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冬だけ体がだるい、眠い、過食…それは冬季うつかも?
病気・症状と予防
2013年10月17日掲載
日本でも多くの人が悩みを抱えているうつ病。うつ病にはさまざまな種類がありますが、冬の期間のみに症状が出る「冬季うつ」という病があることをご存知でしょうか?
冬にだけ疲労感や眠気があり、それが生活にも支障をきたすようであれば、気が付かないうちに、冬季うつになっている可能性があります。
冬季うつとは
冬季うつは、季節性うつ病(季節性情動障害、季節性気分障害、季節性感情障害ともいう)の一種です。名前の通り、冬季(秋から春にかけて)にのみうつ病のような症状が出る病ですが、一般的なうつ病の症状(気分の落ち込みや疲れやすいなど)だけではなく、過眠や過食という、うつ病とは正反対の症状も現れるため、うつとは自覚されにくいようです。
冬季うつは、一度発症すると、毎年繰り返すと言われています。毎年、冬以外の季節は元気なのに、冬になるとなぜか気が重くなる、だるくなるという場合は、冬季うつかもしれません。
冬だけ元気がでない…冬季うつの原因
冬季うつを発症する主な原因は、日照時間の短さ(日照量の減少)です。
冬になると日照時間が減少し、体内でさまざまな変化を引き起こします。その変化こそが冬季うつを発症させる原因となるのですが、現在は2つの説が挙げられています。
- 日照時間が短くなると光の刺激が減り、脳内の神経伝達物質であるセロトニンが減少。それが原因で、脳の活動が低下してしまう
- 目に入る光の量が減ることで、睡眠に深く関わるホルモンであるメラトニンの分泌のタイミングがずれたり、分泌量が乱れ体内時計が狂う
また、北向きなど光が入りにくい部屋での生活による日照量の減少や生活リズムの乱れ、過度のダイエットによる食生活の偏りなども、上記に結びつく要因となります。
≪冬季うつを知らない日本と、広く知れ渡っているヨーロッパ≫
日本では「冬季うつ」という病名自体が一般的ではなく、認知度も低いです。冬季うつの存在を知らないが故に、冬場のうつ症状を「こんなものだろう」と思っている方も多いのではないでしょうか?
しかしヨーロッパでは、冬季うつは一般的な病としてよく知られています。というのも、ヨーロッパは緯度が高い国が多く、冬場の日照時間が極端に短い場合が多いのです。そのため多くの人々が冬季うつに悩まされており、治療に有効とされている光治療を受けられる場所が、公共施設などに備えられているそうです。
うつ病とは違う、冬季うつの症状
うつ病と同様、冬季うつにも「無気力感に襲われる」「自己否定的になる」などのうつ症状が出ます。ただ、食欲と睡眠に関しては、一般的なうつ病とは正反対の症状がでることがあります。
冬季うつ | うつ病 | |
---|---|---|
食欲 | 過食になり、体重が増加する場合も。 特に甘い物を食べたくなる |
食欲不振に陥る |
睡眠 | 睡眠時間が長くなる(過眠)。 10時間を越えても眠くなることも |
不眠となり、睡眠時間が短くなる |
過食と過眠は冬季うつの代表的な症状。うつ病のような症状と共にこの2つの症状が出た場合は、冬季うつの疑いがあるため早めに病院を受診しましょう。
光に当たって治す! 冬季うつの治療法
冬季うつの代表的な治療法は、高照度光療法です。これは、人工的に2500~10000ルクスの光を浴びることで、睡眠・覚せいリズムをつかさどっている脳内の睡眠物質であるメラトニンの分泌を調整して症状を改善させる治療法です。治療実施者の約70%の人に効果があり、1週間で効果が現れることもあります。
なお、高照度光療法でも改善が見られなかった場合は、抗不安薬や抗うつ薬の服用、ビタミンB12(光に対する感受性を高める効果がある)の摂取なども行われます。
日常の中でできる、冬季うつの予防・改善
日常生活で行っていることを少し意識するだけで、冬季うつは予防・改善ができます。
生活リズムを正す
毎日、できるだけ同じ時間に起きて朝日を浴び、生活リズムや体内時計を正しましょう。どうしても起きることができない人は、部屋の照明をつけ、明かりを浴びるだけでも効果的です。
日光に当たるように心がける
早起きをして日照時間を増やすなど、日光に当たる生活を心がけましょう。日が入らない部屋で生活や仕事をしている人は積極的に外出して日を浴びるなど、意識的に日光に当たりましょう。
食生活に気をつける
冬季うつをはじめ、うつ病の原因とされているセロトニン不足。セロトニンは、食事から摂取する必須アミノ酸の一種、トリプトファンから生成されているため、食生活でセロトニン不足を改善することができます。ただし、バランスよく摂取することが大切です。
- たんぱく質…肉や魚、豆など。(たんぱく質を多く含む食材には、トリプトファンが含まれている。)
- 炭水化物…米やそば、いも類など。(トリプトファンの吸収を手助けする。)
- ビタミンB6…バナナやさつまいも、青魚など。(トリプトファンの吸収に必須。)
- EPA、DHA…青魚に含まれており、抗うつ効果があるとされている。
冬季うつ予防におすすめのメニュー
適度な運動
適度な運動、特に有酸素運動も冬季うつの改善に効果的。有酸素運動は、幸福感や快感をもたらすエンドルフィンを脳内に分泌させてくれます。屋外で運動をすれば気分転換やストレス解消にもなり、日照量も増えるなど一石二鳥!ストレスを感じない程度の運動から始めてみてはいかがでしょうか。
監修
こうづきメンタルクリニック 上月清司先生
睡眠障害やうつ、パニック障害などメンタルのさまざまな悩みの診療にあたる。精神保健指定医、日本医師会認定産業医、日本東洋医学会専門医、日本アドラー心理学会認定カウンセラー。
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。