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人が怖い原因は社会不安症?原因と対処方法を解説

「人が怖い……」「人と関わりたくない……」ストレスの多い現代社会において、こんなふうに感じている人は実は少なくないのかもしれません。他人との関わりに恐怖や不安、ストレスを感じて日常生活に支障をきたす「社会不安症」という病気も、近年注目を集めています。そこで今回は、「人が怖い」と感じる原因やその克服方法などについて、一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構の大野萌子先生に教えていただきました。

大野 萌子

一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで5万人以上に講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に、シリーズ51万部を突破した『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』など、多数。

一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野 萌子

「人が怖い」と感じるのはなぜ?人が怖くなる原因とは

「人が怖い」と感じるのはなぜ?人が怖くなる原因とは

「人が怖い」「人の視線が怖い」「人と関わるのが怖い」といった不安を感じるとき、その深層心理にどんな原因があるのでしょうか?

コミュニケーションに関して自分に自信が持てない

これまでのコミュニケーションでの失敗から、コミュニケーションに自信が持てず、人と関わりたくない・怖いとなってしまうことがあります。これには、生育歴も大きく関係していると考えられます。特に顕著なのが親子関係です。コミュニケーションの最初の形は親子関係ゆえ、子供のころに「親に何か言ったことで拒否された」「理解してもらえなかった」といった経験が積み重なると、「人に何か言ってもどうせ拒否される」「理解されない」という思考パターンに陥りやすくなります。

対人関係において過去のトラウマがある

「人に裏切られた」「ひどいことを言われた」など、トラウマになるような出来事をきっかけに、急に人が怖いと感じるようになることもあります。それまでは「人が怖い」とは感じていなかった人でも、そうなる可能性はあります。

人目を過度に気にしている

「人からどう見られているか」を気にするあまり、人が怖いと感じる人もいます。「こう言ったらどう思われるだろう」「あの人はなんであんなこと言ったんだろう」などとずっと考えてしまい、コミュニケーションや人との関わりが怖くなるのです。

コミュニケーションの経験不足

コミュニケーションは、実践によって鍛えられていくもの。場数を踏むことでしか上手くなりません。そのため、コミュニケーションの経験が乏しいと、コミュニケーションのとり方がわからず、関係がうまくいかなかったりトラブルが起きたりして、結果「人が怖い」となってしまいます。

人が怖いのは「社会不安症」なの?

人が怖いのは「社会不安症」なの?

社会不安症とは

「人が怖い」という方で日常生活に支障をきたすほどの症状が出ている場合、「社会不安症」が疑われるケースもあります。症状が深刻化していくと、不安を生じさせる場面を回避するようになるため、学校や職場に行けない、家から出られないというような状態になることも。放っておくと、うつ病やアルコール依存症を併発することもあります。

社会不安症の特徴

社会不安症の方は、人に見られている場面で何かをすることを非常に恐れ、大きな不安やストレスを感じます。他人にネガティブな評価を受けたり批判されたりするのを過度に恐れるのも、社会不安症の特徴といえます。そのため、以下のような負の連鎖に陥ってしまいがちです。

●他人からのネガティブな評価によって、注目されるのを恐れる
 ↓
●対人場面での緊張症状・不安症状
・人前でうまく話せなくなったり吃ったりしてしまう
・人前で顔が赤くなる
・人前で字を書くと手が震える
・人前だと行動がぎこちなくなる
 ↓
●また同じことが起きるのではないかという予期不安
 ↓
●対人関係・社会的場面を回避するようになる

「人が怖い」を克服するには?

「人が怖い」を克服するには?

「人が怖い」という状態を少しでも改善して、良好な人間関係を築くためにはどうしたらいいのでしょうか。また、対人恐怖のストレスを抱えずに心地よく生きるためにはどうしたらいいのでしょうか。

コミュニケーションの基本は自分との対話

コミュニケーションが苦手な人は、自分と向き合うのも苦手な人が多いと言えます。「苦しいけれど、苦しさの原因がわからない」「自分がどうしたいかわからない」といった状態を放置し、自分のことを見たくない・見ないようにしているのです。

しかし、「自分がどうありたいか・どうしたいか」を自分で把握できていないと、相手とのコミュニケーションの取り方・言い方も見えてきません。

また、自分の気持ちを自分で把握できていないと、その気持ちを正確に表すことができないため、相手から誤解されることも多くなります。「わかってくれると思ったのに、わかってくれなかった」というセリフをよく耳にしますが、自分でわかっていないことを他人がわかるわけがないのです。まずは、自分自身に目を背けずにきちんと向き合うこと・自分との対話が上手になることが大切です。

日記を書いて、自分の気持ちを明確にすると良い

自分自身としっかり向き合うには、日記をつけるのがおすすめです。人に見られる場所(SNSやブログ)ではなく、自分だけが見る場所に書くことが大事です。起きた出来事を記すだけではなく、何があってどう感じたのか、何に対してどう思ったか・どう考えているか、といったことを素直に書いていきましょう。そうすることで気持ちの整理ができ、自分の気持ちや意見を把握しやすくなります。

自分を認めることで他者との関係が安定する

「人が怖い」という人の共通点として「自分を認めてあげられない」という点があります。自分の気持ちを自分自身で把握できると、おのずと自分を認められるようになっていきます。そして、自分のことを認められると、今度は他人のことも認められるようになります。

自分の悪いところばかり目につく人は、他人に対しても悪いところばかり目につくものですよね。反対に、自分の良いところに目を向けられると、他人の良いところも見えてくるようになるのです。相手の良い部分を見ることで、相手への恐れや不安が軽減し、コミュニケーションがスムーズにいきやすくなります。

社会不安症の疑いがある場合はどうする?病院での治療は必要?

社会不安症の疑いがある場合はどうする?病院での治療は必要?

「人が怖い」というストレス・不安から、「学校に行けない」「仕事を辞めざるを得ない」など、日常生活にも支障が出ている場合、医療機関への相談をおすすめします。

精神科の受診や心理カウンセラーへの相談が一般的ではありますが、カウンセリングなどは対面で行われることが多いため、そもそも「人が怖い」と感じている人にとっては利用するハードルが高いかもしれません。そういった場合は、まずは顔の見えない電話相談やメールやチャットで相談するのも良いでしょう。医療機関だけでなく、自治体が相談窓口を設けていることもあります。

家族や近しい人が社会不安症の疑いがある…接し方のポイント

家族や近しい人が社会不安症の疑いがある…接し方のポイント

家族や近しい人が不安症になりそうな場合、あるいはなった場合は、どういった接し方をすべきなのでしょうか。

できていることを認めてあげて

「人が怖い」と感じる根本には、自分に対する自信のなさがあります。つい「できていないこと」を心配したり気にしたりしてしまいがちですが、「できていること」「やれていること」を認めて、口に出して褒めてあげてください。

「人と関わった方がいい」は言わないで

本人を励ましたい・応援したいがために、「もっと人と関わった方がいいよ」などとつい言ってしまうことがあるかと思います。ですが、このセリフはNG。人にはその人その人のペースとタイミングがあります。まわりが「今だ」と思って何か行動をさせようとしても、本人のペースやタイミングと合っていなければ、逆にブレーキをかけてしまうことになります。

否定をせずに話を聞いて、温かく見守って

本人が何か話したいときは、否定せずに話を聞いてあげることも大事です。コミュニケーションは実践の中で育まれ、鍛えられていくもの。「否定されずに話を聞いてもらえた」「自分を受け入れてもらえた」という経験の積み重ねが、前に進む後押しになるはずです。

まとめ

現代社会において、人間関係やコミュニケーションにまつわるストレスは多様化しています。何かのきっかけで「人が怖い」「人と関わりたくない」と感じるようになる人も決して少なくありません。放置していると、日常生活に支障をきたし、社会不安症に発展する恐れも。社会不安症は誰にでも起こりうる病気です。ご自身やご家族などにその兆しや心当たりがある方は、早めに自治体や医療機関の相談窓口やカウンセリングを受けてみることをおすすめします。

一般社団法人 日本メンタルアップ支援機構 代表理事 大野萌子

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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