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肩こりを治すならまず整形外科へ!柔道整復師に聞く、原因・湿布の正しい貼り方など

肩こりは多くの方が慢性的に抱えている悩みですが、しっかりと腰をすえて治療にあたっている方は少数かもしれません。そこで今回は柔道整復師の藤原克行さんに、肩こりの原因・完治までのステップ、そして病院・接骨院・整体院のどこで治療をすべきなのかなど、肩こり治療のあれこれを教えていただきました。

藤原 克行

ぷらす整骨院グループ (柔道整復師・鍼灸師)

株式会社SYNERGYJAPAN ぷらす整骨院グループの柔道整復師・鍼灸師。患者様の人生にぷらすを与えることを院理念に掲げ、体の不調に対する根本へのアプローチをすべく、患者様の状態に合わせた施術を提供している。

肩こりは症状も原因も一言で説明できない!?

● 肩こりは病名ではない

「肩こり」は医学的な病名ではなく、首の後ろから肩・背中にかけた不調の総称です対象範囲が広く症状も多様であるが故に、原因は多岐にわたります。つまり、一言で説明することができないものなのです。

● メジャーな原因は筋肉負荷と血行不良

原因は多岐にわたると述べましたが、「筋肉への過剰な負荷」と「血行不良」は、メジャーな原因だと言えます。そのメカニズムは以下です。

首から背中にかけた筋肉に過剰な負荷がかかる

乳酸などの疲労物質がたまり、筋肉が硬くなる

硬くなった筋肉が血管を圧迫して、血行が悪化する

血行が悪化したことが原因で、さらに筋肉が硬直する

痛みなどの不調が生じる

筋肉に負荷がかかったり血行が悪くなったりする要因を、次項で紹介します。

 

筋肉負荷と血行不良の要因

1. 姿勢の崩れ

デスクワークやパソコン・スマホの使用などが原因で姿勢が悪くなると、骨格がゆがむことがあります。骨がゆがむと本来発生しない負荷が筋肉にのしかかり、肩こりの原因になることがあります。例えば下のイラストのようなストレートネックがあります。

※頚椎(けいつい):首にある7つの骨の総称。頚椎ヘルニアの項目で詳しく解説します。

ストレートネックとは、本来はゆるやかにカーブしている頚椎がまっすぐになっている状態を指します。ストレートネックになると、頭部を支える首から背中の筋肉に大きな負荷がかかります。その結果、肩こりを悪化させる要因になることがあるのです。

2. 冷え性

冷え性の人は血行不良を起こしやすいので、肩こりにもなりやすいと言えます。薄着をしている・お風呂は湯船に入らずシャワーで済ましている・冷たいものをよく飲む習慣がある方は注意をしましょう。

3. 眼精疲労

眼精疲労が原因で肩こりが悪化することもあります。目から入った情報は脳の後ろにある後頭葉で視覚化されているのですが、目を酷使すると後頭葉に血液が停滞して血行不良を起こします。その結果、肩こりを生じさせることがあるのです。

4. 歯科治療

歯科治療が肩こりのきっかけになっていることもあります。よくあるケースが、歯の治療をしたら肩こりになったというもの。噛み合わせが変わったことで食べものを噛むときの左右のバランスが変化し、その影響で頚椎のバランスが崩れて、筋肉に負荷がかかることが原因かと考えられています。

肩こりではなく、頚椎ヘルニアの可能性も疑って

実は肩こりではなく、頚椎ヘルニアになっている方もいます。頚椎ヘルニアは、イラストのように頚椎に圧力がかかって髄核(※)が飛び出てしまい、神経を圧迫して痛みなどが生じている状態を指します。首や肩・腕などに痛みやしびれが出るので肩こりと混同しやすいのですが、椎間板ヘルニアの痛みは筋肉ではなく神経からきています。そのため、椎間板ヘルニアは一般的な肩こりと治療法・対処法が異なります。肩こりか頚椎ヘルニアかどうかの診断は、整形外科でできます。

※髄核(ずいかく):骨と骨の間に存在する円形の繊維軟骨。ゼリー状の球のような形をしており、骨にかかる衝撃を吸収する役目をする。

病院 (整形外科)・接骨院・マッサージ店の違いについて

肩こりを治したい方は整形外科(病院)や接骨院、または整体院やマッサージ店に行くことが多いかと思います。これら施設には明確な違いがあり、それぞれ提供できる施術内容が大きく異なります。

●整形外科ができること

整形外科は唯一、医師による確定診断と医療行為(レントゲンやMRI検査や投薬・外科的処置など)が可能な施設です。接骨院でよく見られるツボ押しや鍼灸(しんきゅう)なども施術している院もあります。

●接骨院ができること

接骨院は、柔道整復師や鍼灸師などの国家資格を持つ人が治療を行う施設です。マッサージや鍼灸治療などを施術していますが、整形外科のように確定診断をしたり薬剤を処方したりはできません。接骨院で湿布を販売することはありますが、接骨院が扱う湿布には薬効成分は含まれていません。なお、接骨院と整骨院は同義語と考えて問題ありません。

●整体院やマッサージ店ができること

整体院やマッサージ店は医師や柔道整復師・鍼灸師などの有国家資格者が、必ずしも在籍している施設ではありませんまた、その店独自のルールやポリシーに沿った施術をするのが特徴です。

最初に行くべきは整形外科!その理由は?

結論から言うと肩こりが気になったら、まずは整形外科に行くのがベストです。

肩こりを治すために、接骨院や整体・マッサージに行く方も多いかと思います。もちろん、その選択は間違いではありません。しかし、肩こりだと思っている症状が本当に肩こりなのかどうか、確定診断ができるのは整形外科にいる医師のみです。頚椎ヘルニアやほかの病気・けがである可能性もあるので、まずは整形外科で診断を受け、症状に応じてその後の通院施設や治療方法を決めるといいでしょう。

余談ですが、関西の方は肩こり治療のために接骨院や整体・マッサージに行くことが多く、関東の肩は整形外科に行くことが多いという話もあります。

接骨院は肩こりを3つのステップで治す

接骨院は、3つの段階を経て肩こりを完治に導きます。

1. ツボや鍼で筋肉をほぐす

まず硬直して血行不良を起こしている筋肉を、温熱療法や低周波治療器・マッサージ・ツボ押しなどでほぐします。筋肉の硬直・血行不良が改善されると、肩こりの症状は一時的に緩和します。しかしほぐすだけでは、筋肉が再び硬くなって痛みを生じさせる可能性が高いと言えますそこで続く2つのステップを踏んで、肩こりの再発を防ぎます。

2. 骨格を整える

筋肉硬直や血行不良を起こす4つの原因の項目で解説したように、骨のゆがみは筋肉に痛みを発症させる原因になります。つまり、いくら筋肉をほぐしても骨がゆがんでいる限り、肩こりは再発するということです。そこで骨格矯正で骨を正しい位置に戻して、肩こりが再発しない体作りのサポートをします。

3. インナーマッスルを鍛える

骨格矯正を何回か繰り返したら、次は骨を支えるインナーマッスルを強化します。インナーマッスルで骨をしっかり支えられるようになると、体表面の筋肉に負荷がかかりにくくなります。

インナーマッスルを鍛える手段のひとつとしては、電気刺激で筋肉を鍛えるマシンがあります。家庭用マシンもありますが、家庭用のものが筋肉に与えられる電気刺激は最大40ヘルツ程度です。一方、接骨院の機器は4,000ヘルツから最大16,000ヘルツの刺激を筋肉に与えられるので、効率的にインナーマッスルをつけることが可能です。

骨格矯正は繰り返すことに意味がある

肩こりがひどい方は、長年骨格がゆがんでいるケースが多々あります。その状態が長いと、脳はゆがんだ骨格を「正しい骨格」だと認識してしまいます。そのため、矯正で正しい骨格を作っても、脳がそれを異常だと判断し、ゆがんだ骨格に戻してしまうことがあります。

そこで、脳が骨格を戻すスキを与えないように治療初期は週2回程の短いスパンで接骨院に通って、正しい状態をキープする必要があります矯正を続けると、徐々に脳が正しい骨格を覚えていきます。早い人なら約1カ月、遅い人でも約3カ月で、正しい骨格に戻るでしょう。

●ボキボキと音が鳴る骨格矯正について

「ボキボキ!」と音が出る骨格矯正がありますが、それは音を鳴らそうとしているわけではなく、動かすときに関節内に気泡が発生し、その気泡が弾けて音が発生しているだけに過ぎません骨が鳴ることのデメリットは特にありませんが、音が鳴らない矯正方法もあります。「音が出るのが怖い」という方は、医師や柔道整復師に相談をしてみましょう。

肩がこっているなら、湿布は“シワ”を作って貼りましょう

●湿布の効果的な貼り方

上記写真のように湿布を貼りたい方向と反対方向に首を伸ばした状態で、肩に湿布を貼りましょう。首を元の位置を戻すと湿布にシワができるのですが、実はこのシワがポイントになります。

湿布にシワができると上記イラストのように、湿布のシワが少しだけ皮膚を上に引っ張りますそうすると血管に少し余裕ができて、滞っている血行が流れやすくなります。シワができないように気をつけて湿布を貼る方も多いかと思いますが、あえてシワを作ってください。

●温湿布と冷湿布は好みで選んでOK

市販の温湿布と冷湿布の違いは、皮膚に貼ったときの感触・温度だけです。筋肉への作用はまったく同じなので、お好みの使用感で選んでください。ただし、温湿布は皮膚への刺激が少し強いので、かぶれやすい人は注意してください。

普段の生活で心がけるべきこと

●健やかな生活を送る

基本的なことですが、運動・睡眠・バランスの良い食生活が肩こりの予防改善に繋がります。

運動でおすすめなのは、水泳です。肩まわりの筋肉を動かして血行を良くするには肩甲骨を動かすことが大切なので、クロールなどをすると良いでしょう。水泳が苦手な方は、肩甲骨を動かすストレッチをまた1日6時間以上の睡眠をとって、筋肉の疲労回復のサポートもしましょう。食事については、栄養バランスを意識し、タンパク質や旬の食材を食べることをおすすめします。

●姿勢を正す

前述したとおり、姿勢の悪さは肩こりの要因になります。特に長時間のデスクワークやパソコン作業・スマホ操作は、首から背中にかけての筋肉に負担をかけます。デスクワークをしている方は1時間に1回は立ち上がり、歩いたりストレッチをしたりして筋肉の硬直をほぐすようにしましょう

パソコンのモニターを目線と同じ高さか、目線より上にするのもいい方法です。視線が上がることで自然と姿勢が良くなります。

まとめ

パソコンやスマホを頻繁に使ったり運動不足になったりしがちな現代人にとって、肩こりは悪い意味で切っても切れない仲。一長一短で治るものではありませんが、積極的な改善対策や治療をすれば、だんだんと肩がこりにくい体に変えていくことはできます。

「デスクワークだから仕方ない」「体質だから仕方ない」とあきらめず、腰をすえて肩こり体質の改善と治療に取り組んでみてはいかがでしょうか。

ぷらす整骨院 柔道整復師・鍼灸師 藤原 克行

ぷらす整骨院URL:http://plusseikotsuin.com/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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