【医師監修】寒暖差による鼻炎・秋の花粉症・ダニアレルギー…秋に増加する鼻炎症状の原因と対策
病気・症状と予防
2020年09月17日掲載
秋になると、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状に悩まされる方が多くなります。その原因は、寒暖差や秋の植物による花粉症・ダニアレルギーなどにあります。
そこで今回は、秋に増加する鼻炎症状の特徴や原因・対策について、池田耳鼻いんこう科院院長の池田浩己先生に教えていただきました。
池田 浩己
【監修】池田耳鼻いんこう科院 院長
1990年関西医科大学卒業後10年間大阪・京都の大学関連病院勤務と大学院を経て、2001年から日本赤十字社和歌山医療センター耳鼻咽喉科副部長。25年間の在職中、鼻科学アレルギー学を主軸に耳鼻咽喉科の臨床・研究に携わる。2015年池田耳鼻いんこう科院院長(4代目)として現在に至る。所属学会は、日本耳鼻咽喉科学会(専門医・研修指導医)・日本アレルギー学会(指導医・代議員)・日本鼻科学会(暫定手術指導医・代議員)・耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会・日本花粉学会・日本産業衛生学会など。
支部長 東田 有智(近畿大学病院 病院長)
【協力】公益財団法人 日本アレルギー協会 関西支部
1967年に発足。50年以上の歴史を有す、公益目的事業を展開する団体。国民の約二人にひとりは何らかのアレルギー疾患を有しているといわれている。学術団体の日本アレルギー学会と共にアレルギーに悩む人達やその家族に対して、アレルギー疾患の啓発活動として「講演会・市民公開講座・啓発資材展示・相談会」など、アレルギー関係の情報を提供している。医療従事者向けの「啓発活動・調査研究等への援助」なども行っている。
秋に出る鼻炎症状の原因 1.寒暖差
●寒暖差によって起きる鼻炎とは?
寒くなってくると、温度変化によってくしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎症状が出やすくなります。テレビなどではこういった症状を「寒暖差アレルギー」という名称で紹介していますが、実際にはアレルギー反応ではありません。これらの症状は、寒暖差によって自律神経のバランスが崩れることで生じます。医学用語では、血管運動性鼻炎と言います。
なお、寒暖差による鼻炎は秋だけに起きるわけではありません。夏場ならクーラーの効いた室内に入ったとき、冬場なら暖房の効いた室内に入ったときなど、季節に関係なく発生します。
●寒暖差による鼻炎症状を抑えるためには?
ポイントは寒暖差をできるだけ少なくすることです。まずは以下のセルフケアをしてみましょう。
- マスクをつける
口や鼻から冷たい空気が入らないようにマスクをつけましょう。 - 自律神経のバランスを整える
自律神経の乱れを防ぐために、規則正しい生活・栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。ストレスを溜めないようにすることも大切です。 - 衣類で温度差の調整をする
寒暖差を減らすために、衣類で温度差を調整しましょう。暑いときは脱ぐ、寒いときは着るという動作を手早く行えるように、脱ぎやすい上着を選ぶのがおすすめです。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりの症状がひどい場合は、耳鼻科などの医療機関を受診するのも選択肢のひとつです。医療機関では、症状に応じて投薬を検討してもらいましょう。
秋に出る鼻炎症状の原因 2.花粉症
花粉症というと春のスギ花粉を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、秋にも以下のような植物による花粉症があります。またこれらの花粉症と関連して、特定の食物摂食時に口やのどの粘膜に起こる「口腔アレルギー症候群」という病態も知られています。これは、野菜・果物と花粉との交差抗原性という性質によっておこる症状で「花粉-食物アレルギー症候群」とも呼ばれます。
●秋の花粉症を引き起こす植物
・ブタクサ
秋の花粉症として有名なのはブタクサです。キク科の植物で、畑地や道ばた・河川敷・空き地などに自生しています。なお、ブタクサのアレルギーを持っている人は、ウリ科やバショウ科の植物にもアレルギー反応を起こすことがあります。ブタクサ花粉症の症状が強く出る方は、メロンやスイカ・きゅうり・バナナなどを食べる際は注意しましょう。
・ヨモギ
ブタクサと同じキク科のヨモギも、花粉症を引き起こす植物として知られています。ヨモギは繁殖力が強い植物で、雑草の生い茂る河川敷や道ばた・空き地などに自生します。なお、ヨモギのアレルギーを持っている人は、セリ科やウルシ科の植物にもアレルギー反応を起こすことがあります。ヨモギ花粉症の症状が強く出る方は、マンゴーやセロリ・ニンジンなどを食べる際は注意しましょう。
・カナムグラ
アサ科の植物、カナムグラも花粉症を引き起こします。生息場所は畑のまわりや道ばた・空き地・河川敷など。ただし、カナムグラは一般的なアレルギー検査の項目にはないので、カナムグラアレルギーかどうかを確定診断するには詳しい検査が必要になります。
●どんな症状が出る?
ブタクサ・ヨモギ・カナムグラ、いずれの場合も症状として出やすいのは、くしゃみ・鼻水・鼻づまりです。
●秋の花粉症の症状を抑えるためには
花粉症の症状を抑えるためのポイントは、原因物質を体内に侵入させないことです。セルフケアとして以下の対策をしてみてください。
・雑草が生い茂っている場所に近づかない
ブタクサ・ヨモギ・カナムグラの花粉は、スギ花粉よりも飛散距離が短めです。生息地に近づかなければ、発症の可能性は低いので、雑草が生い茂っている道ばたや空き地・河川敷などには極力近づかないようにしましょう。
・外出時はマスクをつける
鼻や口をマスクで覆うことで、花粉の侵入を防ぐことができます。アレルギーが気になる方は、外出時にマスクをしましょう。
・外から帰ったら衣服を払う
帰宅時に玄関で衣服を払い、衣服に付着した花粉を払い落としましょう。家の中に花粉を持ち込まないようにすることが大切です。
・鼻うがいをする
専用の器具を使って鼻うがいをするのも効果的です。粘膜に付着した花粉を洗い流すことで、症状を緩和させることができます。
・空気清浄機を利用する
空気清浄機で空気中に浮遊する花粉を除去しましょう。空気清浄機は、花粉の他、ダニやハウスダスト・ウイルスなどの除去にも役立ちます。
セルフケアを実施しても症状が改善しない場合は、医療機関でのメディカルケアを検討してみてください。
秋に出る鼻炎症状の原因 3.ダニアレルギー
秋に鼻炎症状が出る場合でも、ダニアレルギーが原因のケースもあります。
●秋にダニアレルギーが発症しやすいのはなぜ?
ダニアレルギーは通年性の症状ですが、秋に症状が悪化すると言われています。その理由は「秋になると、夏に繁殖したダニの死骸が増える」「衣替えでタンスから出した衣類・寝具にダニの死骸が付着している」の2つです。
●ダニアレルギーではどんな症状が出る?
ダニアレルギーになると、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が出ます。
●ダニアレルギーの症状を抑えるためには
ダニアレルギーの症状を抑えるには、以下のようなセルフケアを試してみてください。
・防ダニ加工の寝具カバーを利用する
ダニが最も生息しやすいのは寝具です。枕カバーや布団カバー・シーツ・敷パッドなどは、防ダニ加工が施されたものを利用しましょう。また、ぬいぐるみがダニの温床となっていることもあるため、洗濯する、または寝室(枕元)に置かないなどの対策をおすすめします。
・空気清浄機を利用する
空気清浄機で、空気中に浮遊する細かなダニの死骸やフンを除去しましょう。空気清浄機は、ダニはもちろん、花粉やハウスダスト・ウイルスなどの除去にも役立ちます。
・寝具などは洗ったら掃除機をかける
寝具の洗濯も大切ですが、洗っただけではダニの死骸はなかなか除去しきれません。乾かした後に掃除機をかけましょう。
・部屋の掃除をこまめにする
フローリングやカーペットにダニの死骸が溜まっていることがあるため、こまめに掃除機をかけましょう。なお、ダニの死骸をしっかり除去するには、丁寧に掃除機をかける必要があります。目安は一畳ほどのスペースを掃除するのに約1分。じっくり時間をかけて掃除しましょう。
・鼻うがいをする
花粉症同様、専用の器具を使って鼻うがいをするのも効果的です。鼻うがいによって、粘膜に付着したアレルゲン物質を洗い流すことができます。
症状がつらい方は、一度医療機関でダニアレルギーかどうかを調べる検査を受けましょう。その上で抗アレルギー薬の処方など、適切な処置を受けることをおすすめします。また、ダニアレルギーの確定診断を受けている方は、アレルギー症状を根本的に治療する舌下免疫療法を受けることも可能です。
▶︎舌下免疫療法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
始めるなら今!スギ花粉症を根本から治療する「舌下免疫療法」とは
まとめ
秋になると、寒暖差・花粉・ダニが原因で鼻炎症状に悩む方が多くなります。心当たりがある方はぜひ今回ご紹介した対策(セルフケア)を試してみてください。それでも症状が緩和しないという方は、病院でのメディカルケアを検討しましょう。
【監修】耳鼻いんこう科院 院長 池田 浩己
【協力】公益財団法人 日本アレルギー協会 関西支部
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