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突然の背中の痛みは「ぎっくり背中」?原因とすぐに取るべき対策は?

急に体勢を変えたときや朝起きたときに、背中に急激な痛みが生じたことはありませんか?この、いわゆる「ぎっくり背中」は、運動不足や長時間のデスクワークなどで筋肉の動きが低下している人によく見られる症状です。そこで今回は、ぎっくり背中の原因や対処法・再発防止のために気をつけるべきことなどについて、リコア鍼灸接骨院・北堀江院院長の松尾瑠偉先生に教えていただきました。

松尾 瑠偉

【監修】リコア鍼灸接骨院・北堀江院院長

北海道メディカルスポーツ専門学校出身、スポーツトレーナー歴10年、治療家歴7年。リコア鍼灸接骨院・北堀江院の院長として院で働きながらサッカーJリーグのトレーナーとしてスポーツの現場でも活動しています。

松尾 瑠偉

ぎっくり背中とは?

ぎっくり背中とは?

●ぎっくり背中ってどんな状態?

「ぎっくり背中」とは、背中に急激な強い痛みが出ている状態です。例えばこんな状況が挙げられます。

  • 背中に急激な痛みが走る
  • 背中の筋肉が突っ張っている感じがする
  • 体を傾けると背中が痛む
  • 息を吸うと背中が痛む
  • 肩や首を動かすと背中が痛む

●痛みが現れる場所は?

●痛みが現れる場所は?

痛みが現れやすいのは、首の下部(頚椎の7番目あたり)から、鳩尾(みぞおち)の裏側(胸椎の12番目あたり)にかけてですが、人によって違います。中でも、肩甲骨と肩甲骨の間に痛みが出る人が多いようです。

●どんなふうに痛む?

最初はどこに痛みのポイントがあるかはっきり分からず全体的に痛みが出ますが、徐々に限局化していく(ピンポイントで痛くなっていく)傾向があります。また、痛みの強さは人によっても場合によってもさまざまです。重度だと痛みで動けない・息をするのも辛いような状態になることもあります。反対に、少し背中に違和感があるぐらいの人もいます。

●ぎっくり腰との違い・見分け方は?

「ぎっくり」と言えば「ぎっくり腰」の方がメジャーな症状かもしれませんね。ぎっくり背中とぎっくり腰の違いは、痛みが現れる場所です。先述したように、ぎっくり背中の場合は首からみぞおちの裏あたりに痛みが出ますが、ぎっくり腰はそれよりも下、腰まわりに痛みが出ます。

また、ぎっくり腰は、前かがみになったり起きあがろうとしたりなど、体を前後に動かしたときに発症しやすい傾向があります。これは、腰骨が前後の動きを担っているからです。一方、ぎっくり背中は体をひねる動きをしたときに起こりやすいといえます。これは、背中まわりの骨が体の回転を担っているからです。

関連記事:ぎっくり腰の原因・治し方。冷やす、安静、早めに病院へ【柔道整復師監修】

ぎっくり背中はなぜ起きる?

ぎっくり背中はなぜ起きる?

ぎっくり背中の症状は、背中の筋肉や筋肉を包み込んでいる筋膜の損傷によって起こります。
縮こまっていた筋肉が突発的な動きによって急に伸びたときや縮んだとき、凝り固まっていた筋肉を急に動かしたときなどに症状が出やすいといえます。

・ぎっくり背中を招きやすい動作

咳やくしゃみ・寝返り・急に大きく手を伸ばす動き・体を反らしたとき・体をひねったときなど

ぎっくり背中を招く要因は?

ぎっくり背中を招く要因は?

●姿勢の悪さ

姿勢の悪さは、ぎっくり背中を招く要因です。
本来背骨は、重い頭を支えるためにS字カーブを描いています。しかし、姿勢が悪いとこの正しいカーブが崩れてしまい、首から背中・腰にかけての筋肉に大きな負担がかかり、筋肉の伸縮性にも悪影響が出るのです。中でも要注意なのは、ストレートネックや猫背です。

姿勢

・ストレートネック
ストレートネックとは、本来あるべき首の骨の湾曲が少なくなり、ほぼ真っ直ぐで固定化している状態です。最近ではスマホ首といった呼ばれ方をすることもあります。ストレートネックになっていると、頭部を支えるため胸まわりや背中まわりに常に過剰な負担がかかります。そのため、ぎっくり背中を発症しやすくなるのです。

・猫背
猫背とは、本来S字を描くべき背骨の湾曲が強くなり、背中が常に丸くなっている状態をいいます。猫背の場合、立ち姿勢を作るときに筋肉がいつも以上の力を出す必要があり、大きな負荷がかかります。いわば、錆びたネジを回すには強い力を使うのと同じです。そのため、ぎっくり背中を発症しやすくなります。

●長時間同じ姿勢をとり続けている

長時間同じ姿勢をとり続けていると、背中まわりの筋肉が凝り固まってしまいます。このような状態で急に筋肉が伸ばされたり強い力が加わったりすると、筋肉や筋膜が損傷して痛みが現れることがあります。デスクワーク・立ちっぱなし仕事をしている方は要注意です。

●運動不足

運動不足で筋肉が十分に使えていない・筋肉の柔軟性が低くなっていることも、ぎっくり背中の原因に。
筋肉には、引っ張られると元に戻ろうとする、ゴムのような性質があります。しかし、運動不足の人は筋肉の柔軟性が失われているので、急な動きに耐えることができず、ちょっとした力で損傷しやすいのです。古くなった輪ゴムが引っ張るとすぐに切れてしまうのと同じような感じです。

●冷え

冷えもぎっくり背中を招く要因の一つです。冷蔵庫にお肉を入れておくと硬くなるのと同様に、体が冷えると筋肉も凝り固まって硬くなります。そのような状態で急な動きをすると、ぎっくり背中を起こしやすくなるのです。冬場などの寒い時期や、夏場でもクーラーで室内が冷えているときなどは注意が必要です。

「ぎっくり背中かも」と思ったら、まずどうすればいい?

「ぎっくり背中かも」と思ったら、まずどうすればいい?

●痛みを確認したり、体を動かしてみたりするのは絶対NG!

まずは動かさないようにするのが大事です。ぎっくり背中は筋損傷であり、ケガです。どこが痛いのか確認しようとしたり、状態を確かめるために体をひねったりするのはNG!傷口を広げているだけなので、絶対にやめましょう。痛みがそこまでひどくなくてそれなりに動ける場合も、できるだけ安静にしておくようにしましょう。

●痛みが出た直後は冷やして

痛みが出た直後は、除痛の意味で冷やすことをおすすめします。湿布を貼るか、氷嚢などで冷やすのでもOKです。

なお、入浴については状態を見て判断してください。炎症が強く出ている場合は温めると痛くなりがちです。
シャワーで済ませるか、お風呂に浸かりたい場合は入ってみて痛みが出たらすぐに上がるようにしましょう。

ぎっくり背中は放っておいても治るの?治療に行くべき?

ぎっくり背中は放っておいても治るの?治療に行くべき?

●ぎっくり背中は放っておいても治る?

結論から言うと、ぎっくり背中は時間が経てば治ることは治ります。徐々に痛みは引いていき、元通りの動作ができるようになるでしょう。
とはいえ、ぎっくり背中になる人は、そもそも姿勢が悪かったり運動不足で筋力が低下していたり、ぎっくり背中になる要因を抱えています。そのため、痛みが引いたとしても、再発の可能性が高いと言えます。

●再発を防止するなら治療を受けた方がいい

前述したように、ぎっくり背中は再発しやすい症状です。再発を防止するためには、やはり接骨院などの施術所、もしくは医療機関で適切な治療を受けることをおすすめします。また、筋損傷が治った後の筋肉の伸び縮みも良くなるので、早く治すことが可能です。

・ぎっくり背中に対する接骨院での一般的な治療

ぎっくり背中に限らずですが、筋肉に炎症が起きている場合、炎症を起こしている筋肉を守るために周辺の筋肉も硬くなります。すると、違う動作でのエラーも起きやすくなってしまいます。そのため、まずはマッサージで炎症を起こしている部位周辺の筋肉をほぐしていきます。

また、除痛のためには鍼治療を施すこともあります。

炎症が治ってからは、再発防止のために、その人の体の悪いところを見て治療を続けていきます。姿勢が悪い人であれば姿勢改善のための骨格矯正をしたり、筋力不足の人であればインナーマッスルを鍛えるための機械治療などを取り入れたりすることもあります。

一度ぎっくり背中をした人はどうしてもその部位をかばうようになるため、体の使い方が変わります。すると、今度は違うところにエラーが出ることも。そういった点も考慮しながら、一人ひとりに合った治療を進めていきます。

ぎっくり背中を防ぐために日常生活で気をつけるべきことは?

ぎっくり背中を防ぐために日常生活で気をつけるべきことは?

●運動習慣をつけて体の柔軟性を上げよう

まずは体の柔軟性を上げることが、ぎっくり背中の予防につながります。そのためには、運動習慣をつけることが大事です。運動をして血流を上げ、筋肉の伸び縮みを良くしていきましょう。

●意識的に背中を動かそう

日常生活の動作では、背中を動かすことはあまりありません。そのため、意識的に背中を動かす必要があります。特にデスクワークの人は、肩甲骨が常に開いた状態で固定されています。デスクワークの合間に、胸を開きながら肩甲骨を寄せるエクササイズを行いましょう。

●体を冷やさないようにしよう

体を冷やさないことも大事です。夏場でもクーラーが効いている場所が多いので、体は思った以上に冷えています。お風呂にゆっくり浸かったり、生姜などの体を温める食材を取り入れたりするのも良いでしょう。また、冷たい飲み物は控えめに。特に寝起きは、冷たい水ではなく常温の水を飲むことをおすすめします。

まとめ

背中に急激な痛みが走り、ぎっくり背中かもしれないと思ったら、まずは安静を心がけて痛みが強いうちは湿布で冷やす、これを覚えておいてください。また、再発防止のためには接骨院などでの治療の検討を。

ぎっくり背中は、運動不足を感じている方やデスクワークで同じ姿勢を取り続けている方がなりやすいとされています。「痛くはないけど、背中がこっている、違和感がある」という方は、ぎっくり背中の予備軍かもしれません。日々の生活習慣を見直し、意識的に背中のストレッチや運動を取り入れてみてくださいね。

リコア鍼灸接骨院・北堀江院院長 松尾 瑠偉

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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