、不飽和脂肪酸は二重結合があるもので、その中でも二重結合がひとつのものを「一価不飽和脂肪酸」、ふたつ以上あるものを「多価不飽和脂肪酸」と呼んでいます。
脂肪酸の特徴
飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 |
---|---|
常温で個体の「脂」 | 常温で液体の「油」 |
バター、マーガリン、ラードなどの動物性食品 | なたね油、オリーブ油、ごま油などの植物油や魚の脂 |
酸化されにくい | 酸化されやすい(酸化物はがんの原因に) |
エネルギー源、細胞膜の材料となる | エネルギー源、細胞膜、ホルモンの材料となる |
過剰摂取:悪玉コレステロールや中性脂肪が増加し、肥満や動脈硬化などの原因となる 摂取不足:体内コレステロールが不足し、血管が弱くなって脳出血などの原因となる |
適量:余分な中性脂肪やコレステロールを下げる 過剰摂取:肥満や脂質異常症などの原因となる |
脂肪酸の特徴
飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 | |
---|---|---|
バター | 66.3% | 33.7% |
マーガリン | 24.1% | 76.1% |
牛脂(ヘッド) | 38% | 62% |
豚脂(ラード) | 52.9% | 47.1% |
綿実油 | 27.3% | 72.7% |
大豆油 | 13.4% | 86.6% |
サフラワー油(紅花油) | 9.7% | 90.3% |
サンフラワー油 | 7.5% | 92.5% |
オリーブ油 | 13.1% | 86.9% |
ごま油 | 15.1% | 84.8% |
必須脂肪酸とは
必須脂肪酸には、リノール酸、α-リノレン酸、リノール酸から合成されるアラキドン酸、α-リノレン酸から合成されるEPAとDHAがあります。これらは体内で合成できないため、食事から摂取しなくてはなりません。
必須脂肪酸が不足すると、疲労感、体力不足、皮膚の病気、頭の働きが悪くなる、炎症や出血が起こりやすくなる、不妊、流産、臓器の病気といった症状が現れる恐れがあります。特に、発育期のお子さんの摂取は大切です。
必須脂肪酸の1日の必要量は、総エネルギー摂取量の3%程度と言われています。
代表的な脂肪酸とその特徴
«飽和脂肪酸»
・パルチミン酸:バター、ごま油、大豆油、オリーブ油に多く含まれる
・ステアリン酸:豚脂(ラード)、牛脂(ヘッド)に多く含まれる
血中コレステロールを増やす作用があるため、摂りすぎると生活習慣病の原因となる。
«不飽和脂肪酸»
一価不飽和 脂肪酸 |
n-9 系列 |
・オレイン酸:オリーブ油、キャノーラ油に多く含まれる 有害な過酸化脂質を作りにくい、血中コレステロールの削減を行う、胃酸の分泌調整、腸の運動を高めるなどの作用がある。 |
---|---|---|
多価不飽和 脂肪酸 |
n-3 系列 |
・α-リノレン酸:しそ油、えごま油に多く含まれる 体内でEPA・DNAを合成、血中の中性脂肪を減らす、血圧値を下げるなどの作用がある。 ・EPA(エイコサペンタエン酸):青魚に多く含まれる 血栓を溶解させ脳梗塞などを予防、悪玉コレステロールを減らす・善玉コレステロールを増やす、血管拡張、血中の中性脂肪を減らすなどの作用がある。 ・DHA(ドコサヘキサエン酸):青魚、マグロの目に多く含まれる 悪玉コレステロールを減らす・善玉コレステロールを増やす、脳・神経機能を高める、血圧値を下げる、血中の中性脂肪を減らす、炎症を抑制する、などの作用があり、不足すると、記憶力低下や発育不良などの原因となる。 |
n-6 系列 |
リノール酸:サフラワー油(紅花油)、綿実油、大豆油、コーン油に多く含まれる 体内でのγ-リノレン酸・アラキドン酸合成、血中コレステロール値を減らす(悪玉コレステロールだけでなく善玉コレステロールも減る)作用がある。不足すると、成長阻害や皮膚障害などの原因となり、摂りすぎると、がん、アレルギー症状、心臓疾患、老化などの原因となる。 γ-リノレン酸:母乳、月見草油に多く含まれる 血糖値・血圧値・血中コレステロール値を下げる、血栓を作りにくくし血液の流れを良くするなどの作用がある。 アラキドン酸:レバー、卵白、サザエに多く含まれる 免疫系の機能の調節、病気に強い体作り、血圧の調整を行う等の作用があり、摂りすぎると、動脈硬化や高血圧、自己免疫疾患などの原因となる。 |
※科学構造上のメチル基(-CH3)から数えて、最初の炭素原子の二重結合が3つめにあるのがn-3系列(多価)、6つめがn-6系列(多価)、9つめがn-9系列(一価)となります。
脂肪酸の理想的な摂取比
飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:4:3
系列からみる脂肪酸のバランス
n-3系列からn-6系列の脂肪酸を造ることはできず、またn-6系列からn-3系列の脂肪酸を造ることもできません。これらの脂肪酸がバランスを崩すと、血栓性疾患、がん、アレルギーなどを引き起こす原因となってしまうので、いずれもバランスよく摂る必要があります。
しかし、現代の食生活においては、n-6系列の脂肪酸は過剰気味、n-3系列の脂肪酸は不足気味という傾向があるようです。
脂肪酸の理想的な摂取費
n-3 脂肪酸:n-6 脂肪酸=1:4
脂肪酸の1日の摂取基準
年齢 | 男性 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
飽和脂肪酸 | n-6 系脂肪酸 | n-3 系脂肪酸 | ||||
目標量 (%エネルギー) |
目安量 (g/日) |
目標量 (%エネルギー) |
目安量 (g/日) |
目標量 (g/日) |
||
0~5(カ月) | - | 4 | - | 0.9 | - | |
6~11(カ月) | - | 5 | - | 0.9 | - | |
1~2(歳) | - | 5 | - | 0.9 | - | |
3~5(歳) | - | 7 | - | 1.2 | - | |
6~7(歳) | - | 8 | - | 1.6 | - | |
8~9(歳) | - | 9 | - | 1.7 | - | |
10~11(歳) | - | 10 | - | 1.8 | - | |
12~14(歳) | - | 11 | - | 2.1 | - | |
15~17(歳) | - | 13 | - | 2.5 | - | |
18~29(歳) | 4.5以上7.0未満 | 11 | 10未満 | - | 2.1以上 | |
30~49(歳) | 4.5以上7.0未満 | 10 | 10未満 | - | 2.2以上 | |
50~69(歳) | 4.5以上7.0未満 | 10 | 10未満 | - | 2.4以上 | |
70以上(歳) | 4.5以上7.0未満 | 8 | 10未満 | - | 2.2以上 |
年齢 | 女性 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
飽和脂肪酸 | n-6 系脂肪酸 | n-3 系脂肪酸 | ||||
目標量 (%エネルギー) |
目安量 (g/日) |
目標量 (%エネルギー) |
目安量 (g/日) |
目標量 (g/日) |
||
0~5(カ月) | - | 4 | - | 0.9 | - | |
6~11(カ月) | - | 5 | - | 0.9 | - | |
1~2(歳) | - | 5 | - | 0.9 | - | |
3~5(歳) | - | 6 | - | 1.2 | - | |
6~7(歳) | - | 7 | - | 1.3 | - | |
8~9(歳) | - | 8 | - | 1.5 | - | |
10~11(歳) | - | 9 | - | 1.7 | - | |
12~14(歳) | - | 10 | - | 2.1 | - | |
15~17(歳) | - | 11 | - | 2.1 | - | |
18~29(歳) | 4.5以上7.0未満 | 9 | 10未満 | - | 1.8以上 | |
30~49(歳) | 4.5以上7.0未満 | 9 | 10未満 | - | 1.8以上 | |
50~69(歳) | 4.5以上7.0未満 | 8 | 10未満 | - | 2.1以上 | |
70以上(歳) | 4.5以上7.0未満 | 7 | 10未満 | - | 1.8以上 | |
妊婦の方 | - | +1 | - | 1.9 | - | |
授乳期の方 | - | +0 | - | 1.7 | - |
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。