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舌の奥や側面にできる痛いぶつぶつの理由は?原因と対処方法

舌の奥や側面にぶつぶつができると、多くの人は口内炎と思うのではないでしょうか?しかし、舌にできるぶつぶつは口内炎とも限りません。乳頭と呼ばれる舌表面に本来あるぶつぶつが通常より目立っているケースや、舌扁桃(ぜつへんとう)や舌ガンなどの病気である可能性もあります。また、口内炎の場合でもその原因はさまざまです。そこで今回は、舌にぶつぶつができる原因や考えられる病気・病院にいく目安などについて、歯科口腔外科の上田優貴子先生に教えてもらいました。

上田 優貴子

北野病院 歯科口腔外科 副部長

愛知学院大学 歯学部を卒業。京都大学医学部附属病院で研修後、歯科口腔外科に入局。専門は口腔外科分野。口腔外科分野の治療を主に行い、ほかにも治療が困難な小児などの歯科治療もおこなう。

北野病院 歯科口腔外科 副部長 上田 優貴子

舌にできる痛いぶつぶつの一般的な原因は、口内炎

舌に痛いぶつぶつができている場合、一般的な原因は口内炎です。口内炎とは、口腔粘膜に生じる炎症の総称です。舌の奥や側面・先端など、部位を問わず生じます。

口内炎の種類と原因

口内炎の原因には、口腔内への刺激(カタル性口内炎)やウイルス・真菌への感染・アレルギー・貧血・自己免疫疾患などがあります。

関連記事:口内炎の治し方を歯科医師が解説。少し早く治す方法も

口腔内への刺激

合わない義歯やかぶせ物・尖った歯などの刺激で生じる口内炎を「カタル性口内炎」といいます。原因を除去することで治癒していきます。

口腔カンジダ

真菌であるカンジダが口内炎を起こすこともあります。白い点状のぶつぶつができるのが特徴です。初期には症状はなく、ガーゼなどで拭うときれいになります。進行すると、ヒリヒリした痛みが出現し、ごはんも食べられないような状態になることも。口腔カンジタが原因の口内炎には、抗真菌薬を塗布または内服します。

関連記事:口の中が痛い・ヒリヒリする。口内炎やカンジダ症の原因や治療法【歯科口腔外科医監修】

ウイルス

ヘルペスや水痘(帯状疱疹)、コクサッキーウイルス(手足口病、ヘルパンギーナ)、麻疹(はしか)などのウイルスに感染して、口内炎が生じることもあります。この場合は採血でウイルスを特定し、抗ウイルス薬を内服や点滴・塗り薬を投与して治療します。なお、口内炎のみならず全身症状が出ている場合や、口腔内症状が悪化して水を飲むのも困難になっているような場合は、入院しての治療が勧められます。

自己免疫疾患

天疱瘡(てんぽうそう)や類天疱瘡(るいてんぽうそう)・シェーグレン症候群・HIV感染症といった自己免疫疾患が原因で口内炎が生じることもあります。

  • 天疱瘡や類天疱瘡:舌に水ぶくれやただれをともなう赤いぶつぶつが現れる
  • シェーグレン症候群:唾液が出にくくなるので口が乾き、虫歯や口内炎ができやすくなる
  • HIV感染症:免疫力が低下するため、口内炎ができやすくなり、一度できると治癒しにくい
金属アレルギーや薬剤アレルギー

口腔内で使用している金属(銀歯など)によるアレルギーや、薬剤アレルギーによって、口内炎ができることもあります。口内炎だけでなく、全身に発疹が出る人も。治癒には原因の除去が必要なので、まずは皮膚科のアレルギーテストで原因の物質を特定します。金属アレルギーの場合は、銀歯や被せ物などを除去してセラミックなどに変更します。症状によっては、ステロイドを投与する場合も。

溶連菌感染症や川崎病

溶連菌感染症や川崎病にかかると、いわゆる「いちご舌」と呼ばれるような赤いぶつぶつが舌にできます。溶連菌感染症は、溶連菌という細菌に感染することで発症します。口内炎以外にも、喉の痛みや腫れ・発熱・かゆみをともなう全身の発疹・リンパ節の腫れなどが起きることがあります。川崎病は、乳幼児がかかりやすい急性熱性疾患です。明確な発症原因はわかっていませんが、小さな子供がかかりやすい病気で、発熱や全身の発疹・手足の腫れ・リンパ節の腫れなどが起きます。

関連記事:子供だけでなく、大人も注意。溶連菌感染症の症状や治療法・予防対策

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血の方は、舌の先に口内炎ができやすくなります。治療には、生活習慣の改善指導や鉄剤・ビタミン剤の投与などを行います。

口腔潜在的悪性疾患(こうくうせんざいてきあくせいしっかん)「口腔前癌病変(こうくうぜんがんびょうへん)」

扁平苔癬(へんぺいたいせん)、白板症(はくばんしょう)など、悪性腫瘍(ガン)になる可能性がある状態を指します。そのまま放置すると悪性化(ガン)することがあります。

  • 扁平苔癬:口腔内に白いレース状のものができる病変を指します。ヒリヒリした痛みが出現し食事摂取が困難となる場合があります。歯科用金属によるアレルギーや遺伝的素因、自己免疫疾患、ストレスなどの精神的因子、さらに代謝障害などが原因として考えられますが、正確な原因は不明です。うがい薬や副腎皮質ステロイド薬を含む軟膏による治療、アレルギーが疑われる場合は原因と考えられる歯科用金属を除去して治癒します。外科的に切除する場合もあります。
  • 白板症:口腔粘膜や歯肉に白い板状の異常が発生する病変です。喫煙・アルコールによる刺激、義歯による慢性の機械的刺激、ビタミンA・Bの不足、加齢や体質などが発症のリスクといわれていますが、原因は不明です。ビタミンAを投与したり、禁煙により治癒したりすることがありますが、治癒しない場合は切除を行います。

舌のぶつぶつのその他の原因…舌扁桃や舌ガンなどの病気の可能性も

舌のぶつぶつのその他の原因…舌扁桃や舌ガンなどの病気の可能性も

舌にぶつぶつができて痛い場合、口内炎以外にも舌扁桃(ぜつへんとう)や舌ガンが疑われるケースもあります。

舌扁桃炎(ぜつへんとうえん)

舌扁桃は、舌の扁桃に細菌が感染して炎症が起きる病気です。舌に赤いぶつぶつが生じるほか、飲み込むと痛い・喉が腫れる・発熱などの症状が出ることもあります。精神的なストレスや睡眠不足・栄養不足などで免疫力が低下したときに起こりやすいとされています。

舌ガン

舌にできるガン「舌ガン」でも、舌にぶつぶつができることがあります。しこりがあって触ると硬い・少しの刺激でも強い痛みを感じるといった特徴がありますが、すべてがこの限りではありません。口内炎との違いとして、口内炎は放っておいても数日で治癒しますが、舌ガンの場合は症状が治らず状態が悪化していきます。

もともとある舌のぶつぶつが腫れて目立っていることも

鏡で舌を見ればわかるように、舌には小さなぶつぶつがもともとあります。この組織を「乳頭」と言い、味覚を感じる器官がつまっているのです。この乳頭が、体調が悪いときなどに普段より赤く腫れ上がり、ぶつぶつが目立って見えることがあります。

舌に痛いぶつぶつがある……病院に行く目安は?

舌に痛いぶつぶつがある……病院に行く目安は?

口内炎で病院にいく人は少ないかもしれません。一般的な口内炎であれば、数日で自然治癒することがほとんどです。ですが、「週単位で治らない」「痛みが続いている」「熱が出ている」「体にも発疹がある」といった場合は病院へ行った方が安心です。

口の中だけの症状の場合は、歯科口腔外科または耳鼻科を受診しましょう。熱や発疹など全身症状もある場合は、子供は小児科に、大人は内科が妥当です。「何か病気なのでは?と気になる」といった場合、病院で診てもらうことをおすすめします。

なお、口内炎は放っておいても自然に治ることが多いですが、「口内炎が痛い→歯磨きがうまくできない→口の中が不衛生になる→口内炎がなかなか治らない」といったループにもなりがちです。口内炎予防には、普段から口の中を衛生的に保つように心がけましょう。

まとめ

今回ご紹介したように、舌にできるぶつぶつは口内炎であることがほとんど。しかし、なかには舌扁桃や舌ガンによるケースも。特に舌ガンは口の中に発生するガンの中で最も発生頻度が高く、自覚できる症状も口内炎に似ています。「舌のぶつぶつが1週間以上治らない」「悪化している」といった場合は、病院で検査を受けることをおすすめします。また、口内炎の場合も、原因によっては治療が必要なケースもありますので、お悩みの方は一度病院で相談してみるとよいでしょう。

北野病院 歯科口腔外科 副部長 上田 優貴子

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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