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放置しておくと失明の危険も! 加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)
病気・症状と予防
2016年06月02日掲載
加齢黄斑変性は、「加齢」とつくように、年齢が高くなると発症しやすくなる目の病気です。ものを見るときに大切な黄斑(おうはん)という網膜の重要な部位が、加齢とともにダメージを受けることで視力が低下するもので、欧米では成人の失明原因の第1位、日本でも失明原因の第4位となっています。
目の片方の視力が低下していても、ある程度まではもう片方の眼が視力をカバーするため、普段の生活では初期症状に気づかないことも。40歳を過ぎたら、定期的に見え方をチェックしましょう。
加齢黄斑変性とはどんな病気?
高齢になるほど多く見られる病気で、50歳以上の約1%に見られます。日本では、1997年に患者数が約36万人でしたが、2012年には約95万人と倍以上に増加しています。症状としては、見え方に変化があったり、見えにくくなったりします。
主な症状
- 周辺のものは正しく見えるが、中心にあるものはゆがんで見える。
- 部分的、もしくは中心が暗く見える。
- 急激に視力が低下する。特に、中心部がぼやけて、見ることが難しくなる。
- ものが薄く見えて、色が分からなくなる。
<加齢黄斑変性の見え方>
これらの症状を感じたら、すぐに医師の診断を受けましょう。
進行性の病気であるため、放っておくと視力は低下し、眼鏡やコンタクトなどで矯正しても、視力が0.1以下になってしまうことがあります。
加齢黄斑変性セルフチェック
約30cm離れて、片目ずつチェックしましょう。メガネやコンタクトはつけたままでOKです。
ゆがんで見えたり、中心が見えなかったりする場合は、加齢黄斑変性の可能性があります。
加齢黄斑変性が起こるしくみ
人間の目から入った光は水晶体で屈折して網膜に達し、脳で認識されて初めて“見える”ということになります。カメラにたとえると、水晶体はレンズ、網膜はフィルムの役割をしているといえるでしょう。
この網膜の中心にある、直径1.5~2mmほどの部位が「黄斑」。黄斑はレンズ(水晶体)を通ってきた光がもっとも集まるところで、ものの詳細を見分けたり、文字を読んだりするために非常に重要なところです。そのため黄斑がダメージをうけると、網膜の他の部分が正常でも、視力が低下してしまいます。
さらに、黄斑の中心には中心窩(ちゅうしんか)と呼ばれる直径約0.2~0.35mmほどの小さなくぼみがあり、ここに異常があると視力の低下はさらに深刻になります
加齢黄斑変性の治療法
加齢黄斑変性になると、目を完全に正常に戻すことはできません。病気の進行を遅らせたり、低下した視力を維持することが目標になります。
加齢黄斑変性は「萎縮型(いしゅくがた)」「滲出型(しんしゅつがた)」の2つのタイプに分けられ、それぞれで治療法が異なります。
萎縮型
黄斑の組織が加齢とともに萎縮してくるタイプで、病気の進行はゆっくりです。ただし、萎縮型から滲出型へ変化することもあるので、定期的に通院する必要があります。
滲出型
健康な状態ではできない新しい血管(新生血管)が、網膜のすぐ下にできるタイプです。新生血管は非常にもろいため、血液の水分が流れ出たり、血管が破れたりすると、黄斑はダメージを受け、急激な視力低下が起こります。治療法としては、原因となる新生血管の成長をとめたり閉塞させる方法があります。
・薬物療法(抗VEGF療法)
新生血管の成長や血液成分が流れ出るのをおさえる薬を、眼球に注射する方法です。効果は個人差があり、再発することもあるため定期的な検査と治療が必要です。
・光線力学的療法
光に反応する薬を腕の静脈から点滴します。その後、目に弱いレーザーを当てることによって薬の化学反応を起こし、新生血管を閉塞させます。3カ月ごとに検査・治療を行う必要があります。
・レーザー光凝固
レーザーを新生血管に当てて、成長を止める方法です。ただしレーザーによって正常な網膜にもダメージを与えてしまうため、その部分だけ見えなくなってしまいます。
加齢黄斑変性を予防するには?
治療しても、目を完全にもとの状態に戻すことの難しい加齢黄斑変性は、予防することが大切です。以下のことに注意しましょう。
禁煙する
多くの研究で、喫煙者は非喫煙者よりも、加齢黄斑変性になる危険性が高いことが分かっています。現在タバコを吸っている人は、禁煙しましょう。
太陽光やパソコンの光から目を守る
太陽の光はいくつもの色の光が混ざっていますが、そのなかでも青い光は黄斑の老化に関係するといわれています。サングラスや帽子で目を守りましょう。またパソコンやテレビのブルーライトも目にはよくありませんから、長時間の使用を控えたり、ブルーライトをカットする眼鏡などを利用しましょう。
バランスのよい食事を心がける
加齢黄斑変性の予防になる栄養素として、緑黄色野菜に多く含まれているルテインやビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、カキやレバーなどに多く含まれる亜鉛、青魚に多いオメガ3脂肪酸があります。これらを積極的に摂取して、バランスのよい食事を心がけましょう。
監修
梅北眼科 西田雅宏先生
2004年愛媛大学医学部卒業、同大学医学部附属病院勤務。市立宇和島病院、市立大洲病院、愛媛県立中央病院、住友別子病院を経て、グランフロント大阪に梅北眼科を開院。
日本眼科学会認定眼科専門医。日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本網膜硝子体学会。
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