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関西の専門医が語るドクター's コラム

腰椎椎間板ヘルニアの治療法

腰椎椎間板ヘルニアの診断

しびれや痛みの症状を聞いたり、触診をすることで、大体の病名は分かります。しかし、実は腰椎椎間板ヘルニアかどうかの診断は、画像を撮ってみないと分かりません。その画像とは、MRIの画像です。MRI画像は、身体を細かく輪切りにして撮影することができます。このMRI画像は、脊柱管をはっきり映すことができます。腰椎椎間板ヘルニアが起こっている場合は、ヘルニアにより、腰部の脊柱管が細くなっていることが確認できます。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法 / 保存療法

腰痛や腰椎椎間板ヘルニアの治療には、大きく分けて、手術をする方法と、手術をしない方法があります。手術をしない方法というのは、保存療法と言って、安静治療、理学療法、そして投薬による治療があります。

≪安静治療≫

安静治療はひたすら患部を動かさないようにして、腰痛の原因となる病気の進行を食い止める方法です。


≪温熱療法≫

痛い部分を温めることで、筋肉のコリをほぐし、収縮した血管をゆるめて血液の循環を促すのが温熱療法です。温熱療法には、80℃前後に温めたパックをタオルで包み、患部に当てるホットパックや赤外線照射などがあります。しかし、この方法では体の表面を温めることはできても、深部まで温めることはできません。また、患部に炎症ができている場合は、温めることで痛みが増す場合があるので注意が必要です。


≪冷湿布と温湿布≫

冷湿布は炎症を鎮めるために使用します。急性の腰痛にも効果があり、温熱療法と併用することもできます。一方の温湿布は、血行を促進したり、コリをほぐすのに使われます。慢性の腰痛には温湿布を使いますが、腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛や下肢のしびれや不快感は、湿布では治りません。


≪理学療法≫

・マッサージ
マッサージは筋肉のコリをほぐして血行を良くするため、痛みが取れて体が楽になりますが、腰椎椎間板ヘルニアが原因の場合、マッサージだけで治療することはできません。あくまで痛みに対する対症療法として考えるべきです。

・鍼治療
針を刺すことによって筋肉に刺激を与えます。腰椎椎間板ヘルニアの場所は体の奥のほうにあるため、鍼だけでは根本的な治療はできません。鍼治療は腰痛の原因が腰椎椎間板ヘルニアである場合、痛みを軽減するための対症療法と考えたほうが良いでしょう。

≪投薬治療≫

投薬による治療は、飲み薬によるものと、注射で注入する方法があります。

・飲み薬の場合
非ステロイド抗炎症薬がよく使われます。痛みが起こると筋肉が弛緩(しかん)して固くなり、痛みを増幅させる場合があるため、筋肉弛緩剤と一緒に処方する場合があります。

・注射によって痛みをブロックする方法
痛みの原因となっている部分に直接注射で薬を注入します。注入する場所によって神経根ブロック、硬膜外ブロックと呼ばれます。使用される薬は、ステロイド剤や局所麻酔剤です。比較的長期間痛みを取ることができる場合がありますが、痛みの原因を解決するわけではないため、腰椎椎間板ヘルニアの根本的な治療とは言えません。

≪牽引治療≫

重力や圧力で、腰椎や椎間板が押されたり、つぶされたりしていることが原因であるため、その逆に引っ張ったり、伸ばしたりして治療する方法です。

腰椎椎間板ヘルニアの治療法 / 手術

保存治療などでも改善が見られず、痛みやしびれに耐えられなくなった場合は、ヘルニアの切開手術が行われます。また、ぎっくり腰を何度もくり返しているような場合にも、切開手術を検討することになります。

≪手術の方法≫

腰椎椎間板ヘルニアの手術には、「直視下」「顕微鏡下」「内視鏡下」といった方法があります。これらは患部をどのような方法で見ながら手術をするかという違いだけで、飛び出したヘルニアの部分を切り取る手術であることは同じです。
直視下や顕微鏡下は、背中を10数cm切り開き、筋肉や靱帯、脊髄や神経根などを避けて、ヘルニア部分までメスを入れます。その中でもラブ法と言われる手術が、最も一般的な方法です。しかし、メスなどの手術器具が、脊髄や神経根などに触れ、後遺症が残ってしまうこともあります。また、全身麻酔をかけて行うため、心臓病、糖尿病などの疾患がある方や、透析を受けている方にはリスクが大きくなります。非常に大がかりな手術であるため、手術後1週間は安静にしていなければならず、その後1カ月ほどリハビリや入院が必要となります。高齢の方には切開手術やその後のリハビリなど大変な負担となるでしょう。直視下手術を行った場合、手術後に平常の生活に戻るまで、かなりの時間を必要とします。また、背中に大きな傷が残ってしまうのもデメリットです。
内視鏡下での手術では、背部を3~4cmほど切り、手術用の顕微鏡や内視鏡を入れて手術を行います。切開する部分が小さいため、出血も少ないというメリットがあります。しかしながら、内視鏡下手術は、熟練した技能と経験が必要ですので、どの医師も内視鏡下手術ができるというわけではありません。また、どのヘルニアにも内視鏡下手術ができるというわけではないため、手術前に内視鏡下手術を予定していても、実際には直視下手術に変更することもあります。
これらの手術は、後々、さらに椎間板が押されて飛び出してしまい、ヘルニアが再発してしまうことも少なくありません。突出したヘルニアを大きく削ると、今度は椎間板がクッションとしての役割を果たせなくなり、痛みが起こる場合もあります。

≪レーザーによる治療≫

最近注目されているのが、レーザーによって治療する方法です。レーザーによる腰椎椎間板ヘルニアの治療は「PLDD(Percutaneous Laser Disc Decompression)」と呼ばれるもので、これを日本語にすると「経皮的レーザー椎間板(随核)減圧術」です。PLDDは、レーザーによる組織蒸散という方法を利用しています。腰椎と腰椎の間で押し出され、はみ出してしまった椎間板の圧迫を軽減させるために、椎間板そのものに針を刺して、そこからレーザーを照射させます。すると、椎間板の中に小さな空洞ができます。その空洞が時間の経過とともに収縮することで、ヘルニアによる脊髄および神経の圧迫が軽減されます。これがPLDD治療の仕組みです。局所麻酔を打ち、背中から針を通してレーザーを照射するだけの手術ですので、患者さんにかかる負担は切開手術に比べて大幅に軽減できます。

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