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肥満じゃなくても要注意!脂肪肝の原因と正しい治療法とは?

脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態のこと。脂肪肝がひどくなると、肝硬変・肝臓ガンやNASH(ナッシュ)という聞き慣れない病気につながるといわれています


この脂肪肝はどうやって発症するのでしょうか? またNASHとは何なのでしょうか?
今回はその原因・症状・解消方法について、肝臓専門医でもある上嶋弾先生に詳しく教えてもらいましょう。

※本記事では主に「非アルコール性脂肪肝」について解説します。

上嶋 弾 先生

上嶋内科・消化器科クリニック

京都大学医学部卒。京都大学医学部附属病院内科、北野病院内科、三菱京都病院消化器内科の研修後、「北野病院 消化器内科 副部長」「阪和住吉総合病院 消化器センター 部長」など、数々のポストを経て2015年に上嶋内科消化器科クリニックを開設。豊富な経験と消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・肝臓専門医など、さまざまな専門性を活かした高いレベルの医療サービスを提供している

脂肪肝って何?原因は?

脂肪肝とは肝臓に余分な脂肪がたくわえられた状態です。脂肪肝には非アルコール性とアルコール性の2種類があります。アルコール性脂肪肝はその名の通りアルコールの摂りすぎが原因で、非アルコール性脂肪肝は食生活や運動不足などの偏った生活習慣、そして遺伝や体質に要因があるといわれています。
軽度の脂肪肝であれば体に影響を与えることはありませんし、これといった体症状も出ないので、ご自身で気がつくことはなかなか難しいといえます。脂肪肝を正確に診断するには、肝臓に細い針を刺して中の細胞を調べるといった特殊な検査が必要となるのですが、今回は自分でできる3つのチェック方法をご紹介します。

脂肪肝を判断するには?

1.健康診断結果を確認する

健康診断の血液検査の結果を見て、肝臓に関わる数値が高い場合は脂肪肝を疑ってみてください。肝臓の数値は「AST(GOT)・ALT(GPT)」で表されるのですが、ALTの数値が高いと脂肪肝になっている可能性が高いといわれていますALTの基準値は40前後に設定されていますが、これは少し甘めの基準です。健康な男性ならALT30以下、女性の場合なら20以下が適正値ですこの数値を超えている場合は、軽度の脂肪肝になっていると考えられます。

血液検査の他にも、脂肪肝を判断するための方法として超音波検査があります。血液検査でALTが高かった場合は、超音波検査で肝臓の状態を詳しくチェックすると良いでしょう。

※数値が40以下の場合、再検査などの指示は出ません。ご自身で数値を確認して判断する必要があります。

2.体形や生活習慣をセルフチェックする

【体形】
肥満(体内に余分な脂肪がある)の方は、肝臓にも脂肪が高い確率で蓄積しています。また、肥満と呼ばれるような体形ではなくても、外食が多く脂分やカロリーの多い食事が日常化している方も肝臓に脂肪が蓄積している可能性が高く、注意が必要です。

【生活習慣】
運動不足や食習慣の乱れを感じている方は、肥満でなくても脂肪肝が疑われることがあります。血液検査を受けた際には、必ずALT数値を確認し、肝臓の状態を把握するようにしましょう。

3.ご両親の病歴を聞いてみる

脂肪肝になる要因の30~40%は、何らかの遺伝的な影響といわれています遺伝的に肝臓に脂肪が蓄積しやすいこともあるため、両親のどちらかが脂肪肝の場合、食生活や生活習慣に注意した方が良いかもしれません。

脂肪肝が悪化すると「NASH」になる?

・「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」とは?

脂肪肝は、軽度であれば体に何の影響もありませんが、進行するとNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)を引き起こし、肝臓に悪影響を与えます。
NASHとは、肝臓が炎症して線維化が進む病気のことです。脂肪肝になると肝臓内の細胞がふくらみ、それがさらに進行すると細胞が破壊され、「マクロファージ・クッパー細胞」と呼ばれる成分があらわれます。この成分の働きが活発になると、炎症・細胞の破壊がさらに進み、破壊された細胞の隙間を埋めるために肝臓が線維化していきます。線維化した肝臓は固くなり、機能が低下します。そうすると、肝硬変や肝臓ガンといった危険な病気につながる恐れがあるのです。

・NASHの判断方法は?

NASHは、血液検査のALTの数値から判断できます。ALTの数値が3ケタ以上の方は、すでに肝臓の炎症・線維化が始まっていると考えられます。3ケタではない方でも80以上であれば炎症・線維化が疑われます。血液検査でALT数値が80以上の方はより詳細な検査を受けて、生活習慣・食習慣の改善・薬による治療を行いましょう。

脂肪肝を改善するにはどうしたら良い?

脂肪肝は、悪化すると肝硬変や肝臓ガンを引き起こすNASHにつながります。これを防ぐためには、脂肪肝を悪化させないことが大切です。

・食習慣の改善

脂肪肝の悪化を止めるためには、食習慣の改善が必要です。食習慣改善といっても難しく考える必要はありません。現在の食事量を8割程度に抑えることを心がけてみましょう。糖質ダイエットのような極端な方法は体に悪影響を与えるため、あまりおすすめできません。食事が炭水化物・脂肪分・糖質に偏っている方は、量を減らしつつビタミンや食物繊維など、栄養バランスを整えることも大切です。
また、極端に食事を抑えると、体内にある脂肪が肝臓に運ばれ、体は痩せても肝臓には脂肪がたまっているという状態になってしまうことも。このような背景から、ダイエットのしすぎは逆に脂肪肝を進行させてしまうこともあるため、注意が必要です。

・運動不足の解消

おすすめは、週に5日30分程度のウォーキングです。週の2日は60分歩くとさらに効果的です。時間の確保が難しいという場合でも、最低でも週3日、30~60分はウォーキングをしましょうジムに通うよりもずっと経済的ですし、通勤・お買物時にちょっと遠回りすればクリアできる目標なので、ぜひ取り組んでみてください。無理のない範囲で継続的に運動することが大切です。


食習慣の改善と運動不足の解消によって、脂肪内の細胞は確実に減少します。ただし、ALTがすでに3ケタに達している方は、これらだけでは解消されない場合もあります医師に相談して、再検査・薬での治療をはじめましょう。

NASHや合併症を防いで、健康な体になろう

脂肪肝が進行してNASHになると、病気としての意味合いが強くなり治療が難しくなります。ALTの数値が基準値をオーバーしている方は、NASHになる前に食習慣を改善し、運動不足を解消しましょう。

また、脂肪肝の方は、生活習慣や食習慣が偏っている場合が多く、糖尿病・高血圧・高コレステロール血症などを合併していることもあります。ALT数値が高い方は、その他さまざまな病気を予防するためにも、食習慣や運動など生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか?

監修

上嶋内科・消化器科クリニック院長 上嶋 弾

上嶋内科・消化器科クリニック: http://www.ueshima-clinic.jp/

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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