緊急時に「もしも」の備え 救急特集
救急の現状
健康とくらし
2008年12月04日掲載
救急車が足りない!?
交通事故や急病など突発的なことが起こった時、お世話になる救急車。
「119番」に電話すればすぐに駆けつけてくれる、市民にとって頼もしい存在ですが、さほど緊急性の高くない状況での出動頻度が近年増えているといわれています。とはいえ、いざという時、冷静に判断するのはむずかしいものです。
そこで今回は、日々現場で活動されている大阪市消防局救急管理係長の菊池さんに、救急車出動の現状や、判断に困ったときの連絡先、民間救急車の利用についてお話を伺いました。
救急出動が増えているのはなぜ?
「雑誌・新聞等では、『救急車をタクシー代わりに使っている』というような記事を目にしますが、そんな極端な例はごく一部に過ぎません」と言う菊地さん。確かに、「救急車の利用について少し考えていただければ」と思わざるを得ない要請例が年々増加していることも事実だそうです。
また、近年、救急車の需要が高まった背景には、社会や生活環境の変化が一因であると言われています。
要因の一例
- 核家族化により、周囲に「ちょっとしたケガや発熱」などに対してアドバイス(フォロー)できる家族がいなくなったこと
- 高齢者のみの世帯数が増加したこと
※家庭内で怪我をした人のうち43.4%が65歳以上 - ライフサイクルの変化に伴い、病院の閉まった夜に活動する人が増えていること
大阪 | 265台 |
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兵庫 | 195台 |
京都 | 102台 |
奈良 | 74台 |
和歌山 | 75台 |
滋賀 | 66台 |
現在、大阪市では60台の救急車が救急要請に対応しています。出動件数がさらに増加すれば、現場に到着する時間が遅くなることもあります。1分1秒を争う命に危険がある患者への対応が遅れることはあってはならないことです。緊急性の高い患者を少しでも早く搬送するためにも症状が軽い場合は自身で行くなど、限りある救急車を市民みんなで上手に利用することが大切です。
大阪府の出勤頻度は全国トップ
人口1万人当たりの出動件数では、大阪府が全国1位で、京都府や和歌山県も5位以内と、関西の利用頻度の高さが目立ちます。
「それだけ皆さんに『信頼されている証拠』であり、出動頻度の多さは、市民にとって身近な存在と受け止めていますよ」と笑う菊地さん。さらに、個人的な意見と断りながら、大阪という都市が、救急の歴史に深く関わっていたからかも知れません、とのこと。
1932年、日本赤十字社大阪府支部と大阪支部病院(現・大阪赤十字病院)が、救急自動車を配備し、また、数多くの外科病院の協力を得て搬送体制を整え、救急自動車の運用を開始しました。
1967年には、大阪市福島区の大阪大学医学部付属病院に特殊救急部が開設されました。当時は、まさに高度成長期真只中であり、激増する交通災害による重症外傷が大きな社会問題になっていたそうです。こういった中、国立大学病院に日本で初めての三次救急医療機関が開設され、国の最高水準を誇る救急医療施設が誕生しました。(現・大阪大学医学部付属病院高度救命救急センター・大阪府吹田市)
さらに、1979年には、コンピューターシステムによる大阪府救急医療情報システムが稼動し、救急医療機関の医療情報が消防などの関係機関に提供されるようになりました。
このように大阪府の医療機関は、全国的にみてもかなり先駆けた存在だったことが伺えました。医療関係機関が先陣を切って歩んできた歴史が、市民にも深く浸透しているのかもしれません。
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