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関西の専門医が語るドクター's コラム

腰椎椎間板ヘルニアとは

伊東 信久

執筆:伊東くりにっく 院長

肉体的、精神的な負担が少ない椎間板ヘルニアのレーザー治療(PLDD)を専門としたクリニックを開院し、腰痛に悩む多くの方に向けてその原因や適切な治療法を知ってほしいとweb上での無料相談にも応じている。テレビ、ラジオ番組への出演も多く、2008年には書籍「Dr.イトーのせつない腰痛すっきり解消」を発表している。

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腰椎椎間板ヘルニアとは

人間の背中には26個の骨が、積み木のように重なる脊椎がありますが、それらの骨と骨の間でクッションのような役割を果たしているのが椎間板です。椎間板ヘルニアとは、本来あるべき位置から椎間板が飛び出して神経を圧迫し、腰や足に激しい痛みやしびれを引き起こす症状を言います。腰痛の方のうち、2~3割程度の方が腰椎椎間板ヘルニアを発症しているとのデータもあります。ではなぜ、椎間板が傷んでしまうのでしょうか。

私たち人間の肌は、若い頃はハリや弾力があっても、年齢を重ねるごとに、弾力がなくなったり、シワができたりします。椎間板にもそれと同じことが起こるのです。若い頃は水分を豊富に含んで、ふっくらとしていた椎間板も、年齢を重ねるごとに弾力がなくなっていきます。年齢を重ねて弾力を失った椎間板は、圧力などが加わると、壊れやすくなってしまいます。とくに問題になるのが、腰の椎間板です。重力は下に行けば行くほど大きくかかります。脊椎の下のほうに位置する腰椎の椎間板は、頭、胴、腕などの重みを一身に負っているため、腰の椎間板に症状が出やすくなります。

腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛の症状は、どの部分の椎間板が本来の位置から飛び出し、神経を圧迫しているかによって異なります。もちろん、腰痛の症状が出ている場合は、MRIで診断をしなければ、詳しいことは分かりません。たとえ医者であっても、症状だけでは間違いなく原因を突き止めるのは難しいのです。

腰椎は5つあり、上から第1腰椎、第2腰椎、第3腰椎、第4腰椎、第5腰椎と名前が付けられています。
腰椎の間の椎間板は、英語でLumbarなので、その頭文字を取って、第1腰椎と第2腰椎の間の椎間板ならL1/2、3と4の間にあるものならL3/4と呼ばれます。一方、第5腰椎と仙骨の間にある椎間板は、仙骨の英語名Sacrumの頭文字をとってL5/Sと呼ばれます。

≪発症部位と症状≫

・L1/2の腰椎椎間板ヘルニア
腰の上あたりに痛みが出ることが多い部位です。
・L2/3の腰椎椎間板ヘルニア
足の付け根やそけい部が痛んだり、だるくなったり、ときにはしびれたりします。
・L3/4の腰椎椎間板ヘルニア
太ももの前の部分が痛んだり、だるくなったり、時にはしびれたりします。
・L4/5の腰椎椎間板ヘルニア
腰痛の原因の中で、圧倒的に多いのがこの部分です。骨は、下にあるほど重力がかかりますから、痛みやすいのです。その上、腰を曲げるのがこの部分になるため、圧力がかかりやすく、傷みやすいのです。症状としては、おしりから太ももの横、膝の下や、外側のすねが痛んだりしびれたりします。親指の力が入らなかったり、足首があげられなくなります。
・L5/Sの腰椎椎間板ヘルニア
おしりの真ん中、太ももの裏、ふくらはぎ、かかとから足の裏、足の小指がしびれたり痛んだりします。アキレス腱の反射が弱くなり、つま先歩きができなくなります。ただし、腰椎椎間板ヘルニアであっても、足の症状が出ない方もいます。進行によって症状が悪化しますので、ご注意ください。

≪腰椎椎間板ヘルニア進行例≫

1. 腰の痛み(ぎっくり腰などで急激に起こる場合も含む)
2. おしり、太もも、足の裏など、下肢のしびれ
3. 歩行困難(つえ、車いすを使用)
4. 排尿困難

腰椎椎間板ヘルニアの自己チェック法

MRIで撮影すると腰椎椎間板ヘルニアかどうかはすぐに分かります。したがって、病院へかかることをおすすめしますが、簡単な自己チェック法をご紹介します。腰椎椎間板ヘルニアで一番有名な診断方法は、下肢伸展挙上試験(かししんてんきょじょうしけん)というものです。難しい名前ですが、簡単に言えば、「足が上がるかどうか」のテストです。

仰向けになり、膝を伸ばしたまま片足を上げます。健康な人なら70度以上は軽く上がりますが、腰椎椎間板ヘルニアがある場合は、20~30度上げただけで痛みがあり、それ以上は足が上がりません。ただし、90度くらい軽く上がる人でも、腰痛があるためMRIで調べてみたら、腰椎椎間板ヘルニアだったということもありますので、やはり病院にかかることが大切です。

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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