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関西の専門医が語る ドクター's コラム

子宮頸がんとは

岡本 薫 かおるレディースクリニック 院長

執筆:

医学博士、日本産婦人科学会認定・産婦人科専門医、母体保護法指定、日本医師会認定産業医
関西医科大学付属 滝井病院、洛西ニュータウン病院、医療法人西川医院 副院長を経て、平成21年5月にかおるレディースクリニックを開業。

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岡本 薫 かおるレディースクリニック 院長

子宮頸がんとは

“がん”というと主に50~60代の人が気をつけなければいけない病気、というイメージがありますが、近年、20~30代の若い女性に急増しているがんがあります。
それが子宮頸がん(しきゅうけいがん)です。
日本では年間約3500人、1日に約10人が子宮頸がんによって命を落としている危険な病気の一つです。しかし原因がはっきりとわかっているため、定期的に検診を受ければがんになる前に発見することができ、またワクチン接種をすれば予防することも可能です。
正しい知識を持っていれば、未然に防ぐことが可能な子宮頸がん。 しっかりと知識を得て、子宮頸がんから自分の身体を守りましょう。

子宮頸がんと子宮がん

子宮頸がんは“子宮がん”の一つです。子宮の入口付近に発生するのが子宮頸がんで、子宮の奥にある体部(赤ちゃんが包まれる袋の部分)に発生するのが、もう一つの子宮がんである子宮体がんです。
子宮体がんは子宮の内膜に発生しますが、内膜は月経とともにはがれ落ちるため、若い世代での発生は多くはありません。
一方、子宮頸がんは30~40代で多く診断されており、40歳以上は年々減少していますが、20代後半~30代で急増しています。

若い世代に急増している理由

ではなぜ若い世代に急増しているのでしょうか?
これは、子宮頸がんの原因とつながりがあるのではないかと考えられています。
子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルス。これは皮膚と皮膚の接触、性交渉で感染するといわれています。つまり性交渉を経験したことのあるすべての女性が、子宮頸がんになる可能性を持つということ。
数十年前に比べて、性交渉を経験する年齢は低い傾向にあり、これが子宮頸がんが若い世代で急増している原因だと考えられています。

ドクターズメモ

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、すべての女性の約8割が一生のうちに一度は感染するとされるごくありふれたウイルス。100種類以上の型があり、そのうち約15~20種類が発がん性のあるものです。ただし発がん性のある型に感染したとしても、90%以上が体内から消失します。

子宮頸がんの症状

子宮頸がんの場合、初期の症状はほとんどなく、進行してくると、不正出血や性行時の出血、おりものの異常、下腹部の痛みなどがあります。そのため、不正出血があって医者へ行ってみたら、かなり進行した子宮頸がんだった…ということが少なくありません。
そして、かなり進行したがんになると、女性にとって非常に大切な子宮を摘出したり、命の危険にさらされる場合もあります。

子宮頸がんの治療法

子宮頸がんには、おもに手術療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3つの治療法があります。どの方法で治療するかは、がんの進み具合や部位、年齢などを考慮して決められます。

ごく初期のがんの場合
円錐切除術

んになる前の状態(前がん病変)やごく初期の子宮頸がんの場合、円錐(えんすい)切除術という外科手術が行われるのが一般的です。これは子宮頸部をレーザーや高周波メスなどで円錐状に切り取るもの。この方法では子宮を残すことができるため、その後の妊娠・出産も可能です。しかし切り取った部位を詳しく検査し、がんの進行が分かった場合には、さらなる追加の手術などが必要になる場合もあります。

進行したがんの場合

がんが子宮頸部の表面よりもさらに深く広がっている場合は、子宮の全摘出が必要になります。初期のがんの場合には、子宮だけを摘出する単純子宮全摘出術。周囲の臓器にもがんが広がっている場合は、卵巣や膣の一部、基靭帯(きじんたい)、リンパ節などを摘出する広汎(こうはん)子宮全摘出術が行なわれます。また、放射線治療を行ったり、手術療法と放射線治療を組み合わせたりすることもあります。

単純子宮全摘出術 広汎子宮全摘出術

ドクター's コラム「子宮頸がんとは」

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