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メタボリックシンドロームとは?診断基準や内容と予防改善の方法

「忙しくて食生活が乱れている」「お腹に脂肪がたくさんついてきた」「運動不足になっている」

こんな自覚がある方は、メタボリックシンドロームの不安が頭をよぎったことがあるのではないでしょうか。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積があり、かつ血圧、血糖、血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れている状態のこと。心疾患や糖尿病など生活習慣病の前段階とも言えます。深刻な状況に陥る前に、食事や運動・生活習慣を見直して予防改善に努めることが重要です。

そこで今回は、メタボリックシンドロームとは何か?の他、診断基準や内容、何歳から予防改善が必要なのかについて、栄養管理士の望月理恵子先生に詳しく教えてもらいました。

望月 理恵子

【監修】管理栄養士

健康検定協会理事長、管理栄養士、山野美容芸術短期大学講師、服部栄養専門学校特別講師、小田原銀座クリニック栄養顧問、日本臨床栄養協会評議員、サプリメント・ビタミンアドバイザーなど、栄養・美容学の分野で活躍。多くの方が健康情報を学ぶための健康検定協会を主宰するとともに、テレビ・雑誌などで根拠ある栄養学を提供・監修をしている。「栄養学の◯と×」、「やせる時間に食べてみた!」など著書も多数。

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メタボリックシンドロームとは?診断基準や内容

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メタボリックシンドロームとはどのような状態を指すのか、また、診断の基準や内容について解説します。

メタボリックシンドロームとは何のこと?

メタボリックシンドロームとは、心疾患や糖尿病などの生活習慣病になりやすい健康状態のこと。生活習慣病の「前段階」と言っても良いでしょう。メタボリックシンドロームは、以下の要因が組み合わさって生じます。

  • 腹部肥満:内臓脂肪の蓄積(おなか周りに脂肪がたまること)
  • 高血圧:血圧が基準値を超えること
  • 高血糖: 空腹時の血糖値が基準値を超えること
  • 高トリグリセリド: 血液中の脂質(トリグリセリド)が基準値を超えること
  • 低HDLコレステロール: 良いコレステロール(HDL)が基準値に満たないこと

内臓脂肪の蓄積があり、かつ血圧、血糖、血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れている状態だと、メタボリックシンドロームと診断されます。

メタボリックシンドロームの診断基準や内容は?

メタボリックシンドロームの診断には、一般的に以下の基準が使用されます。

ウエスト(腹囲)※腹囲が以下の数値であると、内臓脂肪面積が≥100㎠に相当

  • 男性:85センチ以上
  • 女性:90センチ以上

血圧

  • 収縮期血圧(最高血圧):130mmHg以上
  • 拡張期血圧(最低血圧):85mmHg以上

空腹時血糖

110mg/dL以上

血清脂質

  • 中性脂肪(トリグリセリド)150mg/dL以上
  • HDLコレステロール 40mg/dL未満

メタボリックシンドロームの健康リスクを解説!予防改善は何歳から?

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メタボリックシンドロームは、以下のような健康リスクの要因になるとされています。どのような健康リスクの要因となるのかを具体的に解説します。

心血管疾患・脳血管疾患

メタボリックシンドロームは、高血圧、高血糖、高トリグリセリド、低HDLコレステロールなどの要因が組み合わさるため、動脈硬化や血栓形成などのプロセスを促進するリスクがあります。さらに、心血管疾患や脳血管疾患(心臓病や脳卒中など)のリスクが増加します。

2型糖尿病

内臓脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性が起こり、高血糖になりやすく、2型糖尿病発症の原因となります。

脂肪肝

内臓脂肪の蓄積により、脂肪肝(肝臓に脂肪が異常に蓄積する疾患)のリスクを増加させることがあります。脂肪肝は肝臓の機能を損ない、進行すると肝硬変や肝癌につながる可能性も。

高尿酸血症

内臓脂肪の蓄積により、高尿酸血症(尿酸値が高い状態)のリスクが増加することがあります。高尿酸血症が続くと痛風(関節の疼痛と腫れを伴う疾患)の発症リスクを高めます。

腎臓病

メタボリックシンドロームは、腎臓の機能に影響を与え、慢性腎臓病のリスクを増加させる可能性があります。腎臓疾患は体内の老廃物や余分な水分を除去する能力を損なうため、健康への影響が大きくなります。

がん

内臓脂肪の蓄積や高血糖により、がん(特に肝臓がんや結腸がん)の発症リスクを増加させる可能性があります。

予防改善は何歳からが最適?

メタボリックシンドロームの予防改善をはじめるのに適した年齢というのは基本的にありません。ただ、上述したような健康リスクは40代以上になるとさらに高まっていくとされています。健康診断でメタボリックシンドロームと診断された、もしくはメタボリックシンドロームに近い数値の方は、30代であっても20代とまだ若くても予防改善をはじめた方が良いでしょう。

メタボリックシンドロームの予防と改善:食事

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メタボリックシンドロームの予防と改善には食生活の見直しが大事です。以下のポイントを意識しましょう。

まずは心がけるべきポイント

メタボリックシンドロームの予防のためには、栄養バランスの取れた食事が重要です。食べるものには気をつける必要がありますが、1日3食適度に食べるようにすべきです。また、過剰な間食を減らす・しないことも大切です。

積極的に食べたい食品は?

いろいろな食材を取り入れ、主食・主菜・副菜の揃った食事を摂ることが大切です。肉や魚などの主菜となるもの、野菜や海藻、きのこなどの副菜となるものを意識して摂りましょう。主食は玄米や雑穀米、全粒粉パンなど食物繊維の多いものがおすすめです。

できるだけ避けるべき食品は?

脂質や糖質、塩分の多いものは控えましょう。特に丼もの(牛丼・親子丼 等)はご飯のボリュームが多くなりやすかったり、麺類(ラーメン・うどん 等)は炭水化物に偏りやすかったりするので、量に注意しましょう。

外食時、理想的なランチメニューは?

主食・主菜・副菜の揃ったメニューがおすすめです。焼き魚定食のような定食スタイルのメニューを選ぶと良いでしょう。

例)ごはん、味噌汁、焼き魚、ほうれん草のお浸し

パスタなどの1品料理は炭水化物に偏りやすいので、単品で食べるのではなく、主菜や食物繊維の多い野菜・海藻が多いものを加えましょう。

例)ペペロンチーノ+海藻サラダ+温泉卵

ジャンクフード・揚げ物をどうしても食べたいときは?

高カロリーなものやジャンクフード、揚げ物は避けた方がいい食品ではありますが、どうしても食べたいときもありますよね。こういった食品を食べるのであれば、以下のポイントを意識してみてください。

  • 夜よりも昼に食べる
  • 野菜や海藻、きのこなどを先に食べて、糖の吸収を緩和させる
  • 揚げ物は時間が経つと油が酸化するので、出来立てを食べる
  • カロリーの高いものやジャンクフード・揚げ物などが続かないよう食事内容を調整する
  • ゆっくりよく噛んで食べる

メタボリックシンドロームの予防と改善:運動

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メタボリックシンドロームの予防には、食事のみならず運動も大事です。週2回以上、1回30分以上の運動を心がけてください。ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳など、継続して行えるものを選びましょう。有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングを組み合わせるのもおすすめです。

運動習慣のない方は、まずは1日10分体を動かす時間を作り、慣れてきたらさらに10分と増やしていくと続けやすくなります。通勤時間を利用して、1駅分歩く・少し遠回りして帰宅する・階段を使うなど、身近なところから始めるのも良いでしょう。

メタボリックシンドロームの予防と改善:体重と体脂肪率の管理

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メタボリックシンドロームの予防改善には、体重と体脂肪の管理が重要です。体重と体脂肪管理のポイントについて解説します。

体重を管理しよう

自身の適正体重は、身長(m) × 身長(m)× 22で求められます。例えば、身長162cmの人であれば、1.62×1.62×22=57.7368、つまり57キロになります。

ここで用いられる「22」とはBMIの数値です。病気の合併が最も少ないのが22だと考えられています。25以上になると「肥満」、35以上は「高度肥満」と判定されます。

BMIの値は、体重(kg) ÷ (身長(m)2×身長(m))で求められます。例えば、身長162cmで体重70kgの人の場合、70÷(1.62×1.62)=26.67、つまり「肥満」と判定されます。体格を考える場合には、BMI(body mass index)を重視します。目標とするBMIの範囲は以下です。

  • 18 – 49歳:18.5 - 24.9
  • 50 – 64歳:20.0 - 24.9
  • 65 – 74歳:21.5 - 24.9
  • 75歳以上:21.5 - 24.9

体重と体脂肪率どちらの指標が重要?

脂肪蓄積予防や改善のためには、体重と体脂肪であれば体脂肪率の方が重要です。体重が減っていても、脂肪ではなく筋肉の量が減っている可能性もあるからです。体脂肪率が減っていれば、内臓脂肪の量も減っている可能性が高いと言えます。体脂肪率の基準は以下を参考目安にしてください。

体重と体脂肪率どちらの指標が重要?

脂肪蓄積予防や改善のためには、体重と体脂肪であれば体脂肪率の方が重要です。体重が減っていても、脂肪ではなく筋肉の量が減っている可能性もあるからです。体脂肪率が減っていれば、内臓脂肪の量も減っている可能性が高いと言えます。体脂肪率の基準は以下を参考目安にしてください。

男性の場合

  • 10%未満:痩せ
  • 10〜20%未満:標準
  • 20〜25%未満:軽度肥満
  • 25%以上:中等度肥満
  • 30%以上:重度肥満

女性の場合

  • 20%未満:痩せ
  • 20〜30%未満:標準
  • 30〜35%未満:軽度肥満
  • 35%以上:中等度肥満
  • 40%以上:重度肥満

体重・体脂肪率管理はどう行えばいい?

ここまで解説した食事管理や運動によって、適正体重を維持するように心がけましょう。体重が軽くても体脂肪率が高いパターンも考えられるので、体重だけでなく、体脂肪率の確認ができるとベターです。

メタボリックシンドロームの予防と改善:その他の生活習慣

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禁煙をする

喫煙は、血圧を上昇させる要因の1つです。また、糖尿病の発症リスクを増加させる可能性も。禁煙によって、血圧の正常化や2型糖尿病予防が期待できます。また、肺がんなどの呼吸器系の疾患を予防するだけでなく、総合的な健康向上にもつながります。

アルコールを控える

腹部の肥満はメタボリックシンドロームの診断基準の1つです。アルコール、特にビールなど糖分を多く含むアルコールは、腹部肥満のリスクを高めます。また、アルコールを摂った直後は一時的に血圧が下がりますが、長期的な過剰摂取によって、高血圧のリスクが高まる恐れが考えられます。

さらに、アルコールの代謝は主に肝臓で行われるので、過剰なアルコール摂取は肝臓に負担をかけ、肝臓の脂肪蓄積や炎症などを引き起こすこともあります。種類問わず、どんなお酒もほどほどに、飲みすぎないように気をつけましょう。

質のよい睡眠をとる

不眠のある人、睡眠が極端に短い人や長い人では、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が起こりやすいことが分かっています。特に睡眠不足が慢性化すると空腹時血糖値が上がりやすく、血糖値を下げるインスリン分泌能力が低下してしまいメタボリックシンドロームを招きやすくなります。人によって十分な睡眠時間は異なりますが、起きて疲れが取れている、日中眠気がないような質の良い睡眠を取れるように意識しましょう。

ストレス管理をする

長期間にわたる慢性的なストレスは、メタボリックシンドロームのリスクを増加させると考えられています。ストレスを軽減する方法を見つけ、リラックスの時間を取りましょう。

定期的に健康診断を受ける

定期的な医師の診断を受け、リスク要因をチェックしつつ、適切な治療を受けることが大切です。

まとめ

現代日本において、メタボリックシンドロームは多くの人に関係のある健康問題です。重大疾患のリスクを避け、いつまでも元気な体を保つためには、健康的な食事・運動習慣を心がけながら体重・体脂肪を管理し、メタボのリスク要因となるような生活習慣を改めることが大事です。また、40歳を過ぎたら定期的な健康診断を受け、自身の体の状態をきちんと把握し、体の変化や異常を早期に発見できるようにすることも重要です。

管理栄養士 望月 理恵子

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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