のたうちまわるほどの痛み!?「尿路結石」の原因・治療・予防方法
病気・症状と予防
2018年02月22日掲載
尿路結石とは、「尿路」と呼ばれる腎臓から尿道までの間にできる結石のことを指します。
尿路結石は尿管を刺激したり尿の流れをせき止めたりして、さまざまな症状を引き起こします。しかも、治療が遅れると感染症にかかったり、腎機能が停止したりする原因になる恐れも潜んでいます。
今回は尿路結石について、泌尿器科医の青山真人先生と松江泰佑先生に教えていただきました。
青山真人 泌尿器科 医長 (右) 松江泰佑 泌尿器科 医師(左)
監修
医療法人宝生会PL病院
泌尿器科領域全般の病気を治療している、PL病院泌尿器科の医師。前立腺肥大症に対しては、内服治療に加えてレーザー治療(PVP)を積極的に行っており、その実績は大阪府内では随一。また、尿路結石治療センターを設立し、内視鏡的砕石術・衝撃波治療を行うとともに、食事指導を中心とした生活指導による再発予防にも積極的に取り組んでいる。その他、南大阪地区の腎不全治療の中核施設として透析治療を行い、合併症治療目的の患者を近隣透析クリニックから積極的に受け入れている。
INDEX
尿路結石、ものすごく痛いって本当?
尿路結石の症状として有名なのが「のたうちまわってしまうほどの、強烈な痛み」。
小さい結石は排尿時に自然に体外に出ていくのですが、大きな結石は尿路の狭い部分に詰まってしまい、尿管などを刺激して強い痛みを発症することがあります。痛みが出る部分はソケイ部(左右の太ももの付け根部分)や背中など、尿路結石が発生している場所に準じます。尿管を刺激した場合に激痛となることが多いようです。
そんな激痛を引き起こす尿路結石ですが、実は腎臓などに停滞している結石は、痛みを生じないケースがあります。痛みを発症しない尿路結石は、健康診断などのレントゲン・CT・超音波検査を受けた際にたまたま発見されることが多いようです。痛みがないとはいえ、尿路結石が体内に長く停滞すると、腎盂腎炎(じんうじんえん)などの怖い尿路感染症にかかったり、腎機能に障害をきたしたりする可能性があるので、自己判断で放置することは危険です。
腎不全にもなる!?尿路結石が引き起こす、怖い感染症とは
尿路結石が尿の自然排出をせき止めてしまうと、尿道から侵入した外部の細菌が尿路に残ることなどが原因で、腎盂腎炎を引き起こすケースがあります。また、尿管内の尿が停滞してしまうと「水腎症」になってしまい、腎機能が低下することも。両側の腎機能低下が進行すると、透析が必要になる場合もあります。強烈な痛みもつらいのですが、感染症に罹患しないためにも尿路結石防止は大切なのです。
最も代表的な尿路結石はシュウ酸とカルシウムから成る「シュウ酸カルシウム結石」
石のように固い尿路結石は、尿内のシュウ酸とカルシウムなどが結合することが原因で発生します。通常これらの成分は結合せずに尿内に溶けているのですが、尿内のシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなると結石ができやすくなります。以下のような状態が続くときは尿路結石ができやすいので、注意が必要です。
・適切に排尿されていないとき
寝たきり・前立腺肥大症などが原因で長期的に排尿が滞ると、体内で尿が濃縮されてシュウ酸やカルシウムが結合しやすくなります。
・水分不足のとき
水分不足の状態が続いて体内の水分が減少すると、尿内の水分量も減ります。そうすると、尿内のシュウ酸やカルシウムが結合しやすい状態になります。
・食生活が偏っているとき
脂質や塩分摂取過多な生活を続けていると、尿内の結石のもととなる成分が増えて、結石が発生しやすくなります。
この他、遺伝などが原因で先天的に結石ができやすい体質の方もいます。
病院での治療方法は?
病院で行われる尿路結石の治療方法としては、自然な排石を促す方法と手術によって取り除く方法の2種類があります。
・自然な排石を促す方法
尿路結石のサイズがそこまで大きくない場合は、約1カ月かけて鎮痛薬・排石促進薬・溶解薬などの薬で自然排石を促します(※期間は個人差があります)。一定期間内で排石されればそれ以上の治療は必要ありませんが、自然排石されない場合は手術によって取り除く方法に切り替えます。 なお、尿路結石の大きさが5mm未満の場合に自然排斥される可能性は68%、5~10mmの場合は48%といわれています。尿路結石が大きければ大きいほど自然排石の可能性が低くなります。
・手術によって取り除く方法
石が大きくて自然排石が難しい場合は、手術で尿路内の結石を砕いて取り出します。代表的な手術方法として、以下の4つがあげられます。
1.ESWL(体外衝撃波結石破砕)
体外から衝撃波を当てて尿路結石を砕いて、細かくなった結石を尿とともに体外に自然排出するのを促す手術です。体外から行える他、麻酔の利用も最低限に抑えることができるため、病院によっては日帰りで受けることも可能です。10mm未満の比較的サイズの小さな結石に対して行われることが多いです。
2.TUL(経尿道的尿管結石破砕術)
内視鏡で尿路を観察し、結石をモニターで確認して、レーザーを使って体内で結石を砕いて取り除く手術です。砕いた結石は「バスケットカテーテル」と呼ばれる特殊なワイヤーで直接回収し、取り除いていきます。自然排石に頼ることなく、キレイに結石を取り除くことができるのがメリットです。ただし、使えるレーザーの強さに対して結石が大きすぎたり硬すぎたりする場合は、複数回の手術を要することがあります。一般的に、20mm以下の結石に対して行われることが多い治療方法です。
3.PNL(経皮的腎砕石術)
2cm以上の結石、特に腎臓内に発生した結石に用いられる方法です。手術では、まず結石のある腰や背中サイドから腎瘻(じんろう: 筒のような経路)を腎臓の中まで通します。そして、腎瘻から内視鏡とレーザーがついた特殊な機器を体内に入れて、結石を砕き、取り除きます。尿道よりも太い筒を入れることができるため、結石のサイズが大きくても対応できるのがメリットです。ただし、全身麻酔で行われることが多く、直接腎臓を穿刺するため、出血などのリスクに気を付ける必要があります。
4.ECIRS(経皮・経尿道同時内視鏡手術)
TUL(経尿道的尿管結石破砕術)とPNL(経皮的腎砕石術)を同時に行い、より確実に結石を取り除く方法です。それぞれの施術のメリットをかけ合わせて、より確実に、安全に結石を取り除くことができるのですが、対応できる医師が在籍する病院が限られています。
ご紹介した手術には、それぞれに長所と短所があります。そのため、どの手術を行うか絶対的な決まりはありません。結石の大きさ・場所はもちろん、患者さんの生活スタイルや希望にあわせた最適な治療方針を医師と相談して決定することが重要です。
尿路結石を予防する食事習慣
尿路結石は、食事習慣で予防することができます。
例えば、尿の濃度が凝縮されないように「水をたくさん飲む」とよいでしょう。心臓に問題のない方は食事以外の時間で、1日に1.5~2リットルの飲水が推奨されています。また、尿路結石を生むシュウ酸の摂取を控えるというのも効果的な予防法です。シュウ酸は、紅茶・コーヒー・抹茶など、日常的に摂取するものの中にも含まれているため、これらの摂取量を少し抑えてみるとよいかもしれません。脂質や塩分の摂取を控えるのもおすすめです。
なお、食後は尿が濃くなります。食後すぐに眠ってしまうと、体内に濃度の高い尿が停滞して結石ができやすくなってしまうので、食後すぐに眠りにつく習慣のある方は生活習慣を改めましょう。
再発の可能性が高いのでご注意を!
尿路結石は「成人男性の7人に1人がかかる」といわれており、40~50代の男性に多い病気です。再発率も非常に高いので、定期的に再検査をしましょう。サイズがまだ小さければ、痛みのないうちに自然排石を促す治療を受けることができます。定期検診の推奨頻度は半年に1度です。
ご説明したように、尿路結石の怖さは痛みだけではなく感染症にもあります。定期検診をこまめにして、罹患・再発を防ぎましょう。
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。