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失神や転倒の危険性も!「立ちくらみ」の防ぎ方
病気・症状と予防
2014年08月21日掲載
立ち上がるときにふらっとする、目の前が一瞬真っ白になる、「立ちくらみ」。多くの人が、お風呂に長く浸かって立ち上がったときなどに体験したことがあるのではないでしょうか。「立ちくらみ」は、よくあることと思われがちですが、ひどい場合には気を失うこともある危険な症状であり、転倒した際に怪我をする場合もあります。頻繁に起こるようなら、重大な病気が潜んでいる可能性もあるのです。
「立ちくらみ」について詳しく知り、病気や事故の予防につなげましょう。
立ちくらみのメカニズム
「起立性低血圧」や「脳貧血」とも呼ばれる立ちくらみ。座った姿勢、あるいは横になっていた状態から立ち上がったときなどに、重力の関係で、体の中で一番高い部分にあたる脳に十分な血液が行き届かなくなり、一時的に脳内の酸素が不足して陥る状態です。
この時、健常な人であれば、血の流れが急激に下へと降りてくることが各神経に伝えられ、立ち上がったときに心拍数を増やしたり、下半身の血管を収縮させて血液の流れを上に押し上げようとする…つまり、血圧を安定させようとする機能が働きます。
しかし、立ちくらみを起こしやすい人は、何らかの原因でこの伝達機能が正常に働かなくなってしまっていると考えられます。
一般的には、主に20代~30代の若い女性に多く見られる症状ですが、年齢とともに増加し、高齢者でも約2割の人に認められています。転倒事故の主な原因の一つとも言われており、高齢者は特に注意が必要です。
立ちくらみはなぜ起こる?主な原因
立ちくらみが起こる主な原因としては、次のようなものが考えられます。
- 自律神経失調症
自律神経とは、心臓、血圧や消化など、自分の意思とは関係なく自動的に身体の機能を一定にコントロールする神経で、「自律神経失調症」とは、その自律神経の機能が鈍り、働きが悪くなる病気です。
自律神経の重要な役割の一つは、脳の血流を守ること。前述の通り、私たちが横たわっている時に全身を平均的に流れている血液は、起き上がるときに重力の影響で下半身の方へと溜まろうとします。このとき自律神経のバランスが崩れていると、血圧が不安定になり脳が血液不足となって、立ちくらみを起こすのです。 - 低血圧
一般的に低血圧の人は、手や脚などの末端部分の血管の収縮力が弱く、血液の循環が悪くなりがちです。つまりは、脳内の血液量が減少しやすいということにもつながります。 - 貧血
「脳貧血」ともいわれる立ちくらみは、血液自体に問題があるわけではなく、一般の貧血とは異なります。 ただ、貧血の場合、脳への血液循環は正常なのですが、赤血球やヘモグロビンの量が少ないために血液に含まれる酸素の量が減少し、脳が酸欠状態になり、立ちくらみが起こるというケースがあります。 - 薬剤の副作用
降圧剤、向精神薬、心臓病の薬などを服用している場合にも、その副作用として、めまいや立ちくらみが起こることがあります。
また、他にも動脈硬化による血流不足や、糖尿病による神経障害が原因で、立ちくらみが起こることもあります。
立ちくらみは、脳の病気のサインかも
脳内が一時的に血液不足・酸素不足になることで起こる、立ちくらみ。
ごく稀に、脳腫瘍や脳梗塞、脳血栓など、脳の病気が起因して脳が酸素不足に陥っている場合があります。
このような脳の病気は、立ちくらみのほか、強い頭痛や吐き気、手足のしびれなどの症状が共に現れることが多いと言われています。少しでも気になる場合は、医師の診断を受けましょう。
立ちくらみが起こったときの正しい対処法
立ちくらみを感じたら、転倒事故を起こさないためにも、慌てるのは禁物。ゆっくりと落ち着いて、まずは低めの姿勢を取りましょう。
身体を締め付ける服装でいた場合などは、ベルトやボタンなどを緩めて、リラックスしやすい状態にして症状が治まるのを待ちます。
治まった後も絶対に急には動かず、何かにつかまりながら、ゆっくりと起き上がるようにしましょう。
立ちくらみの防ぎ方
ふいに立ちくらみが起きて慌てたり、それがきっかけで危険な転倒事故を起こしたりすることのないよう、普段の生活の中で予防・改善に努めましょう。
規則正しい生活を送る
不規則な生活は自律神経が乱れる原因となり、立ちくらみを引き起こします。
1日3回の食事、就寝・起床は毎日同じ時間に行い、生活リズムを守りましょう。
急な動きはしない
急に体勢を変えるような動きは控えます。
立ち上がるときも、なるべくゆっくりと落ち着いた動作を心がけましょう。
朝の起床はゆっくりと
朝、起き上がるときは、まずは足だけをベッドの外に降ろして1分程度待ってから起き上がるようにしましょう。
血圧を上げる
血圧を上げるためにナトリウム(塩分)を摂取します。
ただし、高血圧の方は病気の悪化に繋がるため、厳禁です。
こまめな水分補給
水分が不足すると、脱水で血液量が減少します。水分補給はこまめにしっかりと行いましょう。
下半身から血液が戻りやすい体を作る
身体をほぐして、血液の流れを良くするために、そして、血液を上半身へと戻す筋力をつけるために、定期的に運動することを心がけましょう。
ただし、立ちくらみがひどい場合は、様子を見ながら少しずつの軽い運動で体を慣らすようにしましょう。
また、きつめのタイツを履いて、下肢の血管や筋肉を適度に締め付けると、上半身に血液が戻りやすくなり、立ちくらみ予防に効果的です。
入浴時は特に注意
湯船に浸かった後は、立ち上がる前に軽く体を動かして全身に血液がまわりやすい状態を作りましょう。
立ち上がるときは、へりなどを持ってゆっくりと。
熱いお湯に浸かると血管が拡張し血圧が下がりやすい状態になるため、比較的ぬるめのお湯にゆっくり浸かるようにしましょう。また、肩まで浸かると心臓が圧迫されて血圧低下につながるので、みぞおちまで浸かる半身浴がおすすめです。
監修:ながの内科クリニック 長野文昭先生
昭和58年大阪医科大学卒業。大阪医科大学第2内科、第一東和会病院を経て、平成12年10月にながの内科クリニックを開院。
日本内科学会認定医・日本臨床内科医会専門医・消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・日本医師会認定産業医
ながの内科クリニック
〒540-0036 大阪市中央区船越町2丁目2-16-102
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