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下腹部の痛みって膀胱炎?症状と発症の原因・治し方を解説

「おしっこをするとき下腹部に痛みがある……」もしかするとそれは、膀胱炎かもしれません。膀胱炎は女性にとても多い病気で、20歳以上では30%前後の方に発症経験があるといわれています。この他にも、トイレが近くなったり、残尿感があったりするのも膀胱炎の特徴。膀胱炎は一度かかると繰り返すことも多い病気なので、しっかりと治療を行う必要があります。そこで今回は、膀胱炎の症状や原因・治療法・予防法などについて、久野銀座クリニック院長 医学博士の岡村信良先生に教えていただきました。

岡村信良

【監修】小田原博信会 理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士

平成18年北里大学大学院卒、平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに平成20年に入職、その後院長に就任。

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膀胱炎とは?女性に多い理由と症状

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膀胱炎の概要や女性に多いといわれる理由、代表的な症状についてご紹介します。

膀胱炎とは?

膀胱炎は、膀胱に炎症が起きる疾患です。膀胱炎にはいくつか種類があり、最も多いのは「単純性膀胱炎」です。機能的・形態的に尿路に異常のない人で、尿道から入った細菌が膀胱に入り、膀胱内で増殖することで発症します。このほかには、ウイルスや排尿障害・前立腺肥大・尿路結石・腫瘍などに起因する「複雑性膀胱炎」があります。今回の記事では、単純性膀胱炎についてご紹介します。

膀胱炎は女性に多い

膀胱炎は女性にとても多い病気です。20歳以上では30%前後の方が膀胱炎を発症したことがあるといわれています。この理由は, 女性の尿道は3〜4cmと男性に比べて短く、細菌が容易に膀胱内に侵入してしまうから。また尿道は、膣などの多くの細菌が繁殖しやすい場所の近くにあり、細菌が付着しやすいことも理由のひとつとされています。

膀胱炎の症状は?

膀胱炎になると、以下のような症状があらわれます。

  • 以前よりも明らかにトイレに行く回数が増える
  • 排尿時、特に終わりのタイミングで下腹部にツーンとした痛みがある
  • トイレに行っても思ったより尿が出ず、残尿感がある
  • 血尿が出る

膀胱炎になるとどんなときに痛くなる?

膀胱炎の痛みは、排尿の後半または終了後に起こる傾向があります。これは、排尿により膀胱が急激に縮まり刺激されるからです。反対に、排尿時以外に痛みが起こるとはほとんどありません。

膀胱炎はどんなときに発症する?

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膀胱炎になりやすいタイミングや注意すべき季節などについてご紹介します。

体の抵抗力が低下しているときは要注意

膀胱炎は、膀胱内に細菌が侵入して増殖することで発症しますとはいえ、細菌が入ったからといって、必ず膀胱炎を発症するわけではありません。体には細菌に対する抵抗力が備わっているので、健康であれば増殖は抑えられます。しかし、以下のようなケースで、体の抵抗力が低下していると、細菌の増殖を抑えられないことがあります。

  • 病み上がりや睡眠不足で体が弱っているとき
  • 疲労やストレスが蓄積しているとき
  • 夏場のエアコン、冬場の低温で体が冷えているとき

月経前後・性行為後もリスクが上がる

月経前後や性行為後は膣付近に細菌が繁殖しやすいので、膀胱炎のリスクが上がるとされています。月経前後や性行為後は、尿道付近を清潔に保ち、体をなるべく冷やさないようにしましょう。

水分不足や尿を我慢するのも注意

水分不足で尿の回数が少ないと、その分細菌が膀胱内にとどまりやすくなります。そのため、水分摂取が少ない方は膀胱炎にかかりやすい傾向があります。また、尿を我慢してしまう習慣がある場合も、細菌が膀胱内で繁殖しやすく、膀胱炎になりやすくなります。

夏と冬は特に膀胱炎にかかりやすい季節

夏は発汗による尿量の減少やエアコンによる体の冷え、冬は低温による体の冷えによって、膀胱炎になりやすい季節です。これらの季節は、水分をしっかり摂取することや体が冷やさないようにすることを心がけましょう。

膀胱炎は繰り返しやすい!かかってしまったときの治療方法は?

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膀胱炎は繰り返しやすい疾患です。治ったと思っても、疲れている時期や忙しくて体力が落ちている時期になると再発してしまう、という人は大勢います。繰り返さないためには、膀胱炎にかかった際にしっかり治療すること、そして膀胱炎にならないような対策も重要です。

膀胱炎の治療方法は?

医療機関で膀胱炎と診断された場合、抗菌薬を使った服薬治療を行うのが一般的です。症状が軽度であれば市販薬で対応することもできますが、本当に膀胱炎なのかわからないという人もいるかと思います。また、膀胱炎が悪化すると、細菌が腎臓に流れて腎盂腎炎などの疾患を招くリスクもあります。「この症状もしかして膀胱炎?」と感じた方は、まずは医療機関に相談することをおすすめします。

下腹部の痛み=膀胱炎ではないことも

下腹部に痛みが出る疾患は、膀胱炎以外にもさまざまな種類があります。そのため、「膀胱炎かと思っていたけど、検査をしたら違う疾患だった……」なんてことも。下腹部の痛みは、子宮頸がんといった重大疾患の可能性もあるので、気になる症状がある方は個人で判断せず、やはり医療機関を受診してみてください。

関連記事:生理じゃないのに子宮が痛い!生理痛がひどい…原因は?【婦人科医監修】

膀胱炎の予防方法

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膀胱炎を予防するには、膀胱内に細菌を侵入させないこと、そして膀胱内で細菌を増殖させないことが重要になります。膀胱炎予防のためには、以下のポイントに気をつけてみてください。

体の抵抗力を落とさないように気をつけて

膀胱炎は、体の抵抗力が落ちているときに発症しやすくなります。ストレスを溜めない・睡眠をしっかりとる・栄養バランスの取れた食事をするなど、抵抗力を落とさない生活習慣を心がけましょう。

水分をしっかり摂る。トイレを我慢しない

膀胱内の細菌は、尿と共に体外に排出されます。水分を十分に摂って、尿をきちんと出すようにしましょう。また、トイレを我慢していると、それだけ膀胱内に尿が溜まる時間が長くなり、細菌が繁殖しやすくなります。できるかぎりトイレを我慢しないように心がけましょう。

大便を拭くときは、前から後ろを意識する

大便には大腸菌をはじめとするたくさんの菌がいます。大便をすると、肛門やその付近に細菌が付着するので、その菌が尿道に入らないようにしなければいけません。大便を拭く際は、後ろから前にではなく、「前から後ろに」を習慣化しましょう。

生理ナプキンはこまめに取り替え

生理中は陰部に湿気がたまりやすく、細菌が繁殖しやすい状態です。細菌が増殖したり、細菌が尿道に入ったりするのを防ぐために、ナプキンはこまめに取り替えましょう。

まとめ

20歳以上の30%程度の女性がかかったことがあるという膀胱炎。痛みが軽度でも、放っておくと何度も繰り返したり、他の病気を誘発したりする恐れがあります。気になる症状がある人、膀胱炎リスクの高い生活習慣・行為に思い当たる節がある人は、ぜひ一度医療機関で検査を受けてみてください。

小田原博信会理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士 岡村信良

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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