気持ちが悪い・吐き気がする。考えられる原因と疾患・対処法【内科医監修】
病気・症状と予防
2019年10月17日掲載
「胃がムカムカして気持ち悪い」 「吐き気がする」
よくある症状ではありますが、その原因はさまざまです。暴飲暴食による胃の疲れや胃酸過多といった一過性のこともあれば、食中毒やウイルス感染症・消化器官の疾患が原因のケースも。また、心筋梗塞や脳腫瘍などが背景にあることもあります。今回は、胃の不快症状や吐き気の原因や対処法や治療法について、内科医の泉岡利於先生に教えてもらいました。
泉岡利於
医療法人社団宏久会 泉岡医院 院長
関西医科大学卒業後、済生会野江病院循環器内科、関西医大附属病院心臓血管病センター、門真市阪本蒼生病院内科を経て現職に。
現在、大阪内科医会の副会長も務める。
【胃のむかつき・吐き気】一般的な原因と対処法
●暴飲暴食
お酒を飲みすぎたり脂っこいものを食べすぎたりすると、胃に負担がかかり、むかつきや吐き気を催します。ついつい暴飲暴食をしてしまいがちな飲み会シーズンは特に気をつけたいところです。
食べすぎ・飲みすぎで気持ちが悪いときの対処法
胃の調子が悪いときは、牛乳やヨーグルトなど乳製品をとって胃の粘膜を保護すると楽になります。お酒を飲む前に乳製品を胃に入れておくのも良いでしょう。また、お酒の飲みすぎで気持ちが悪いときは、タンパク質をとるとアルコールの分解作用が促され、吐き気やむかつきも早く良くなります。
●胃酸過多
胃酸の分泌が過剰になると胃酸が食道に逆流し、気持ち悪さや胸焼けの原因に。なお、胃酸過多によって胃粘膜が傷つくと、逆流性食道炎や胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍などにつながることもあります。
胃酸過多による気持ち悪さ・胸焼けの対処方法
胃酸の分泌を押さえる薬が有効です。また、脂っこい食事やアルコール・喫煙習慣など胃酸過多を招く習慣を改善することも大切です。
急性の吐き気で考えられる疾患
急に気持ちが悪くなったり吐いたりする場合、以下の原因が疑われます。
●食中毒やウイルス性胃腸炎
食中毒やウイルス性胃腸炎は、体内に入った細菌やウイルスによって強い吐き気や激しいおう吐を引き起こします。感染した細菌・ウイルスの種類によって症状に違いはありますが、発熱や下痢を伴うケースも少なくありません。
食中毒やウイルス性胃腸炎の対処法・治療法
食中毒やウイルス性胃腸炎を治すには、体内の菌を体外に排出する必要があります。 おう吐や下痢は、菌を追い出すために体が行う反応です。それらの症状が続いているときはつらいですが、菌が排出されている証拠。自宅で安静にして水分補給をしっかり行いましょう。水または電解質の入った飲みものがおすすめです。一度にたくさん飲むのではなく、少量ずつこまめに飲んでください。
ただし、水を飲もうとしてもすぐに吐いてしまう・尿が出なくなっているといった場合は、脱水症状を起こしている恐れがあります。その際は病院で点滴を受けてください。
食事は水が飲めるようになってから
なお、食事をとるのは水が飲めるようになってからにしましょう。小さなお子さんに多いのですが、水が飲めなくてもおなかは空くため、普通に食事をとりたがることがあります。そういった際に「食べられるのであれば」と普通の食事をさせてしまうと、胃腸に負担をかけ症状を悪化させかねません。まずは水分補給をしっかり行い、症状が落ち着いてきたらゼリーなどの消化しやすいものを食べさせてください。
▶食中毒やウイルス性胃腸炎の症状・対処法についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
・食中毒の症状・対処法は?O-157など種類と5つの予防法
・ノロウイルスの潜伏期間を知っていますか?医師に聞く症状・検査・消毒方法
●心筋梗塞など循環器系の疾患
突然吐き気が襲ってきた場合、心筋梗塞など循環器系の疾患が関連している恐れもあります。この特徴は、例えば「駅の改札を出た瞬間に気持ちが悪くなった」というように、いつ症状が出たかはっきり覚えているくらい突然やってくるということです。特に、糖尿病を患っている方が心筋梗塞になると、胸痛などの症状は出にくく急性的な強い吐き気が出やすいと考えられます。
慢性の吐き気で考えられる疾患
慢性的に吐き気がある場合、原因として以下の疾患が考えられます
●逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することによって食道の粘膜が炎症を起こし、慢性的な胃のむかつきや胃もたれ・胸のつかえなどの不快症状が生じる病気です。特に、朝起きたときや歯磨きをするときに気持ち悪さを感じやすい傾向があります。このほか、慢性的な喉の違和感や痛み・咳が出ることも。
逆流性食道炎を引き起こす要因は、加齢や飲酒・喫煙・欧米化した食事習慣などさまざま。高齢者だけではなく若い人にも増えています。逆流性食道炎の診断は、内視鏡検査で行います。気になる症状がある方は、一度消化器内科などで検査を受けてみてもよいでしょう。
▶逆流性食道炎の詳細はこちらの記事をご覧ください
・胸焼け・胃もたれは逆流性食道炎かも? 症状と原因・治療法
●胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃の粘膜が深くまで傷つき、胃の内側の壁にくぼみ状の病変ができた状態を指します。食事中や食事後の腹痛・胸焼け・吐き気・おう吐・食欲不振といった症状が出ます。進行すると、出血や下血を伴うことも。胃潰瘍の原因はさまざまで、暴飲暴食やストレスなどによる胃酸の過剰分泌や、ヘリコバクター・ピロリ菌による胃粘膜への攻撃などが考えられます。
●十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは、十二指腸の粘膜が深く傷つき内側の壁にくぼみができた状態を指します。空腹時や夜間の腹痛・吐き気・おう吐・食欲不振といった症状が出ます。胃潰瘍同様に、進行すると出血や下血を伴うこともあります。十二指腸潰瘍の原因は、ストレスや過労など胃潰瘍と同様です。
吐き気以外の症状が併発するケースも。
●【吐き気+おなかの張り】 考えられる原因・疾患
吐き気・気持ち悪さの原因は「胃から上の器官の異常では?」と考えがちですが、大腸に問題があるケースも。ひどい便秘や腸閉塞などの大腸の疾患が原因で吐き気を催すことがあります。
・深刻な便秘
便秘が続くと、おなかの張りに加えて吐き気や気持ち悪さを催すことがあります。この場合、便秘が解消すれば吐き気もなくなります。
▶便秘の解消方法はこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
・痔の治療に薬や手術は必要?原因・予防改善のポイント【肛門専門医監修】/予防法や治療法編
・腸閉塞(ちょうへいそく)
腸閉塞は、腸のぜん動運動が障害される疾患です。腸閉塞になると、消化物が腸内をスムーズに移動できず上部にたまり、便やガスが腸内に充満します。そのため、強い腹痛やおう吐・吐き気といった症状が出ます。
●【吐き気+頭痛】 考えられる原因・疾患
脳圧が上昇するような病態があると、頭痛とともに吐き気を催すことがあります。
・片頭痛
片頭痛が起きた際に、吐き気を感じる方もいます。
・脳腫瘍(のうしゅよう)
脳腫瘍とは、脳の細胞や神経・脳を包む膜などに腫瘍ができる病態を指します。脳腫瘍が大きくなるにつれて脳圧が上がるため、強い頭痛・吐き気・ふらつき・しびれ・めまい・歩行障害といった症状が現れます。
・もやもや病
もやもや病は、内頚(ないけい)動脈という太い脳血管の終末部が細くなり、細い糸がモヤモヤと絡み合ったような状態になる疾患です。先天性の疾患ですが、大人になってから発症する人も多く、女性の発症率が高いとされています。もやもや病の症状としては、手足のまひやしびれ・言語障害などが代表的ですが、吐き気を伴う強い頭痛が現れることもあります。
原因疾患が見つからない吐き気
ここまでご紹介したように、「気持ちが悪い」「吐き気がする」といった症状の原因は実にさまざま。病院で内視鏡検査やMRIを受けることで、背後にある疾患が判明することも少なくありません。しかし、強い吐き気があるのに検査をしてもどこにも異常が見つからない方もいます。こういったケースを「機能性ディスペプシア」といいます。
●機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアとは、症状の原因となる明らかな異常はないのに、慢性的に腹部の痛みや胃のもたれ・吐き気などの不快症状が現れる状態を指します。ストレスや不眠・喫煙習慣・飲酒・胃の機能低下・遺伝など、さまざまな要素が複雑に絡み合って起きると考えられています。
●機能性ディスペプシアの対処法・治療法
機能性ディスペプシアの治療では、消化管運動を改善させるための薬や胃酸の分泌を抑える薬や漢方薬を処方するのが一般的です。このほか、心因的な要因が大きいと見られるケースでは、漢方薬や抗不安薬・抗うつ剤などを処方することもあります。
まとめ
「気持ちが悪い」「吐き気がする」と一口に言っても、その原因は実にさまざまです。吐き気の裏にある重大な疾患を見逃さないよう、症状が1週間以上続くようであれば一度内科を受診して医師に相談してみましょう。このほか吐き気以外に腹部や頭などに強い痛みが出ていたり、震えやしびれ・まひ・冷や汗などの症状が見られたりする場合も、速やかに病院へ行ってください。
医療法人社団宏久会 泉岡医院 院長 泉岡利於
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。