おならが臭いのは食べ物の影響?対策と予防方法
健康とくらし
2022年01月27日掲載
「おならが臭い……」。なかなか人には言いづらい悩みではありますが、おならのニオイを気にしている方は意外と多いのではないでしょうか?そこで今回は、消化器内科医の松井佐織先生に、おならが臭い原因やニオイを予防するための対策について教えていただきました。
松井佐織
淀川キリスト教病院 消化器内科・副部長
平成13年3月に鳥取大学医学部を卒業。淀川キリスト教病院、大阪市立総合医療センター勤務を経て、平成21年4月から淀川キリスト教病院に勤務。平成30年4月から淀川キリスト教病院 消化器内科副部長を務める。日本消化器病学会消化器病指導医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡指導医。
そもそもおならはどうして臭いの?
おならとは
おならとは、口から取り込んだ空気や腸内細菌が作り出すガスが肛門から排出されたものです。
おならはどうして臭い?
おならの成分の99%近くは、窒素や水素・二酸化炭素・酸素・メタンといった無臭のガスです。おならを臭くさせるのは、残りの1%の成分。主に腸内細菌によって食べ物が分解される際に発生するガス(硫化水素・酪酸・アンモニア・インドール・スカトールなど)により、強いニオイが発せられます。
おならが臭くなる原因は?
おならが臭くなる原因として、以下が考えられます。
腸内細菌のバランスが乱れている
おならが臭くなる理由のひとつは、腸内細菌にあります。腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスよく生息しているのが理想です。しかし、何らかの理由によって悪玉菌が増えすぎると、悪玉菌の働きによって硫化水素や二酸化硫黄・アンモニアといった悪臭を放つガスが発生しやすくなります。それらがおならに混ざるため、臭くなってしまいます。
食べ物に原因があることも
食べ物が原因でおならが臭くなることもあります。特に、肉をはじめとする動物性たんぱく質は悪玉菌によって分解されるため動物性たんぱく質のとりすぎは、臭いおならの原因になります。多量の動物性たんぱく質が小腸で十分に消化・分解しきれないまま大腸に送られると、大腸で発酵し、インドールやスカトールといった強いにおいのするガスを発生させるのです。また、動物性たんぱく質のとりすぎは悪玉菌を増やす原因にもなります。さらに、詳しくは後述しますが、高FODMAP食に偏った食生活もおならが臭くなる原因になると考えられます。
精神的ストレスや便秘
腸はストレスの影響を受けやすい器官です。ストレスが強いと、腸内環境が乱れやすくなりおならが出やすくなったり臭くなったりすることがあります。また、ストレスによって過敏性腸症候群(※)になると、便秘気味になることも。腸内に便が滞在する時間が長くなり、おのずと発酵時間も長くなるため、ニオイも強く出やすくなります。
(※)過敏性腸症候群とは
腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などの症状が認められないにも関わらず、腸蠕動が亢進したり低下したりすることで、収縮運動に対する知覚過敏となり、便秘や下痢・腹痛をもよおす病気。
病気が原因のケースも
腸や肝臓などの病気が原因でおならが臭くなることもあります。例えば、以下のような病気があげられます。
- 腸閉塞:便秘を招くことが多いため、おならのニオイが強くなりやすく、便が出なくなると口から便臭がすることも
- 大腸がん:腸内での便の停滞時間が長くなるため、おならのニオイが強くなりやすい
- 肝臓の疾患:血液中のアンモニアが増えるため、おならが臭くなりやすい
おならを臭くする食べ物って?
前述したように、食べたものが原因でおならが臭くなることもあります。おならが臭くなる食べ物を考える際に、以下のFODMAP食を参考にするのがよいでしょう。
- Fermentable(発酵性)
- Oligosaccharides(オリゴ糖)
- Disaccharides(二糖類)
- Monosaccharides(単糖類)
- Polyols(ポリオール)
これらの成分の共通点は、難消化性で大腸において過発酵が起きることです。FODMAPの含有量が多い食べ物は「高FODMAP」、含有量が少ない食べ物は「低FODMAP」と分類され、「高FODMAP」の食べ物を多く摂ると、おならが臭くなりやすいと考えられます。
ただしオリゴ糖はプレバイオティクス(宿主の微生物によって利用される有益なもの)に含まれるので、まったく摂らないのもよくありません。それぞれ、健康を害するような成分ではないため、摂りすぎを控える程度で考えてみてください。「高FODMAP」の食べ物として代表的なのは以下です。
- 乳糖(牛乳、乳製品など)
- 糖アルコール類(プラム、プルーン、桃など)
- フルクタン(玉ねぎ、ニンニク、小麦、ライ麦など)
- ガラクタン(ひよこ豆、レンズ豆など)
- ポリオール(カリフラワー、アボカド、マッシュルームなど)
- 加工された肉・魚(ハム、ソーセージ、魚肉ソーセージ、ちくわなど)
食事が高FODMAPに偏っている方は、低FODMAPに変更してみてもよいでしょう。なお、加工されていない肉・魚・卵などは低FODMAPに分類されますが、前述したように大腸で強いにおいを発するガスを生じさせたり、悪玉菌を増やしたりする原因になります。低FODMAPとはいえ、動物性たんぱく質の摂りすぎには注意しましょう。
また、ニンニクや玉ねぎ・長ネギなどのネギ類は、硫黄成分を多く含んでいるため、腸内でインドールやスカトールといった悪臭のするガスを発生させます。おならの臭いが気になる方は、これらの摂取も控えてみましょう。
おならが臭い…対策は?
おならのニオイに悩んでいる方は、以下のポイントに留意してみてください。
おならを臭くさせる食べ物は控えて
食べ物はおならを臭くさせる原因のひとつです。自分の食習慣を振り返り、高FODMAP食に偏っている、または動物性たんぱく質を多量に摂取しているという場合は食習慣を見直してみても良いでしょう。
こまめに水を飲もう
体が水分不足になっていると、便が硬くなって排出されにくくなり便秘を起こしやすくなります。すると、腸内環境が悪化し、臭いおならの原因になることがあります。こまめに水を飲むことで、スムーズな排便を促しましょう。
腸内の細菌バランスを整える食品を食べましょう
腸内細菌のバランスを整えるために、発酵食品や乳酸菌を含む食品を食べるのをおすすめします。プロバイオティクス(※プロバイオティクス=菌)を摂取するためにはビフィズス菌などを含むヨーグルトなどが良いでしょう。なお、キムチは発酵食品なので便通改善の期待はできますが、ニンニク類を多く含むため、おならのニオイはきつくなる可能性があります。
このほか、善玉菌の餌となってくれる食物繊維を豊富に含む食品もおすすめです。例えば、芋類やセロリ・海藻類など。こういった食品を食べるとおならが出やすくなることがありますが、ニオイが強くなることはありません。このほか、腸内細菌のバランスを整えるための食品に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。
ストレスを溜めない、ストレスケアも大事
ストレスが原因で腸内環境が乱れたり過敏性腸症候群・便秘になったりするのを防ぐには、日頃からストレスケアを大事にしましょう。「ストレスを根本的になくす」というのは難しいことではありますが、ストレスを溜め込まないよう、ストレスを感じたときの発散方法は見つけておきたいものです。
適度な運動も大事
体を動かさないと腸の動きも緩慢になるため、便秘を招きやすくなったり腸内環境が悪化しやすくなったりして、おならが臭くなることがあります。適度な運動を心がけるようにしましょう。
まとめ
おならが臭いことに人知れずお悩みの方は、まずは普段の食生活を見直してみてください。お肉中心の食生活の方は、お肉を控えめに。また、腸内環境の悪化や過敏性腸症候群によって便秘や下痢といった症状がある方は、そちらの改善も大切です。なお、便秘や下痢の原因や対処方法について詳しく知りたいという方はこちらの記事もチェックしてみてください。
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淀川キリスト教病院 消化器内科・副部長 松井佐織
参考URL:http://www.ych.or.jp/
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