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脂肪肝は肝臓の危険信号?原因と症状・改善方法を解説

「脂肪肝」という言葉を聞いたことはありますか?脂肪肝とは、簡単に言えば肝臓に異常な量の脂肪が溜まった状態のこと。お酒をたくさん飲む人や食べ過ぎ・不摂生などが原因で起きる疾患です。脂肪肝の怖さは自覚症状がないこと。放置すると、命にかかわる重大疾患につながる可能性もあります。

そこで今回は、脂肪肝の原因や症状・予防改善方法などについて、久野銀座クリニック院長 医学博士の岡村信良先生に教えていただきました。

岡村信良

【監修】小田原博信会 理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士

平成18年北里大学大学院卒、平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに平成20年に入職、その後院長に就任。

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脂肪肝とは?発症したときのリスクは?

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まずは、脂肪肝とはどのような状態なのか?発症したときにどのようなリスクがあるのかについてご紹介します。

脂肪肝とは?

脂肪肝は、肝臓に異常な量の脂肪が蓄積する状態を指します。もともと肝臓は、食事からとった脂肪をエネルギー源として使うために、脂肪を分解して細胞に溜めておく機能を持っています。しかし、脂肪の蓄積が分解スピードを超えると、余った脂肪が肝細胞の中にどんどん蓄積されることに。そしてその量が異常に増加し、肝細胞の30%以上になると「脂肪肝」と呼ばれる状態に進行します

脂肪肝のリスクは?

脂肪肝になると肝細胞がふくらみ、細胞が破壊されていきます。すると、「マクロファージ・クッパー細胞(肝臓の綿維化を進行させる細胞)」の働きが活発になり、破壊された細胞のすき間が線維によって埋められていきます。線維化と呼ばれるこのような症状が進行すると肝臓が固くなり機能が低下、重症化すると肝硬変や肝臓がんを発症するリスクが高くなります。また、脂肪肝を発症している人の多くは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を合併しています。動脈硬化が進行しているパターンも多く、心疾患や脳疾患を発症するリスクも高い状態と考えられます。

関連記事:メタボリックシンドロームとは?診断基準や内容と予防改善の方法

自覚症状のなさも脂肪肝の怖さ

肝硬変や肝臓がんなどの重大疾患につながる病気であるにもかかわらず、脂肪肝になっても初期段階では自覚症状がほとんどありません。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれることもあるように、脂肪肝になっていても特に表面的な問題は見えないのです。それが脂肪肝の怖さのひとつといえます。

アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝(NASH)の違いは?

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脂肪肝には「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝(NASH)」の2種類があります。それぞれの特徴や違いについてご紹介します。

アルコール性脂肪肝とは?

お酒の飲み過ぎが肝臓に良くないことが知られているように、脂肪肝の原因の一つはお酒です。お酒が原因の脂肪肝のことを「アルコール性脂肪肝」といいます。

体内に入ったアルコールは肝臓で分解されて体外に排出されますが、この過程で肝臓の働きに異常が生じ、肝臓に脂肪が溜まっていってしまうのです。なお、純アルコールで1日あたり男性30g以上、女性20g以上の飲酒量だと、アルコール性脂肪肝のリスクが高まるとされています。純アルコール20gは次のようなお酒の量に相当します。

  • 日本酒 180ml
  • ビール 500ml
  • 焼酎 110ml
  • ワイン 180ml
  • ウイスキー 60ml

非アルコール性脂肪肝(NASH)とは?

お酒が原因ではない脂肪肝を「非アルコール性脂肪肝(NASH)」といいます。具体的には、アルコール摂取量が基準(1日あたり男性30g/日未満、女性20g/日未満)を下回っているにも関わらず、脂肪肝と診断されたケースがこれに該当します。主な原因は、食べ過ぎや偏った食生活による肥満や糖尿病、脂質異常症などです。また、不規則な生活習慣やストレス過多、運動不足なども非アルコール性脂肪肝(NASH)のリスクを高めるとされています。

脂肪肝を診断・発見するには?

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上述したように、脂肪肝に自覚症状はありません。そのため、脂肪肝を発見するためには病院での検査が必要です。脂肪肝の有無は以下の検査で診断できます。

病院で受けられる脂肪肝の検査

脂肪肝は、血液検査と超音波検査(エコー)などを合わせて診断されます。

血液検査

健康診断の血液検査で、肝臓に関する数値であるAST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPの3つの数値が基準値を超えていると診断された場合、脂肪肝やそれ以外の肝疾患の可能性が疑われます。これらの数値に異常があると診断された場合は、自覚症状がなくても精密検査を受けるようにしましょう。

超音波検査(エコー)

血液検査の結果で脂肪肝が疑われる人は、超音波検査(エコー)でさらに肝臓の状態を精密に検査します。肝臓の脂肪量などを確認し、脂肪肝の有無が診断されます。

病院の検査以外で脂肪肝に気づくためには?

健康診断や病院の検査以外で脂肪肝に気づくには、自身の食・生活習慣を振り返ってみることが大切です。脂肪肝は早期発見が大切なため、不安を感じる場合は以下をチェックしてみてください。

特に、非アルコール性脂肪肝はGPTの異常値が出る可能性もありますが、個人差により血液検査だけでは発見しにくいケースも見られます。脂肪肝が知らず知らずのうちに進行している場合もあるため、該当する項目が多い場合は精密検査を検討してみてください。

  • 肥満体型である
  • 外食が中心で栄養が偏っている
  • ジャンクフードや清涼飲料水を頻繁に摂る
  • 座ったままで過ごす時間が長い
  • 運動不足が慢性化している
  • 睡眠不足が続いている
  • 睡眠中に目を覚ますなど睡眠の質が低下している

家族に脂肪肝の病歴がある人は特に注意

脂肪肝には遺伝的な要素も関係しているといわれています。両親や家族に脂肪肝の病歴がある場合は、食生活や生活習慣により一層気をつけた方が良いでしょう。また、体型・食・生活習慣で気になる部分がある場合は、検査を検討してみてください。

脂肪肝を予防・改善する方法は?

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最後に、脂肪肝を予防・改善するための方法についてご紹介します。

食生活の改善

お酒を控えめにするのはもちろん、食事や間食での摂取カロリーや内容に気をつけましょう。脂質や糖質が多くなりすぎないように、揚げ物・ジャンクフード・炭水化物・お菓子などを減らし、野菜や海藻、こんにゃくなどを積極的に食べるようにするのがおすすめです。

また、主食・主菜・副菜の揃った食事を1日3食食べることが大事です。主食の穀類を食べる際は、玄米や全粒粉など食物繊維が多いものがおすすめ。この際、血糖値の急激な上昇を抑えるために、主食はできるだけ食事の最後の方に食べましょう。副菜には、野菜や海藻がたっぷり入ったものを選び、よく噛んで食べてください。

運動習慣をつける

脂肪肝の予防には、肝臓に脂肪が蓄積しないようにすること、つまり運動をすることで消費エネルギーを増やすことが大事です。運動不足の人は、まずは1日10分からでもいいので、歩いたり走ったり筋トレをしたり、体を動かすことを始めましょう。

何よりも大切なのは、1回の運動量を増やすよりも長く継続することです。できれば毎日続けられるように、無理のない範囲で運動習慣を身につけましょう。

睡眠をしっかりとる

睡眠不足も脂肪肝のリスクを高める原因のひとつです。そもそも睡眠時間が足りてないという方は、まずは1日8時間程度の睡眠時間を確保するようにしましょう。睡眠の質が原因で睡眠不足の方は、寝る前のカフェインや飲酒、スマートフォンの閲覧を控えるなど、睡眠前後の習慣を見直してみてください。

関連記事:メラトニン・リズムを整えてぐっすり眠るための3つのポイント

まとめ

脂肪肝は自覚症状がなく、静かに進行していきます。放置すると肝硬変や肝臓がんなど重大疾患につながる可能性があるので、体型・食・生活習慣でリスク要因がある方は、定期的に検査を受けるようにしましょう。また、脂肪肝とそれに伴うさまざま病気の予防のためにも、食生活や生活習慣を見直しましょう。

小田原博信会理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士 岡村信良

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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