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口の中が痛い・ヒリヒリする。口内炎やカンジダ症の原因や治療法【歯科口腔外科医監修】

「口内炎ができた」「口の中がヒリヒリする」など、誰にでもある口の中のトラブル。悪化すると、食事がしにくくなったり喋りづらくなったり日常生活に支障をきたしかねません。また、なかには口腔がんのような重大な病気が隠れていることも。今回は口内トラブルによくある例を挙げ、それぞれの症状や原因・対処法・予防策などを歯科口腔外科医の上田優貴子先生に教えてもらいました。

上田 優貴子

北野病院 歯科口腔外科 副部長

愛知学院大学 歯学部を卒業。京都大学医学部附属病院で研修後、歯科口腔外科に入局。 専門は口腔外科分野。口腔外科分野の治療を主に行い、ほかにも治療が困難な小児などの歯科治療もおこなう。

口の中が痛い・ヒリヒリするときに考えられる病気

頬の内側や唇の裏側・舌などに炎症や痛み・違和感がある場合、以下のような病気が考えられます。

  • 口内炎
  • 口腔カンジダ症
  • 舌痛症(ぜっつうしょう)

次項からこれらの症状や原因などを解説します。

「口内炎」の症状・原因と治療法・予防法

口内トラブルとして最も一般的なのは、口内炎です。口内炎とは、口の中の粘膜や舌などに炎症が起きている状態を指します。口内炎は大きく分けて3種類。それぞれ原因や症状の現れ方に特徴があります。

【カタル性口内炎】

・原因

食事中や話し中に噛んでしまった・歯並びが悪くて歯が当たる・入れ歯がずれて当たるといった、外からの刺激によってできます。

・症状の特徴

カタル性口内炎は言うなれば“傷”なので、患部は赤くなったり腫れたりします。周りの皮膚との境目は分かりにくく、輪郭は曖昧です。

・治療法

カタル性口内炎は原因が除かれればそのままにしていてもそのうちに治まります。市販の口内炎治療薬も有効です。病院では、ステロイドの塗り薬を処方することも。痛みが強い場合は、患部にレーザーを当てタンパク質の膜を作って、痛みを軽減・治りを促進する治療を用いることもあります。

・予防法

いつも同じところにカタル性口内炎ができる方は、原因となる刺激を取り除くことが大事です。例えば、とがっている歯を削る・かみ合わせを整えるなどで対処ができます。また、口の中を清潔に保つために歯磨きをしっかり行う・口の中の乾燥を防ぐためにこまめにうがいや水分補給をするのも予防になります。

【アフタ性口内炎】

・原因

体調不良や貧血・ビタミン不足などが原因で生じます。ほかに長期的に抗生剤やステロイド剤を飲んでいる方も、口内細菌のバランスが崩れてできることがあります。

・症状の特徴

ややくぼんだ潰瘍(かいよう)のような形状で、真ん中が白くポツっとしています。周りの皮膚と境目がはっきりしていて、輪郭がわかるのも特徴です。

・治療法

カタル性口内炎と同様です。

・予防法

疲れているときや睡眠不足のとき・体調が悪いときになりやすいので、こういった状況にならないようにするのが大事です。栄養バランスの良い食事をとる・睡眠をしっかりとる・適度な運動をするなど、基本的な生活を整えましょう。このほか、カタル性口内炎と同様に口の中を清潔に保ち、乾燥させないように気をつけましょう。

【ヘルペス性口内炎】

・原因

ヘルペスウイルスによって生じるのが、ヘルペス性口内炎です。ヘルペスウイルスはもともと体内に住み着いているウイルスなので、大人がなることはほとんどありません。基本的には、初めてヘルペスウイルスに感染した乳児から3歳くらいの子供に出る症状です。ただし大人でも、体力や免疫力が低下していると体内でウイルスが活発化し発症することがあります。また、もともと抗体を持っていない人が大人になってから感染し発症すると重症化しやすいので、注意が必要です。

・症状の特徴

カタル性やアフタ性と異なり、ヘルペス性口内炎は口の中全体に多数できます。見た目は、真ん中が白く、周囲が赤い水ぶくれ状です。水疱がつぶれるととても痛いので、食事ができなかったり水が飲めなかったりすることも。また38℃以上の高熱が出ることも少なくありません。

・治療法

ヘルペス性口内炎は痛みや高熱のせいで食事や水がとれなくなることがあるため、脱水や栄養失調が懸念されます。そこでヘルペス性口内炎の子供には、入院治療を行うことがあります。抗ウイルス薬の処方や点滴などを行います。

・予防法

子供のヘルペスウイルス感染の多くは親御さんからです。親御さんがヘルペスを発症した際は、子供にうつさないように気をつけましょう。

「口腔カンジタ」の症状・原因・治療法

●口腔カンジダ症の症状

カンジダ症は、カンジタ菌によって引き起こされる感染症です。体のさまざまな部位に症状が現れ、そのなかで口の中に起こるものを口腔カンジタと呼んでいます。口腔カンジタにかかると、口腔内が白いカビで覆われます。初期段階では痛みは無いことが多く、進行するとピリピリした痛みが出たり、口の中が苦くなったり、味覚障害が現れたりもします。

●口腔カンジダ症の原因

カンジタ菌はもともと人の体内に存在する菌で、体が健康なときは悪さをすることはありません。しかし、体調不良やストレス・栄養不足などで免疫力が低下していると、口腔カンジタ症を発症することがあります。このほか、抗生剤を長期的に使用している方・ステロイドや抗がん剤を服用している方にも起こりやすいと言えます。

●口腔カンジタの治療方法

口腔カンジタの治療には、抗真菌剤を用いるのが一般的です。軽度であれば、抗真菌剤の服用により5日程度で治ります。

「舌痛症」の症状・原因・治療法

●原因がないのに口の中が痛む

口の中に炎症や腫れ・傷などはないのに口の中が痛い……そんな症状がある方は、舌痛症の疑いがあります。舌痛症とは、口の中に生じる原因不明の痛みを指します。ヒリヒリする」「ムズムズする」「チクチクする」など人によって感じ方に違いはありますが、いずれのケースでも異常な病変は見られないのが特徴です。

●舌痛症の原因

舌痛症の原因は明確には分かっていませんが、精神的なストレスが影響を及ぼしていると考えられています。また、更年期以降の女性に多いことから、ホルモンバランスとの関係も少なくないと見られています。

●舌痛症の治療法

まずは、口内炎や口腔カンジタのような他の口内疾患がないか診察します。また、いくつかの全身疾患には口の中の違和感や痛みを伴うものがあるので、それらの可能性を除外するための検査も行います。検査をしても何も異常がなかった場合には、舌痛症として治療を行います。漢方薬を使った治療が一般的ですが、必要があれば向精神薬の処方することも。心療内科や精神科への受診をおすすめすることもあります。

口の中のトラブル、病院に行く目安と理由

●【口内炎】 10日以上治らない・だんだん大きくなっている

カタル性やアフタ性の口内炎であれば、特に病院に行かなくても自然に治ります。ただし、症状が1週間~10日以上経っても治らない・だんだん大きくなっている・ひどくなっているという場合は、口腔がんの恐れも。念のため病院で診てもらうことをおすすめします。

またヘルペス性口内炎が疑われる場合は、高熱が出たり脱水症状に陥ったりする心配があります。早めに病院で治療を受けましょう。

●【口腔カンジタ】 異常に気づいたら早めに

口腔カンジタが疑われる場合は、早めに病院で診てもらいましょう。口の中に付着している白いカビはガーゼなどで拭うと取れますが、口の中は菌が繁殖しやすい状態です。そのため、一時的にきれいになったように見えても再発する可能性が高いと言えます。

●【舌痛症】 痛みで日常生活に支障が出ている

舌痛症の症状の程度は人によって異なります。少しヒリヒリする程度の方もいれば、痛みで眠れない・仕事に集中できないといったレベルの方もいます。日常生活に支障が出ているのであれば、一度病院で診察や検査を受けましょう。

まとめ

口内炎や口腔カンジタ・舌痛症など、口の中のトラブルは誰にでも起こりうることです。不安なことがあれば、最寄りの歯科医院や口腔歯科医院などに相談してみてください。また、口内トラブル全般の予防は、日頃から口の中を清潔に保つことが非常に重要です。この機会に、あらためて日頃の口腔ケアを見直しましょう。

北野病院 歯科口腔外科 副部長 上田 優貴子

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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