耳の裏から嫌な臭いや膿が…臭いの原因・対策と予防のために知っておきたいケア
健康とくらし
2022年12月15日掲載
「耳の裏から嫌な臭いがする」 30代以降になってから、こんなお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。耳の裏の臭いの原因は、加齢臭やミドル脂臭に関連することが多いと言われています。そこで今回は、耳の裏の嫌な臭いや膿が出る原因・対策について、LECINQ clinic院長 長谷川佳子先生に教えていただきました。
長谷川佳子
LECINQ clinic院長
2012年 北里大学医学部卒業。2014年 横浜市立大学病院 形成外科入局 KO CLINICに勤務。藤沢湘南台病院、横浜市立大学附属 市民総合医療センター、横浜栄共済病院 小田原銀座クリニック勤務を経て、2020年ルサンククリニック診療部長就任。2021年 ルサンククリニック院長就任。所属学会は、日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本レーザー治療医学会、日本抗加齢学会、日本乳癌学会、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など多岐にわたる。
耳の裏が臭い……その原因は?
耳の裏から嫌な臭いがする原因は、耳の裏に溜まった皮脂が原因だと考えられます。耳の裏は実は皮脂を分泌する「皮脂腺」が多く、頭皮と同様に皮脂が溜まりやすいスポット。にもかかわらず、入浴時にしっかり洗えていない人が多いため、溜まった皮脂が酸化してイヤな臭いを発生させてしまうのです。また、マスクの長時間の着用、同じマスクの使いまわしなどによって汚れが蓄積してしまっている可能性もあります。
耳の裏の嫌なニオイは加齢臭またはミドル脂臭
加齢臭
40代以上の人の場合、耳の裏のニオイの原因が加齢臭と関連している場合があります。加齢臭の正体は「ノネナール」という物質で、皮脂に含まれる「パルミトレイン酸」と皮脂が酸化して生じる「過酸化脂質」が結びつき、皮脂の常在菌の作用によって酸化・分解されることで生成されます。
前述したように耳の裏は皮脂の分泌が多い部位であるため、ノネナールが発生して嫌なニオイを生じさせている可能性があるのです。
ミドル脂臭
近頃「加齢臭」と並んで話題になっているのが、「ミドル脂臭」というものです。ミドル脂臭は30代〜40代の男性に現れやすいニオイのこと。ミドル脂臭の原因は「ジアセチル」という成分で、皮膚上の主要細菌である「表皮ブドウ球菌」、「黄色ブドウ球菌」が汗中の「乳酸」を取り込んで代謝し、ピルビン酸、アセトインに変化する過程を経て、最終的につくり出されます。
「古い油のような臭い」と表現されることが多いですが、加齢臭同様に自分では気づきにくい点が厄介です。主に後頭部や頭頂部を中心に発生します。30代〜40代の人で「古い油のような臭い」が気になる場合は、ミドル脂臭である可能性があります。
また、この他の原因として、傷によって細菌などが入り、膿などが溜まったり炎症が起こったりして匂いを発している可能性もあります。炎症して膿が溜まっている場合は、痛みや腫れを感じます。患部を頻繁に触ったり入浴時などに強くこすったりすると、炎症が悪化する恐れがあります。なるべく触らず、症状が治まらないときは医療機関に相談しましょう。
耳の裏のニオイ、対策は?
しっかり洗うことが大事
耳の裏のニオイを防ぐには、まずはしっかりと洗浄して皮脂を洗い流すことが大切です。耳の裏はシャンプー時や体を洗う際に、しっかり洗えていない場合が多い部位です。洗い残しを防ぐためにおすすめなのは、顔を洗う流れで洗顔フォームを使って一緒に洗う方法。洗顔時に耳の後ろも洗うことを習慣づけていれば、夜だけでなく朝も洗うことができるので、睡眠時に出ていた皮脂もしっかり除去され、ニオイを軽減できるはずです。
ニオイが気になるときは「拭くケア」を
日中にニオイが気になるときは、制汗剤シートなどを使って耳の裏を拭き取るケアを取り入れましょう。夕方や夜など皮脂が分泌されてニオイが気になる時間帯でも、さっと拭けるシートを携帯しておくと安心です。
加齢臭やミドル脂臭いの予防・軽減対策も
加齢臭やミドル脂臭の予防改善として、生活習慣の見直しも大切なポイントです。脂質の多い食事は臭いの原因物質の生成を促すと言われているので、脂っこい食事や肉中心の食事を控えるようにしましょう。あわせて抗酸化作用のあるビタミン類やポリフェノールといった栄養素を含む食品を積極的に取り入れるのもおすすめです。
また、ストレスも臭いを強くさせる原因と考えられています。ストレスは体内で活性酸素を発生させ、皮脂の酸化を促進してしまうからです。自分なりのストレス解消方法を見つけて、ストレスをできるだけ溜めないようにしましょう。このほか、活性酸素を増加させる要因となるアルコールは控え、タバコもやめることをおすすめします。
ニオイだけじゃなく耳の裏から膿が出ている場合は?
耳の裏から「膿んでいるような嫌なニオイがする」「膿が出ている」というような場合は、加齢臭やミドル脂臭ではなく、耳の裏に粉瘤ができ、それが破裂したり炎症を起こしたりすることで強いニオイが発生している可能性があります。
このニオイは、内部の老廃物自体の臭いや、細菌が代謝して分泌する成分が原因で、何日も履き続けた靴下やタンパク質の腐敗臭などに例えられることがあります。マスクやメガネによって粉瘤がこすられると、悪化することがあります。
粉瘤を治すには、皮膚科での処置が必要です。治療には、軟膏(抗菌薬)を用います。ほとんどは軟膏を塗ることで治りますが、化膿している場合は切開して膿を出すこともあります。「耳の裏から膿が出ている」「腐敗臭のような嫌なニオイがする」という場合は、一度皮膚科に相談するようにしましょう。
まとめ
耳の裏から漂う嫌なニオイは、耳の裏に溜まった皮脂が酸化したもの。30代以降の人の場合は、加齢臭やミドル脂臭である可能性も高いと言えます。こういったニオイ対策には、今回ご紹介したように耳の裏を清潔に保つことが一番大切です。お風呂タイムや朝の洗面時に、耳の裏までしっかり洗うことを意識してくださいね。あわせて、加齢臭やミドル脂臭の予防軽減対策として、生活習慣や食生活の見直しも行いましょう。
LECINQ clinic院長 長谷川佳子
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