関西の専門医が語るドクター's コラム
うつ病とは
病気・症状と予防
2013年04月01日掲載
執筆:医療法人栄仁会 宇治おうばく病院
京都は宇治の自然に囲まれたロケーションにあって、精神科急性期疾患、認知症、うつ・ストレス疾患、高齢者の内科疾患、精神症状のある方の身体合併症の治療を行っている。
どんな人であっても「気分」は常に一定を保てる訳ではなく、大小に関わらず浮き沈みがあるものです。「調子の良いとき・悪いとき」「元気のあるとき・無いとき」といった気分の浮き沈みを繰り返すはずが、沈み込んだままで、なかなか回復しないときもあります。そんなときは「うつ病」という“気分障害”になっているのかもしれません。
うつ病とは
うつ病は感情や思考、意欲といった心理面に影響する「精神症状」と、体調に影響する「身体症状」に大別できます。精神症状としては「気分が憂うつ」「不安・心配になる」「いらいらして落ち着かない」「何事にもやる気・興味がわかない」といった状態が続き、重くなってくると訳もなく自分を責めたり、自分の存在を否定したりすることもあります。身体症状としては「頭が重い」「肩がこる」「動悸が激しい」「食欲や性欲がわかない」「夜も眠れない」といった影響が現れます。
うつ病は「心の風邪」とも言われ、誰にでも起こりうる病気です。最近の調査では、およそ15人に1人がうつ病を経験していることになるというデータもあります。また、社交的・まじめ・几帳面・責任感が強い・仕事熱心といった性格の方のほうが、うつ病になりやすいと言われています。
ドクターズメモ
うつ病発症のメカニズム
人の心を「ダム」に置き換ると分かりやすくなります。ダムは雨が降ると水が貯まり、水の量が増えると、ゲートを開いて放水します。しかし、水が貯まり過ぎたり、ゲートが開きにくくなったりすると、水が溢れて洪水が起こります。
これをうつ病のモデルとして考えると、雨や水は私たちが日常生活の中で受ける情報や刺激、さまざまな出来事に置き換えられます。ダムはそれらの情報や刺激を受け止める私たち自身の心の状態。そしてゲートは、情報や刺激、さまざまな出来事への対処法や処理能力となります。つまり、うつ病とは情報や刺激を心の中に貯め込み、正常に対処できなくなった状態といえます。
うつ病の経過
うつ病になると「このまま治らないかも知れない」と考えてしまいがちです。だからこそ、うつ病がどのような経過をたどる病気なのかをあらかじめ知っておきましょう。
1. いろいろな情報や刺激(ストレスやプレッシャー)が重なってきます。それらへの対処を出来る限り懸命に行います。※まじめ・几帳面な性格の方がうつ病にかかりやすいと言われるのはそのためです
2. 疲労が蓄積したり、眠れなくなったりします。やがて、自分だけでは問題に対処しきれなくなって気分が落ち込み、うつ状態になります。
3. 「うつ病かな?」と感じた時点で早期に受診し、休養を取って、服薬や入院をするなどの治療を始めると、徐々に気分が上向きになり、意欲を取り戻してきます。しかし、この段階で仕事に戻ったり、家事に励んだりするのは時期尚早です。
4. うつ病の回復には波があるため、良くなったり、落ち込んだりを繰り返します。気分が良いからといって服薬を止めると再発します。医師と相談しながら、根気よく治療を続けましょう。
うつ病は回復までに波があったり、時間がかかったりするものですが、必ずよくなります。ゆっくり焦らず、治療に専念してください。
ドクター's コラム「うつ病」
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