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奥までやっても意味がない!? 正しい耳掃除の方法
健康とくらし
2015年10月29日掲載
耳掃除が毎日の習慣になっている人も多いのではないでしょうか。
耳掃除は耳垢を掃除してすっきりするのと同時に、耳の中にある快感を生じさせる「迷走神経」を刺激するため、「気持ちイイ」と感じます。だからといって、毎日耳掃除をしている人は要注意!耳掃除のやり過ぎはかえって危険なのです。
耳垢の役割や耳掃除の正しい方法を覚え、耳の健康を維持していきましょう。
耳垢の働きと種類
耳垢の正体は、皮膚の残骸。外耳道(耳の穴の中)の皮膚は鼓膜の中心部から外へ外へと移動します。それが耳の入り口付近で剥がれ落ち、耳垢腺(じこうせん)から出た分泌物やその他のチリ、ゴミが混じり合い、「耳垢」となるのです。
耳垢の働き
【その?@】ゴミなどの侵入防御
分泌物により適度な粘着性のある耳垢は、耳の穴に侵入したゴミやホコリを吸着する役割も持っています。そして外耳道皮膚の表面が外へ外へと流れて、それらを耳垢として運び出してくれるのです。また、耳垢の成分が持つ苦味や臭いが昆虫の侵入を未然に防ぐとも言われています。
【その?A】外耳道と鼓膜の保護・潤滑
外耳道表面も鼓膜の外側も比較的薄い皮膚組織。耳垢はそれらを物理的に保護し、分泌液によって湿潤に保っています。
【その?B】感染防御
耳垢には感染防御の役割もあると言われています。耳垢の成分は酸性で、中にはリゾチームやIgAなどが含まれ、抗菌作用を持っているのです。
耳垢の種類
耳垢は、その見た目から、2種類に分けられます。カサカサとした「乾性耳垢」と、ベトベトとしたアメ状の「湿性耳垢」です。日本人の約7~8割が乾性耳垢ですが、逆に欧米では湿性耳垢が多いと言われ、これら性質は遺伝によって決定されます。この乾湿の違いは、前述した耳垢腺からの分泌物の量の差や、耳垢腺自体の数によります。
間違った耳掃除に潜む危険
前述したように耳垢は、外耳道の外側1/3程度、つまり「耳穴の入り口から約1.5cmより手前」まででしかできません。ですから、それより奥を耳掃除しても“全く意味がない”のです。
さらに、耳には「自浄作用」があり、耳垢を自然と体外へ排出する働きがあります。私たちが身体をゴシゴシと洗い過ぎると、皮膚が赤くなり炎症を起こすのと同じく、必要以上に耳掃除をすることで外耳道の皮膚が剥がれ、「外耳道湿疹」を起こすこともあります。痒みや黄色い分泌液が出ると、気になってさらに耳掃除をしてしまうという悪循環に陥ることも。ひどいときは外耳道が荒れ過ぎて、細菌やカビに感染し、「外耳炎」を発症してしまう場合もあります。
また、耳の奥まで耳掃除をし過ぎると、せっかく外に出ようとしていた耳垢を奥へと押し込んでしまい、「耳が聞こえづらい」といった症状で病院を訪れる人も多いようです。こういった症状だけでなく、少しでも耳に異常を感じたら、できるだけ早めに耳鼻科の診察を受けることをおすすめします。
正しい耳掃除をしよう
耳のトラブルを引き起こさないためにも、正しい耳掃除の方法をマスターしましょう。
耳垢の種類によってもポイントが異なりますので注意して下さい。
耳掃除の注意点
耳の入り口から約3.5cm先には「鼓膜」があります。そこまで達しないように注意!あくまでも入口の1.5cmくらいのみ。およそ綿棒の頭一つ分と覚えておきましょう。
耳掃除の頻度
自浄作用がありますので「月1~2回」の掃除で充分です。
耳掃除の方法
「乾性耳垢」の場合
乾性耳垢の方は、耳掃除をしなくても良いくらいだとも言われています。といっても、やはり気になるという方は、耳かき、または綿棒で耳の穴の外側1.5cmほどの部分を耳の壁をなぜるようにやさしく外に向かって掃くようにして耳垢を掻き出して下さい。綿棒の大きさは、大き過ぎると耳垢を押し込んでしまうので、大人が赤ちゃん用のものを使うくらいでも良いでしょう。
「湿性耳垢」の場合
綿棒をそっと耳の穴へ1.5cmほど入れたら、螺旋を描くように外に向かって3~4回ふき取って下さい。
家庭でのケアは正しい方法で月に1~2回とし、数ヶ月に1度は耳鼻科での耳掃除をおすすめします。「耳掃除だけで受診するなんて…」と思われるかもしれませんが、耳垢の除去は立派な医療行為として認められています。耳の健康を保つためにも、定期的に診察を受けましょう。
「耳の健康」を保つために
耳掃除を正しくすることはもちろん、耳も大切に使わなければ年月と共に傷んでいきます。その主な原因が「騒音」です。大きな音はもちろん、小さな音でも聞き続けているとどんどん耳は疲れていき、ダメージが蓄積されていきます。たまには静かなところで耳を休ませる。それが無理なら耳栓を活用するなど、ダメージを取り除き耳を休養させる機会を持ちましょう。
- ヘッドホンや、大きな音のする場所で長時間にわたって大音量を聞かない
- 定期的な聴力検査を受ける
- 適度な運動、バランスの良い食生活を心掛ける
- 良質の睡眠を取る
“耳の健康”におすすめの栄養素
ビタミンB群
ビタミンB群、特にB12は内耳の代謝を高め、耳の老化防止にもつながると言われています。
不足すると怠さやめまいなどを引き起こすことも。
≪多く含む食品≫ イワシ、アサリ、サバ、牛乳、卵、牛ロースなど
関連ページ: 栄養素辞典「ビタミンB12」
おすすめ健康レシピ
イワシの変わりパン粉焼き
カルシウム
耳の複雑な骨の構造を維持するためには、カルシウムは不可欠です。
≪多く含む食品≫ 乳製品、鶏肉、ひじき、ごま、わかめ、ちりめんじゃこなど
関連ページ: 栄養素辞典「カルシウム」
おすすめ健康レシピ
アジとじゃこのカルシウム丼
監修
とおやま耳鼻咽頭科 院長 遠山祐司先生
昭和57年 関西医科大学卒業。平成6年 大阪市都島区にて「とおやま耳鼻咽喉科」を開設。平成17年 同区内の現在地へ新築移転開設。日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医。日本気管食道科学会認定 気管食道科専門医。
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。