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満員電車や、オフィスでも!どこでもできる「坐禅」のススメ

坐禅の基本

仕事をしているときや家事をしているときなど、些細なことでイライラしたり焦りを感じたりしたことはありませんか?気持ちを落ち着かせて対応すればスムーズにいくことも、心にゆとりがないばかりに余計に難しい状況に陥ってしまうこともあるでしょう。
そんな生活にぜひ取り入れたいのが「坐禅(ざぜん)」。難しく感じるかもしれませんが、実はどんな場所でもできて、コツさえつかめば誰でも簡単にできるものなのです。ストレスフルで体も心も疲れている人にはうってつけの坐禅、さっそく生活に取り入れてみましょう。

 

坐禅の効果

坐った状態で精神統一を行う坐禅。禅寺で行われる厳しい修行の一つであるため、一般の人にとってはハードルが高く感じるかもしれません。でも、実は坐禅はいつでもどこでも(立ったままでも)できるものです。自宅やオフィスはもちろん、通勤電車やトイレなどでもでき、心にゆとりをもたらして、落ち着かせることができます。

現代人にぴったり! 坐禅のうれしい効果

  • 心が落ち着き、ストレス解消につながる
  • 集中力がアップする
  • 他人にも自分にも惑わされなくなる

とはいえ、「坐禅で絶対にリフレッシュするぞ!」という固い決意でのぞむと、坐禅をしても余計に疲れてしまいます。「最近忙しいから、ちょっと坐ってみようかな」くらいの楽な気持ちで、まずは5分、坐禅を始めてみましょう。

まずは基本から!心のゆとりを生む坐禅

準備編

準備するものは?

座布団を2枚用意します。1枚は床に敷き、もう1枚は二つ折りにしてお尻の下へ。お尻が7~8センチ持ち上がると腰がまっすぐのびて安定するため、足が組みやすくなります。低い場合はもう1枚座布団を重ねたりクッションなどを使って調整しましょう。畳に坐る場合は下に敷く座布団はなくてもOKです。

どんな服でやればいい?

基本的には普段着でOKですが、足を組んで腹式呼吸をするため、ジーンズやタイトスカートなどの腰まわりをしめつけるような服ではなく、ゆったりした服装がおすすめです。ただしパジャマのままでやるのは、気持ちがゆるんでしまいますから避けてください。

家のどこでやればいい?

静かで心が落ち着ける場所なら、書斎や寝室などどこでも大丈夫です。テレビや電話の音が聞こえないようにし、風があたらないように窓は閉めますが、冷暖房は付けてもかまいません。壁やドアなどから1メートルほど離れた場所で、壁に向かって坐禅を組みます。(これは曹洞宗の場合。臨済宗は壁を背にする)

いつやればいい?

自分が一番落ち着ける時間帯でOKです。まずは5分から始めて、慣れてきたら徐々に時間を増やします。坐禅中に「いつ終わりにしようか」などと雑念を入れないためにも、携帯電話のタイマーやキッチンタイマーなどを使って、あらかじめ時間を決めておきましょう。長く坐ることよりも、毎日続けることが大切です。

こんなときは坐禅をしない!

坐禅の基本は腹式呼吸。体調が悪いときは避けるようにしましょう。

  • 胃腸の調子が悪いとき
  • 風邪などで微熱があるとき
  • 貧血気味のとき
  • 睡眠不足のとき
  • 食前で空腹、食後で満腹のとき

実践編

坐禅のポイントは、「調身(ちょうしん)=正しい姿勢で坐ること」「調息(ちょうそく)=呼吸を調えること」「調心(ちょうしん)=心を調えること」。「調身」ができていれば「調息」が、「調身」「調息」を正しく行えば、「調心」もスムーズにできます。

① 礼をする

背筋を伸ばし、ひじを水平に張って、指先が鼻の高さにくるよう手を合わせます。目線は指先の向こうを遠く見るように。その姿勢のまま、坐る場所に向かって一礼します。腰から折れるように、上体を伸ばしたまま45度くらい傾けましょう。

② 坐る

二つ折りにした座布団の前半分にお尻をのせて坐ります。両手で右足をもち、かかとをお腹に近づけるように引いて、左ももの上にのせます。次に左足を引き寄せて、右ももの上にのせます。足の組み方は左右逆でも構いません。両方の足の裏が上を向くように足を組みましょう。両ひざとお尻の3点で体を支えるように坐ります。これが出来ない場合は、片足だけをももの上にのせ、もう片足はももの下に入れる坐り方でもいいですし、正座やあぐらでもかまいません。

③ 姿勢を調え、手を組む

少しあごを引いて頭のてっぺんを天に突き上げるようにします。背骨の上に頭がのっているイメージで、肩の力を抜き、あごは出しすぎず引きすぎないように。下腹がふくらむように息を吸い、静かにゆっくりと息を吐いて、腹筋をゆるめます。
手は右手のひらを上に向け、左足の上に置き、右手の上に左手の四指が重なるようにのせます。両手の親指がかすかに触れる程度に支えあい、水平になるように保ちます。

④ 視線を定め、合掌

口は軽く閉じ、目は半分開いた半目にして、視線を90センチ先に落とします。ただし視線を落とした先をじっと見つめると、そこに意識が集中してしまいます。半目の目的はあくまでも外に心を向けないことですから、視線を向ける程度にします。
そのまま、ひじを張って両手のひらを合わせて、心を落ち着けるよう合掌します。このとき頭は下げません。

⑤ 深呼吸をする

手を再び組んで、深呼吸します。口を軽く開け、歯の間から細く長く息を吐き出します。吐ききったら、下腹がたっぷりとふくらむまで鼻から息を吸い込みます。これを1回~数回行います。

⑥ 瞑想前のウォーミングアップ

手のひらを上に向け、両ひざの上にのせて、上体をまっすぐにしたままゆっくり真横に倒します。これ以上倒れないというところで上体をゆっくり元に戻し、反対側に倒します。これを1~2回繰り返します。

⑦ 瞑想

再び手を組んだら、腹式呼吸をしながら心を落ち着けます。

◎腹式呼吸のやり方

丹田(おへその約10センチ下)に意識を集中させ、鼻からゆっくり息を吐きます。吐ききったら、ゆっくりと静かに鼻から息を吸います。息を吸うときは下腹の筋肉にまかせて吸い、下腹は力を抜きます。
丹田に意識を集中させることが、自分の内側を見つめることにつながり、集中するうちに自意識を消すことができます。すると呼吸も落ち着き、自然と下腹の呼吸に任せられるようになるでしょう。1回1回ていねいに呼吸するようにしましょう。

⑧ 合掌

終了の時間になったら、静かに合掌し、6を行います。今度は始めは小さく、徐々におおきく左右に上体を 倒して腰をやわらかくします。その後足をほどいて(足がしびれていたらおさまるまで待ちます)、ゆっくりと立ち上がって1の礼を行います。

監修

京都竜宝寺住職 中野東禅さん

現代人は「なぜ、うまくコミュニケーションがとれないのか」「なぜ、こんな容姿に生まれたのか」といったさまざまな悩みを抱えています。これらに対する答えはありませんが、しかし、人はすべてのものごとに理由を求めます。私たちは「なぜ」が見えないと不安で落ち着かないのです。
どのような現実も仏の命・神の配剤と知り、現状を認めたうえで、自分に何ができるのかを考えるゆとりを持つこと。それが禅の目指す「心の静寂」です。
あるがままを受け入れて満足できれば、私たちの心はもっと自由になれるでしょう。


1939年静岡県生まれ。駒澤大学仏教学部禅学科卒業、同大学大学院修士課程修了。元曹洞宗教化研修所部門講師、武蔵野大学講師。仏教や禅をわかりやすい語り口で広め、禅に関する著書も多い。

参考書籍:「心を落ち着ける どこでも坐禅」 洋泉社 1300円

満員電車や、オフィスでも!どこでもできる「坐禅」のススメ

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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