関西の専門医が語るドクター's コラム
末梢前庭系|めまいの症状と病気
病気・症状と予防
2013年04月01日掲載
めまいの症状と病気・治療方法[1]:末梢前庭系めまい
頭を大きく動かしたときなどにおこる回転性のめまい(聞こえの症状:なし/1回:10~20秒)
≪良性発作性頭位めまい≫
突然のめまい(回転性・数秒間)が、寝返り・起床動作・着床動作などの頭の動きを伴う動作により、反復して起こります。聴こえの症状(耳鳴り、難聴)はありません。嘔吐を伴うこともありますが、神経症状はありません。多くの場合、1週間ほどで徐々に改善してゆき、9割は3カ月以内に完全に治ります。
良性発作性頭位めまいは、もっとも多いめまいであると同時に、治りやすいめまいでもあります。
ある程度落ち着いてきたら、積極的に体を動かすようにすることで、より改善を促します。めまいを恐れておとなしくし過ぎると、かえって長引くこともあります。
原因 | 多くは不明ですが、心理的・肉体的なストレスや過労も誘引になるとされます。 |
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病態 | 耳の中の「内耳」にある“耳石”という小さな石が、本来の位置から外れ、頭を動かすたびに内耳の中を転げ回るために、めまいが起こるとされています。 |
治療 | 「めまい止め」が有効です。循環改善剤、ビタミン剤、抗不安薬なども使用します。また、専門の医師であれば、「浮遊耳石置換法」という理学療法を行うこともあります。この方法によれば、1回ですっかり治ることもあります。症状が落ち着いてからは、リハビリも有効です。 |
耳鳴りや難聴を伴う回転性のめまい(数時間~数日続く)
≪メニエール病≫
回転性のめまいが数10分~数時間続いたり、耳鳴りがしたり、難聴(単に耳が詰まった感じのこともある)になったり、これらが同時に突然起こります。この3つは「メニエール3徴」と言います。
多くは嘔吐を伴いますが、神経症状はありません。亜型では、全ての症状が揃わないこともあります。
数週間から数か月の間隔でそれを反復します。耳の症状は反復するうちに徐々に悪化する傾向があり、めまいはなくとも耳鳴りや難聴が残ることがあります。3分の1程度で、片耳だけではなく両耳に起こることもあります(発作のタイミング、病気の程度は左右それぞれ別個です)。
原因 | 不明です。心理的・肉体的なストレスや過労が誘因になることも多くあります。 また、ときに雨や台風などといった天候の影響を受けることもあります。 |
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病態 | 耳の中の「内耳」の水ぶくれ(内リンパ水腫)です。 |
検査 | グリセオールテストといって、グリセオールの点滴をすると改善することがあります。 |
治療 | 内リンパ水腫の改善にはイソバイドなどの利尿薬を使うほか、循環改善剤、ビタミン剤、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を使います。症状に対して、めまい止め、吐き気止めを使います。また、精神安定剤も有効です。場合によっては手術をすることもあります。 |
※「突発性難聴」の約半分に一過性の単発のめまいを伴い、メニエール病との区別が困難な場合があります。治療はメニエール病とほぼ同じですが、利尿剤は使わず、プロスタグランジンを使います。早く(1週間以内)治療を開始しないと難聴が残ってしまうこともあります。
鼻をかむなどしたときおこる難聴を伴うめまい
≪外リンパろう≫
めまいと難聴(+耳鳴り)が突然起こります。反復はせず、神経症状もありません。
めまいはフラフラした動揺感が続くことが多く、徐々に悪化したり、悪化と改善とを繰り返すことがあり、変動します。難聴はしばしば進行または変動し、水の流れる感じ(音)がする場合もあります。
鼻をかむなどしたときに《耳の中で何かがはじけるような“ポンッ”という音や感覚があって、その後から耳が聞こえにくくめまいが続く》というような場合には、とくに疑わしいめまいです。
原因 | 耳の中の「内耳」にある、リンパを入れた袋が弾けて、リンパ液が中耳に漏れ出してしまう病気です。 |
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病態 | 鼻をかんだり、重いものを持ったり、排便の際に力んだりすることで起こります。そのほかに、くしゃみ、咳、などの日常動作でも起こるほか、ダイビング、飛行機など、空気圧の変化でも起こります。また、交通事故、頭部打撲、平手打ち、耳かき事故、などの外傷で起こることもあります。 |
検査 |
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治療 |
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激しいめまいと嘔吐を伴うめまい(聞こえの症状:なし/数日以上続く)
≪前庭神経炎≫
突然、激しい回転性のめまいが起こり、多くは嘔吐を伴います。激しい発作は初めの1回だけですが、その後も回転性めまいが数日間続き、起き上がれない状態になります。1週間ほどで通常の生活に戻ることができ、めまいは通常1カ月以内に軽快します。
しかし、その後も2~3カ月間軽いめまいがあり、ふわふわした浮遊感はさらに数カ月続くこともあります。耳鳴り・難聴などの聴こえの症状はありません。
原因 | 不明ですが、ウイルス感染説が有力とされています。 |
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病態 | 耳の中の「内耳」の情報を脳に伝える「前庭神経」の炎症と考えられています。 |
治療 | めまい止め、吐き気止めのほか、抗不安薬、循環改善剤、ビタミン剤などを使います。症状が落ち着いてくれば、積極的に身体を動かしてリハビリをします。 |
ドクター's コラム「めまい」
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