暮らし あと押し eo

eo健康

花粉症に効くのはどんな治療?薬の種類や選び方・その他の治療方法を徹底解説

春が近づき「目がかゆい」「鼻がグズグズする」「くしゃみが止まらない」など、花粉症の症状が出始めている方もいるのではないでしょうか。花粉症は、花粉が飛散する時期に発症しやすいアレルギー性疾患です。辛い症状を和らげるためには、適切な薬や治療方法を選ぶことが重要です。そこで今回は、花粉症の最新の治療法・症状・原因の他、症状を軽減するための対策などについて耳鼻咽喉科医の内尾紀彦先生に教えていただきました。

内尾紀彦

【監修】耳鼻咽喉科医

東京慈恵会医科大学卒。日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会 耳鼻咽喉科専門医,日本音声言語医学会認定 音声言語認定医,日本めまい平衡医学会 めまい相談医。東京慈恵会医科大学「耳鼻咽喉科学教室(東京慈恵会医科大学附属病院)」、JCHO東京新宿メディカルセンター「富士市立中央病院 耳鼻咽喉科」にて勤務。2021年7月から「そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院」院長に就任。

pro_kafunnsyou

まずは知っておきたい花粉の種類と症状、症状が出やすい時期は?

1_kafunnsyou

花粉症を発症する花粉の種類

花粉症を引き起こす植物はたくさんあります。代表的なのは、以下のような植物です。

  • スギ(ヒノキ科)
  • ヒノキ(ヒノキ科)
  • ハンノキ(カバノキ科)
  • シラカンバ(カバノキ科)
  • イネ(イネ科)
  • ブタクサ(キク科)
  • ヨモギ(キク科)
  • カナムグラ(アサ科)

それぞれ花粉が飛散する時期が異なるため、症状が出る時期も違ってきます。

花粉症の症状とは

花粉症の一般的な症状は、さまざまです。代表的な症状としては以下があります。

  • くしゃみ・鼻みず・鼻詰まり
  • 目のかゆみ・充血
  • 皮膚のかゆみ・赤み
  • のどの痛みやかゆみ・せき
  • 頭痛や微熱

花粉症が出やすい時期はいつ?

地域や気候によっても異なりますが、花粉症に悩まされる人が増えるのは春と秋。しかし近年では、春や秋だけでなく、年間通じて何らかの花粉症に悩まされている人も多くなっています。季節ごとに現れやすい花粉症、それぞれの花粉のピーク時期についてご紹介します。

ただし、花粉に対するアレルギー反応の程度は人によって異なるので、同じ地域に住む人でも花粉症の症状や発症時期に個人差があります。また、気候変動や環境変化により、花粉の飛散時期や量に変化が見られる場合があり、これが花粉症の症状に影響を与える可能性もあります。そのため、以下に示すのは、あくまで目安として捉えてください。

春の花粉症

  • スギ:10月から6月前後にかけて症状が現れることが多く、ピーク時期は2月から4月。
  • ヒノキ:2月から6月前後にかけて症状が現れることが多く、ピーク時期は3月から4月。
  • ハンノキ:1月から6月頃にかけて症状が現れることが多く、 ピーク時期は4月。

秋の花粉症

  • ブタクサ:8月から10月頃にかけて症状が現れることが多く、ピーク時期は9月前後。
  • ヨモギ:8月から10月ごとにかけて症状が現れることが多く、ピーク時期は9月。
  • カナムグラ:8月から11月ごろにかけて症状が現れることが多く、ピーク時期は9月から10月。

年間通じて現れる花粉症

ススキやカモガヤ、ネズミホソムギなどのイネ科植物の花粉は一年を通じて飛散する可能性があります。そのため、一年を通じて花粉症の症状が出続ける人もいます。

花粉症の一般的な治療薬とは?

2_kafunnsyou

花粉症の薬にはさまざまな種類があり、症状の程度や症状が出ている箇所によって選択肢が異なります。

内服薬

症状緩和によく用いられるのは、抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬などの内服薬です。くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・喉の痛み・目の痒みなど、花粉症のすべての症状を網羅しています。また、鼻粘膜のうっ血が見られる場合には血管収縮薬、鼻粘膜や目の炎症がひどい場合には炎症を抑える抗炎症薬などを処方されることもあります。

点眼薬や点鼻薬

目や鼻の症状には、内服薬の他に液体の点鼻薬が用いられることもあります。目の症状には点眼薬、鼻の症状には点鼻薬など、特定の症状を抑える薬が処方されます。

鼻症状がひどいなら、外科手術やレーザー療法も

3_kafunnsyou

アレルギー性鼻炎の治療においては、まずは薬物療法や生活習慣の改善などの方法が優先されます。しかし、これらの方法で症状がコントロールできない場合には、下鼻甲介手術が効果的な選択肢となることがあります。この手術は、鼻の通気を改善し、アレルギー症状を緩和することを目的としています。

下鼻甲介手術とは

下鼻甲介手術は、アレルギー性鼻炎で問題となる下鼻甲介の粘膜を部分的に切除する手術です。この手術は、以下のような状況で推奨されることがあります。

  • 薬物療法や他の治療で症状が改善しない場合
  • 鼻詰まりが持続していて、日常生活に影響を及ぼしている場合
  • 鼻の通気が慢性的に悪い場合

下鼻甲介手術のメリット

下鼻甲介手術を行うと1年以上快適に過ごせることが多いですが、あくまで粘膜を切除する手術のため、症状の改善に効果的なのは鼻詰まりです。鼻水には効果がやや弱いという点を理解しておきましょう。代表的なメリットとしては以下があります。

  • 通気性の改善:下鼻甲介の一部を取り除くことで、鼻の通気が改善されます。
  • 症状の緩和 :鼻詰まりが減少し、呼吸が快適になります。
  • 日常生活の質の向上:睡眠の質が改善されるなど、日常生活を快適に過ごしやすくなります。

他の手術法について

アレルギー性鼻炎の治療では、レーザー手術や後鼻神経切断術という選択肢もあります。しかし、これらの手術には、副作用、症状の再発の可能性など、さまざまなリスクが考えられます。医師としっかり相談したうえで検討するようにしましょう。

レーザー手術

半年から1年で効果が無くなってしまう事が多く、繰り返し焼灼を行うと粘膜が固くなる瘢痕化のリスクがあります。

後鼻神経切断術 

治療費が高いこと、50%は症状緩和につながらない可能性がある点がデメリットになります。この手術を受けることで鼻水があまりでなくなる方が半数、効果の無い方が半数います。

なお、こういった治療は一般的なアレルギー科や耳鼻科ではなく、原則として大きな病院に紹介されることが多くなっています。

スギ花粉症唯一の根本治療、舌下免疫療法も

4_kafunnsyou

舌下免疫療法とは

前項でご紹介した治療薬は、あくまで対処療法です。根本的にアレルギーがなくなるわけではありません。それに対して、舌下免疫療法は、スギ花粉症に対する唯一の根本治療と言われています。アレルゲン物質を含んだ治療薬を毎日少しずつ舌下に投与することにより、アレルゲンに体を少しずつ慣らしていき、アレルギー症状を根本から治していきます。

ただし、舌下免疫療法は、抗アレルギー剤のように服用後すぐアレルギー症状が緩和するものではありません。治療開始から日が浅いうちは症状が出るので、その間は抗アレルギー剤と併用することもあります。早い方であれば治療開始から1年以内に効果を感じ始めますが、一般的には最低3年ほど治療を続ける必要があります。なお、治療の効果を実感する方は、約8割程度とされています

舌下免疫療法の開始時期

舌下免疫療法の開始時期は、スギ花粉が飛散していない時期からです。花粉が飛散しているシーズン中の治療はできません。地域によって異なりますが、時期は6月から11月が目安となります

どんな人におすすめ?

時間はかかっても根本的にスギ花粉症を治したい方におすすめです。毎年スギ花粉症に悩んでいる人は、治療を検討してみても良いかもしれません。ただし、治療を受けるにはスギ花粉症の確定診断を受ける必要があります。また、スギ花粉症以外の花粉症に対しては、効果は認められていません。このほか、重篤な気管支炎がある・喘息や悪性腫瘍・自己免疫疾患がある方などは治療ができないこともあるので、まずは舌下免疫療法を行なっている医療機関に相談してみてください。

関連記事:始めるなら今!スギ花粉症を根本から治療する「舌下免疫療法」とは

その他の免疫療法

舌下免疫療法と同様の免疫療法として、皮下免疫療法というものもあります。皮下免疫療法の開始時期は、舌下免疫療法と同じで6月から11月です。保険適応になっているのは、重症のスギ花粉症患者に対して行われる抗IgE抗体オマリズマブを使った治療です。治療は医師の指導の下で行われ、患者の健康状態に応じて治療計画が決定されます。

オマリズマブとは、皮下注射で投与される重症のアレルギー性疾患治療用の抗IgE抗体です。この薬は免疫グロブリンE(IgE)に結合し、アレルギー反応を引き起こす肥満細胞の活性化を阻害します。

オマリズマブは喘息の頻度や重症度を減少させ、アレルギー症状を改善しますが、アナフィラキシーなどの副作用リスクがあります。また、皮下免疫療法では1カ月に1回来院し注射する必要があります。同じ免疫療法であれば、舌下免疫療法の方が受けやすいといえるでしょう。

日常生活でできる対処方法

5_kafunnsyou

日常生活の中でも、花粉症の症状を抑える工夫をしてみましょう。代表的な対処方法としては以下があります。

室内に花粉を入れないように注意する

花粉の多い日は、窓を閉めて室内に花粉が入るのを防いでください。また、エアコンのフィルターを利用して換気をしましょう。空気清浄機を使用して、室内の花粉を効果的に除去するのも大事です。このほか、帰宅時には、玄関前で着用した衣類の花粉を払い落し、室内に侵入する量を最低限に抑えるようにしましょう。

睡眠をしっかりとる

良質な睡眠は免疫機能の維持に重要です。寝室は清潔に保ち、侵入したアレルゲンを除去するために、定期的に掃除をしましょう。

手洗いや鼻うがいで花粉を取り除く

定期的に顔や手を洗い、花粉を除去しましょう。また、鼻うがいもおすすめです。鼻の内部を洗浄することで、鼻腔に付着した花粉を取り除くことができます。

関連記事:鼻うがいのやり方。 塩水などの準備と効果的な方法

まとめ

花粉症にお悩みの方は、今回ご紹介した内容を参考に治療薬を服用してみてください。また、室内に侵入する花粉の量を抑えたり、手洗い・うがい・鼻うがいなどで花粉を除去したり、日常生活でも症状を抑える工夫を。それでも効果が薄い場合は、医師の相談のうえ、手術や舌下免疫療法を検討するのも良いでしょう。

【監修】耳鼻咽喉科医 内尾紀彦

そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院:https://www.senkita-jibika.com/
声の専門家:https://www.uchio-norihiko.jp/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

おすすめ記事一覧