目がかすむ原因はドライアイ?目の病気?対処法を解説【眼科医監修】
病気・症状と予防
2019年12月19日掲載
「目がかすんで見えづらい」 「夕方になると視界がぼんやりする」 長時間のパソコンやスマホが日課になっている方は、このような症状に悩まされていることが多いのではないでしょうか。「目が疲れているからかな……」と、ついそのままにしてしまいがちですが、ドライアイや目の病気が原因である可能性も考えられます。そこで今回は、眼科医の櫻井寿也先生に、目がかすむ原因や対処法・予防法などについて教えてもらいました。
櫻井寿也 院長
多根記念眼科病院
奈良県立医科大学卒業、同眼科学教室入局。医局長を経て、2001年より多根記念眼科病院に勤務し、2017年より現職に。専門は眼科全般、網膜硝子体疾患など。
目がかすむ原因は生活習慣の中に
●眼精疲労
目がかすむ原因として最も多いのは、眼精疲労です。パソコンのモニターやスマホを長時間見て目を酷使していると、毛様体筋(もうようたいきん)という筋肉の緊張状態が続き、ピント調節機能が落ちていきます。そのため、見たいものにピントを合わせるのに時間がかかり、視界がぼやけたりかすんだりするのです。
眼精疲労による目のかすみは一時的なものなので、目を休めたりしっかりと睡眠を取ったりすれば回復します。しかし、慢性的な眼精疲労が続くと近視が進む原因になるので注意が必要です。
●ドライアイ
ドライアイとは涙の量が不足したり涙の質のバランスが崩れたりすることによって、涙が目に均一に行き渡らなくなっている状態です。涙が不十分になると、角膜や結膜が乾燥して傷つくことがあります。
本来、涙は目の表面を覆って目を守る役割をしています。しかしドライアイが進むと、角膜や結膜が乾燥して目の表面が傷ついたり、それが原因で眼病を招いたりする恐れがあります。また、視力が良くても物がかすんで見えることもあります。
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ドライアイは次のような要因で起きます。
・パソコンやスマホを長時間見ている
パソコンやスマホを見ていると、まばたきの回数が圧倒的に少なくなります。すると涙の分泌量が減り、目が乾燥してしまいます。
・コンタクトレンズを使用している
コンタクトレンズを装用していると、涙の蒸発量が多くなるためドライアイが進みやすくなります。
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・エアコンの風が直接当たっている
物理的な要因として、エアコンの風が直接当たると目は乾燥しやすくなります。風向きを調節する・場所を移動するなどの工夫を。
●老眼
老眼とは加齢によって目のピント調節機能が衰え、見たいものに焦点を当てるのに時間がかかったり視界がかすんだりする状態を指します。一般的には40代半ば以上の人に起こりやすい症状ですが、近年ではパソコンやスマホの長時間使用によるドライアイや眼精疲労によって、10代~30代でも同様の症状を訴える人が増えています。なお、若い人に起きる老眼症状を「スマホ老眼」と呼んでいます。
自分でできる目のかすみの予防法
目のかすみの原因となる「眼精疲労・ドライアイ・老眼」を予防するために、日頃の生活の中で以下のポイントに留意しましょう。パソコンやスマホを見るのをやめることは難しいかもしれませんが、目をいたわる意識を持つことが大切です。
●パソコンのモニターやスマホの画面は目線より下にして、長時間に渡って見ない
目線よりも上にパソコンのモニターがあると、目を大きく見開くため目が疲れやすくなります。パソコンのモニターは目線よりも下になるように配置してください。これはスマホを見るときも同じです。仰向けに寝転んでスマホが顔の前に来るような姿勢で操作するのは避けましょう。
ただし、スマホの画面を見すぎることでストレートネックや肩こりなど別の症状を誘発する恐れもあります。まずは長時間続けての、使用をやめましょう。
パソコンやスマホを見るときは、適度に休憩を取って目を休めることが大切です。15分に1回程度は視線を外して遠くを眺めたり、目をつむったりしましょう。
●意識的にまばたきをする
パソコンやスマホを見るときは、まばたきを意識的に行ってください。まばたきによって筋肉を弛緩させ眼精疲労を軽減できます。また、まばたきの刺激によって涙が出るので、ドライアイの予防にもなります。
●目薬で涙を補う
ドライアイの方は、涙を補うための点眼をしましょう。市販の人工涙液などの点眼薬でもかまいませんが、前述したようにドライアイと一口に言っても「涙の量が足りない」のか「涙の質のバランスが崩れている」のかは人によって異なります。ご自身のドライアイに適した点眼薬を選ぶのが大事なので、眼科で検査を受けて点眼薬を処方してもらうことがおすすめです。
●目を温めて血行を良くする
ホットアイマスクやホットタオルを使って目を温めるのも効果的です。血行が良くなるので、筋肉の緊張がほぐれ眼精疲労の軽減につながります。また、ドライアイの改善にも役立ちます。下まつげの内側には、「マイボーム腺」という脂質を出す分泌腺があり、温めることで働きが活性化します。すると涙の成分に油分が増えて、うるおいを保ちやすい状態になります。
目の病気が原因でかすむことも
ここまでご紹介した生活習慣に起因する目のかすみのほかに、目の病気が原因であるケースも。以下の眼病では、症状として目のかすみが生じます。
●白内障
白内障は水晶体が何らかの原因で白くにごり、視力障害が生じる病気です。白内障になると、視野全体がかすむ・視力が低下する・光を過剰にまぶしく感じるなどの症状が出ます。一般的に、白内障は50代以上の方に多い病気です。しかし、若い人でも糖尿病やアトピー性皮膚炎の方・ステロイド剤を服用している方には起きやすいと言われています。
●緑内障
緑内障は、何らかの理由で視神経が障害される病気です。このうち、眼球の圧力が異常に高くなることで生じたケースでは、見える範囲が狭くなったり、視野が部分的にかすんで見えづらくなったりします。緑内障は40代以上の人に多い病気で、悪化すると失明する恐れもあります。
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●硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)
硝子体出血とは、目の中の血管からの出血が硝子体の中に入り込んだ状態を指します。硝子体出血自体が病気というわけではなく、「硝子体出血が起きている=どこかに原因となる病気が潜んでいる」と考えられます。出血の程度や場所によっては、視界がかすむ・視野の一部が欠ける・視力が低下するなどの症状が起きます。
●後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)
後部硝子体剥離とは、眼球の硝子体が目の奥にある網膜から離れていく病気です。硝子体は、本来コラーゲンやヒアルロン酸からなるゼリー状の組織ですが、年齢とともにコラーゲンやヒアルロン酸が減少して水状に変化していきます。そのため、網膜との結びつきが弱まって離れてしまうのです。後部硝子体剥離になると、視界に黒い点が飛んで見える・視界にベールがかかったように見えるといった症状(飛蚊症)が起きることがあります。
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●加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)
加齢黄斑変性は、加齢によって網膜の中心部・黄斑に障害が生じる病気です。視界がゆがむ・視界の中央が暗くなって見えなくなる・色覚障害(色が分からなくなる)・視力が著しく低下するといった症状が現れます。
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●網膜剥離(もうまくはくり)
網膜剥離とは、網膜がはがれて視力障害が起きる病気です。痛みなどの自覚症状を伴わないため気づきにくい病気ですが、飛蚊症が現れたり、暗い場所で突然光が見えたり、視力が急速に低下したりといった前兆症状が起こります。
●糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病が原因で網膜に障害が現れる病気です。目の中の血管に小さな出血が現れる・視力が下がる・視界がかすむ・飛蚊症といった症状が現れます。
全身疾患が原因の目のかすみ
目のかすみが何かしらの全身疾患の症状であるケースもあります。例えば、目のかすみとともにドライマウス(口が乾く)の症状が見られる場合、シェーグレン症候群という自己免疫疾患が疑われます。全身疾患に起因するケースでは、眼科での診断の後にしかるべき医療機関での治療が必要です。
まとめ
目がかすむ原因は、眼精疲労・ドライアイなどの生活習慣によるものから、放っておくべきではない眼病・全身疾患までさまざまです。一時的なものであればご自身でのケアによって改善も可能なので、ぜひ今日から目をいたわる意識を持ちましょう。慢性的に目がかすむ・視力低下など他の視覚障害も現れているという方は、眼病の可能性も考慮して一度眼科で検診を受けることをおすすめします。
多根記念眼科病院 櫻井寿也 院長
公式URL : http://tanemem.com/
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