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生理じゃないのに子宮が痛い!生理痛がひどい…原因は?【婦人科医監修】

「生理じゃないのに下腹部や子宮が痛い」
「生理痛がひどい」

このような症状にはさまざまな原因が考えられます。排卵痛のように生理周期によるものから、子宮内膜症や骨盤腹膜炎・子宮頸(けい)がんなどの病気の可能性も。今回は、下腹部や子宮の痛みの原因やそれぞれの対処法などについて、婦人科医の寺田裕之先生に教えていただきました。

寺田裕之

北堀江 奏でレディースクリニック 院長/医学博士

大阪市立大学医学部卒業後、大阪市立大学医学部附属病院や市立柏原病院、小阪産病院などに勤務。2019年1月に北堀江奏でレディースクリニックを開院。「すてきな人生を『奏でる』お手伝いがしたい」をモットーに、女性が前向きに治療を受けられる環境づくりに尽力している。

子宮が痛い原因①クラミジア菌や淋(りん)菌などによる骨盤腹膜炎

●骨盤腹膜炎とは

骨盤腹膜炎は、骨盤を覆う薄い膜(腹膜)に炎症が起きる感染症です。その原因のほとんどは、膣から侵入したクラミジア菌や淋(りん)菌などです。性交渉によって感染することが多いとされています。

●骨盤腹膜炎で見られる症状

骨盤腹膜炎にかかると、以下のような症状が現れます。

  • いつから痛み出したのかは明確にはわからないけれど、下腹部の痛みが続く
  • おりものの量が増える
  • 生理ではないのに不正出血が見られる
  • 性交時に痛みがある
  • 歩いたり動いたりすると痛みが強くなる
  • 症状が進行すると高熱が出る

●骨盤腹膜炎かもしれないと思ったら

クラミジア菌や淋菌などへの感染による骨盤腹膜炎は、抗生剤の投与で治療できます。軽度の場合は自然治癒するケースもありますが、痛みが持続するなど気になる症状がある方は婦人科を受診しましょう。

子宮が痛い原因②排卵痛

●排卵痛とは

生理周期が28日の女性の場合、生理開始日から数えて約14日後に排卵日を迎えます。排卵痛は、この排卵期間に起きる下腹部痛です。排卵時には、卵子が卵胞の壁を破って外に排出されます。このとき、卵胞液と血液が流れ出して腹膜を刺激し、痛みが出ることがあるのです。人によっては出血が見られることもあります。なお、排卵痛は前述の骨盤腹膜炎など骨盤内にトラブルがある場合に強くなる傾向があります。

●排卵痛の特徴

  • 排卵期間にあたる2~3日間、下腹部が痛む
  • 排卵期間が終わると痛みは自然になくなる
  • 痛みがあるのと同時期に出血することがある

●排卵痛がひどい場合の対処法

排卵痛と思われる周期の時期に痛みが出現する場合、鎮痛剤内服などで対処可能です。この痛みは比較的短期間なので、辛くなってからではなく早期に鎮痛剤を積極的に内服することをおすすめします。

排卵痛がひどくて悩んでいる方は、他の疾患が併存する可能性もありますので一度婦人科を受診することをおすすめします。低用量ピルなどを内服していただくことで、排卵を起こさなくすることも可能です。

子宮が痛い原因③出血性黄体嚢胞(しゅっけつせいおうたいのうほう)

●出血性黄体嚢胞とは

出血性黄体嚢胞(しゅっけつせいおうたいのうほう)は、排卵後に卵巣が腫れて出血する症状です。排卵日から生理開始までに起こります。

●出血性黄体嚢胞で見られる症状

  • 排卵日~生理までの時期に、下腹部に突然強い痛みが生じる
  • 痛みは徐々にひいていく
  • 性交時に痛みが出る

●出血性黄体嚢胞への対処法

痛みで目が覚めるほどの強い痛みが特徴ですが、自然治癒するため特に治療は必要ありません。とはいえ、痛みの原因が本当に出血性黄体嚢胞かどうかの判断は一般の方には難しいと思います。上記のような症状に悩んでいる方は、他の病気の可能性を排除するためにも、一度医師の診察を受けることをおすすめします。

子宮が痛い原因④子宮内膜症

●子宮内膜症とは

子宮内膜症は、本来は子宮の内側だけにあるはずの子宮内膜が子宮の内側以外の場所にできてしまう病気です。子宮の内側以外の場所とは、例えば卵巣や腹膜など。こういった場所にできた内膜が女性ホルモンの影響を受け、生理周期とともに増殖・出血を繰り返すことで痛みが生じます。

●子宮内膜症で見られる症状

  • 生理のとき、痛み止めが効かないくらい下腹部が痛む
  • 生理じゃないのに子宮が痛くなる
  • 生理痛が昔よりもひどくなってきている
  • 排便痛がある
  • 性交痛がある
  • 経血量が多く、レバー状の塊が出ることがある

●「子宮内膜症かもしれない」と思ったら

子宮内膜症の有無は、 超音波検査やMRI検査で診断できることもあります。画像診断で分かりにくい場合は、内診や病状・経過などから総合的に判断します。

子宮内膜症と判明した場合は、低用量ピルで痛みを抑える・黄体ホルモン療法で子宮内膜の増殖を抑えるなどといった治療を行います。

薬物療法で症状のコントロールが難しい場合、手術治療を勧めることがあります。子宮内膜症は完治が難しく、長く付き合っていかなければならない病気です。また病状が徐々に悪化することも多いので、放置せずに一度婦人科を受診して相談してみましょう。

子宮が痛い原因⑤子宮頸がん

●子宮頸がんとは

子宮頸がんは、子宮頸部の入り口・外子宮口周辺に発生する「がん」です。この原因は、ヒトパピローマウイルスへの感染。ヒトパピローマウイルス自体はごくありふれたウイルスで、ほとんどの人は自身の免疫力で自然排除できます。しかし、一部の人では感染が長期間持続して炎症を起こし、がん化してしまうのです。

子宮頸がんは女性に多いガンのひとつです。日本産科婦人科学会の調べでは、毎年約1万人の女性がかかっています。また、一昔前までは発症のピークは40代から50代でしたが、近年では20代から30代での発症が増加しており、30代後半での発症が最も多くなっています。

●子宮頸がんで見られる症状

子宮頸がんの初期段階(がん化する前の段階)では、自覚できる症状はほとんど出ません。症状が進行すると、以下のような異変が現れます。

  • 不正出血
  • おりものの増加・膿のようなおりものが出る
  • 生理じゃないのに下腹部痛がある
  • 血 便
  • 排尿障害
  • 下肢痛
  • 背部痛
  • 腰痛

こういった症状が出ている方は、すみやかに病院で診察を受けることをおすすめします。

●子宮頸がんの早期発見のためにできること

子宮頸がんは初期段階ではほとんどの自覚症状がありませんが、この段階で治療することが重要です。早期発見のためには、2年に1回は定期検診を。ほとんどの市町村では自治体が検診費用の助成をしており、一部の自己負担金で検診を受けられます。

子宮が痛い…その他の原因

●腸にガスが溜まっている

下腹部の痛みの原因が、腸に溜まったガスであるケースも。腸にガスが溜まると下腹部全体が張ったり強い痛みが出たりすることがあり、しばしば子宮の痛みと混同しやすくなります。

この症状は、特に生理前に起きやすいと言えます。生理前は黄体ホルモンが盛んに分泌されるので、その影響で内蔵の筋肉は緩みがちに。腸管も例外ではなく、普段よりも動きが鈍くなっています。そのため、腸内に老廃物が溜まって悪玉菌が繁殖し、ガスが溜まりやすくなってしまうのです。生理前に便秘気味になるという女性は多いと思いますが、それも腸管の動きが鈍くなるせいだと考えられます。

子宮の痛み・月経異常から、病気を見つけるためには

●自身の生理周期を知ることが大事!基礎体温をつけよう

子宮の痛みは、生理周期と関連していることが多くあります。そのため、生理周期を自分自身で把握しておくことはとても大切です。生理周期を知る手段として最もおすすめなのは、基礎体温の測定です。基礎体温とは、起床時に安静な状態で測った体温を指します。

【基礎体温からわかること】
  • 月経周期
  • 排卵の有無
  • ホルモンバランスの状態
  • 体調の変化
【基礎体温の測り方】

体温を精密に測れる「婦人体温計」を使って、毎朝目を覚ましたすぐ後、起き上がらずに布団の中で体温を測ります。ここで重要なのは、婦人体温計を用いること。普通の体温計は体温を予測して測るため、正確な基礎体温を測定できません。

●体調不良・月経異常を見逃さないで

「下腹部や子宮周辺が痛い」「月経の周期や量・痛みがいつもと違う」などと感じたら、その特徴を覚えておきましょう。

【下腹部や子宮の痛みがあるとき、チェックすべきポイント】
  • いつから痛みが出たのか(いつから痛いかわからない/朝起きたときから痛い など)
  • どんなときに痛むのか(動くと痛い/性交時に痛い/常に痛い など)
  • どんな痛みなのか(だんだん痛くなってきた/突然痛みが出た など)
【月経の様子がおかしいなと思ったらチェックすべきポイント】
  • 月経の周期はどのくらいか
  • 出血の期間はどのくらいか
  • 生理痛の程度はどのくらいか
  • 月経の量はどのくらいか

病院では、まずは問診で痛みの特徴や月経の状態を聞きます。問診で分かることもたくさんあるので、ご自身の体としっかり向き合って状態を正しく把握することが大切です。

●気になる症状があれば婦人科を受診して。病院選びのポイント

女性特有の体調不良がある方は、一度婦人科や産婦人科・レディースクリニックなどに相談を。病院選びのポイントは、お産だけでなく月経などの体調不良に詳しい病院を選ぶこと。ウェブサイトなどで症例を見て判断しましょう。また、診察を受けたもののお悩みが解決できなかったり納得がいかなったりする場合は、セカンドオピニオンとして別の病院に相談するのも良い選択です。

まとめ

原因の分からない子宮や下腹部の痛みに不安を感じる女性は多いかと思います。今回ご紹介したように、子宮の痛みにはさまざまな原因があり、婦人系の病気が関連しているケースも少なくありません。早めの対処によって体調不良が改善し、その後のクオリティ・オブ・ライフが向上したり、重大な病気を防げたりするケースも多々あります。気になる症状がある方は、放置せずに一度病院で相談を。また、現在これといって不調がない方も、定期的に婦人科検診を受けるようにしましょう。

北堀江 奏でレディースクリニック

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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