関西の専門医が語るドクター's コラム
顎関節症とは
病気・症状と予防
2013年04月01日掲載
張村 善紀
執筆:張村歯科 院長
歯学博士、米国歯周病学会会員
昭和46年大阪大学歯学部卒業、昭和50年大阪大学大学院歯学研究科修了、昭和59年米国カリフォルニア大学(UCLA)歯学部歯周病専門医コース修了。患者さまにやさしい、丁寧な説明を心がけ、地域に密着した歯科医療の提供に努めている。
顎関節症とは
顎関節症とは、顎(あご)の関節やその周囲の筋肉の痛み、口を開けにくい、顎関節の音がするなどの症状を持つ慢性的な病気のことです。早期に治療すれば比較的短期間に改善されますが、放置すると顎関節の軟骨や骨が変形して口の開閉がスムーズにできなくなり、完治しにくくなることもあります。
顎の関節(顎関節)は耳の穴(外耳道)の前にあり、下顎(したあご)の一番後ろで上方に突き出ている先端の部分と耳の穴の前にある頭骸骨のくぼみが作る関節で、左右に1つずつあります。
顎関節症の症状
顎関節症の症状は、次のようなものです。
1. 口を開けると痛い、口が大きく開かない
口を開けると耳の穴の前の顎関節が痛みますが、時には頬やこめかみまで痛みを感じることがあります。
2. 顎を動かす時に音がする
顎を動かすと音がするという人は時々見られますが、日常生活に支障がないために病気として自覚されていないことが多くあります。カクカクと高くはじけるような音と、ジャリジャリといったこすれる音がする場合が一般的です。
3. 物を噛むと痛い
口を閉じる筋肉を痛めていたり、関節自体に問題が生じていることが考えられます。
顎関節症の原因
主に、噛み合わせの悪さや、ストレス、歯ぎしり、くいしばり等により顎関節や周囲の筋肉などへ過度の負担がかかるためと考えられています。
噛み合わせの悪さ
奥歯(大臼歯)を失うと噛んだ時、顎関節に大きな負担がかかることになります。歯が伸びていたり、傾いているため、噛む時にいつも顎がずれる等、その他いろいろな原因で噛み合わせが悪くなり、繰り返し顎関節に有害な負担をかけている例がよく見られます。
ストレス
いろいろな心理的ストレスによって食物を噛む時に使う筋肉(咀嚼筋)の緊張が高まり、くいしばりや歯ぎしりをするようになり、その結果、筋肉痛、関節痛が起こってきます。また、ストレスがあると痛みに対する感受性も高まると言われています。
歯ぎしり
上下の歯を強く噛みしめて下顎を前後左右に動かす動作で、多くの人歯にその痕跡が認められますが、歯ぎしりすることを自覚している人は少ないようです。
くいしばり/噛みしめ
歯を強く噛みしめる動作で、歯ぎしり同様、筋肉、顎関節に大きな負担がかかります。仕事、スポーツなどに熱中している時、考え事をしている時、なんとなく習慣的にしている、など1秒ほどの短いリズムで繰り返し歯を噛みしめている場合が少なくありません。この「くいしばり」や「噛みしめ」は本人に自覚がない場合があり、問診で尋ねられてから初めて思い当たる人もいます。
ドクターズメモ
肩こりと噛みしめ癖
“噛みしめ癖”がいかに歯や顎に悪い影響を与えているか、そしてこの噛みしめ癖が知らず知らずに肩こりにも影響を与えている、というお話しをしましょう。
肩こりにはいろいろな原因がありますが、歯痛や歯周病のため歯がうまく噛み合わせられずに肩がこっている場合や、噛みしめ癖や歯ぎしりが原因で肩がこっている場合もあります。
では、「肩こりを引き起こす細菌」が存在し、その菌が虫歯や歯周病を引き起こすのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。歯や歯肉が痛いと訴えて来院される患者さんに、「肩こりから歯が痛くなった」と言われる方がいますが、肩こりを引き起こす細菌がいて、その菌が歯周病や虫歯を引き起こすわけではありません。
実は、肩こりがあるときは、全身的に疲れがあったり抵抗力が落ちたりしているため、過度の噛みしめが歯を支えている歯周組織(歯根膜)を傷め、歯周病の原因菌に負けて、急性の炎症を起こしている場合があります。不要な噛みしめ癖や歯ぎしりによって筋肉の不調和が起こり、頭痛や肩こり、顎痛、舌痛症、顔面症、腰痛、腕のしびれ、全身の倦怠感などにつながってきます。さらにもっとひどくなると、『顎関節症』の症状になります。肩こりがある人は、一度歯の治療から始めてはどうでしょうか?
執筆:米本 知壽 医療法人米壽会 米本歯科 院長
日本顎咬合学会認定医
平成2年鹿児島大学歯学部卒業、同年より張村歯科に勤務。平成7年米本歯科を開業し、小児歯科、歯周病、および長期的な歯に関するメンテナンスについて取り組んでいきたいとしている。
ドクター's コラム「顎関節症」
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。