ヒアルロン酸注射とは?部位別の効果と施術前に知っておきたい「よくある失敗」を医師が解説!
健康とくらし
2024年03月29日掲載
ほうれい線・おでこの横ジワ・頬のコケ感・肌のハリ不足……。こういった悩みを改善するのにぴったりなのが、ヒアルロン酸注射です。一度は受けてみたい!と考えている方も多いのではないでしょうか?しかし、「リスクはないの?」「失敗するとどうなるの?」などの不安を感じている方もいるかもしれません。そこで今回は、ヒアルロン酸注射の部位別の効果の他、リスクやよくある失敗などについて、LECINQ clinic 院長の長谷川佳子先生に詳しく教えていただきました。
長谷川 佳子
【監修】LECINQ clinic 院長
2012年 北里大学医学部卒業。2014年 横浜市立大学病院 形成外科入局 KO CLINICに勤務。藤沢湘南台病院、横浜市立大学附属 市民総合医療センター、横浜栄共済病院 小田原銀座クリニック勤務を経て、2020年ルサンククリニック診療部長就任。2021年 ルサンククリニック院長就任。所属学会は、日本形成外科学会、日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本レーザー治療医学会、日本抗加齢学会、日本乳癌学会、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など多岐にわたる。
ヒアルロン酸注射とは?なぜシワやたるみが改善するの?
ヒアルロン酸注射ってどんな施術?
ヒアルロン酸注射とは、その名の通りヒアルロン酸を体内に注入する施術です。注入することで、シワや凹みを埋めて肌表面を滑らかに見せたりボリュームを出したりすることができます。このことから、ヒアルロン酸注射はアンチエイジング施術として非常に人気があります。
そもそもヒアルロン酸って?
ヒアルロン酸は人間の皮膚や腱・筋肉・軟骨・脳・血管などに存在し、細胞同士をつないで水分を保持する働きを持っています。美容施術で行われるヒアルロン酸の製剤としては、造形(ボリュームを出すなど)のための製剤と、肌質改善・肌育として使われている製剤があります。
なお、ヒアルロン酸注射で使われる製剤は、厚生労働省が認可しているアラガン社の「ジュビダームビスタシリーズ」が一般的です。このヒアルロン酸製剤は、アラガン社独自技術であるバイクロス製法(高分子量と低分子量のヒアルロン酸を混ぜあわせることにより密に結合させる技術のこと)で作られています。
ヒアルロン酸でシワやたるみが改善される仕組み
ヒアルロン酸は、人間の体内にもともと存在する多糖類の一種です。皮膚や結合組織・関節軟骨などに広く分布していて、水分を保持し、皮膚の弾力性や柔軟性を維持しています。しかし、体内のヒアルロン酸は加齢とともに減少する成分です。ヒアルロン酸が減少すると、肌に水分を蓄えることができなくなり、シワやたるみを引き起こしてしまいます。
体内で生成されるヒアルロン酸を増やせればいいのですが、食生活や生活習慣を変えたとしても、劇的な増加は見込めません。そこで効果的なのが、注射でヒアルロン酸を補うという方法です。外からヒアルロン酸を注入することで、肌のハリや弾力をアップさせたり、皮膚の内側から表皮を持ち上げたりして、シワやたるみを抑えることができます。また、「皮下脂肪が減った部分をヒアルロン酸で補う」「鼻や涙袋・唇・顎などの形を整える」といった目的で使用することもあります。
ヒアルロン酸注射の持続時間とメリットは?
ヒアルロン酸注射の効果が持続するのは半年~2年ほど
人によっても部位によっても異なりますが、ヒアルロン酸の効果は半年~1年、部位によっては2年ほど続くとされています。効果をさらに持続させるには、半年〜1年に1回程度の施術が必要です。
ヒアルロン酸注射のメリットとは?
ヒアルロン酸注射は、メリットが多い施術といわれています。その理由としては以下のようなポイントがあります。
短時間で気軽に受けられる
ヒアルロン酸は、注射器やカニューレという器具を使用して患部に直接注入します。外科的な手術ではないので、比較的短時間で受けることができ、術後すぐに効果が得られるというメリットがあります。内出血やダウンタイムも少なく、当日からメイクをすることができます。
人にバレにくく、ナチュラルに若返りができる
最近のヒアルロン酸製剤は、肌質改善を目的としたものも多く、造形するよりもアンチエイジングとして取り入れられます。極端な変化ではないため他人にバレにくい、でもナチュラルに若返った印象になれるというところが人気の理由です。
万一失敗しても元に戻すことができる
ヒアルロン酸注射には溶解剤があり、どうしても気に入らない場合はヒアルロン酸を溶かして元の状態に戻すことが可能です。また、ヒアルロン酸は少しずつ体内に吸収されるので、「入れすぎてしまったかも」と思った場合でも、時間経過とともにちょうど良くなることもあります。
比較的安価で受けられる
クリニックや部位にもよりますが、数万円で施術を受けることができます。手術よりも安価なので、取り入れやすいというのもメリットです。
ヒアルロン酸注射の部位とそれぞれの効果
ヒアルロン酸はさまざまな部位に行えます。部位ごとの効果や注意点についてご紹介します。
ほうれい線・ほうれい線の根本を目立たなくさせる
ほうれい線のスタート地点の窪んでいる部位(鼻翼基部 / びよくきぶ)にヒアルロン酸を注入すると、若々しい印象になります。ただし、改善方法はその人のほうれい線の状態によって異なります。小鼻の付け根と頬との段差が少なく、小ジワ程度の人であれば、ヒアルロン酸を直接ほうれい線上に注入することで改善が見込めます。一方で、ほうれい線に頬のたるみがしっかり乗っているタイプの人は、ヒアルロン酸とハイフなどの引き締め系の施術を併用する必要があります。
頬のボリュームアップ
年齢とともに失われる頬のボリュームを補充するために、ヒアルロン酸を注入します。頬がふっくらしチークトップが上がることで、若々しい印象を取り戻すことができます。
こめかみのボリュームアップ
加齢により骨が減少し、こめかみが痩せてくぼむことがあります。こめかみにヒアルロン酸を注射することで、目元の影感や目周りのシワが改善される他、下顔面のたるみやもたつきが目立たなくなる・顔が引き上がって若々しい印象になるといった効果が期待できます。
おでこを丸く綺麗に整える
おでこが骨々しかったり、凹凸があったりすると、男性的な印象になります。おでこにヒアルロン酸を入れて丸みを出すことで、可愛らしく女性的な印象の顔立ちになります。
おでこのシワを伸ばす
おでこの横ジワが深い場合は、ヒアルロン酸注射やボトックスとの併用でシワを目立たなくします。また、まぶたが下がり気味の人にボトックスをしてしまうと、目があけにくくなる恐れあります。このようなケースでも、ボトックスの代わりにヒアルロン酸でシワを伸ばすという方法が取られます。
毛穴やハリ・ツヤの改善など、肌質を良くする
非架橋型ヒアルロン酸という吸収されやすいタイプの製剤や、非架橋型ヒアルロン酸にアミノ酸などの美容成分を入れた製剤を肌全体に注射する方法です。毛穴やハリ・ツヤの改善効果が期待できる他、小ジワを目立たなくしたり、透明感がアップしたり、さまざまな効果が期待できます。
全顔に少しずつ入れてリフトアップ
頬やこめかみ・ほうれい線まわりなどに少量ずつヒアルロン酸を入れていく施術です。顔全体のリフトアップが期待でき、加齢で中顔面が伸びてきた・顔全体がこけて萎んできたといった人に向いています。また、入れ方によっては小顔効果が期待できます。ただし、施術者のセンスや技術によるところも多い施術です。
目の下のクマ
目の下のくぼみ・膨らみが原因のクマ治療にも、ヒアルロン酸注射が効果的です。また最近では、青グマ(目の下の皮膚が薄く毛細血管が透けて青っぽく見えている状態)に対して、色味を改善するためのヒアルロン酸製剤を注入して改善する治療も行われています。
涙袋をぷっくりさせる
ヒアルロン酸注射で涙袋をぷっくりさせることもできます。涙袋を強調することにより中顔面が短く見えて、小顔効果や童顔効果が得られます。また、涙袋にヒアルロン酸を入れることで目の下のちりめんジワを解消する効果も。ただし、ヒアルロン酸が失われたときに逆にシワが目立ってしまう可能性があるため、施術を受けるかどうかは慎重に判断する必要があります。
唇をふっくらさせる・形を整える
ヒアルロン酸を唇に注射することで、唇をふっくらさせたり形を整えたりできます。唇が痩せてきた・唇の縦シワが気になる・人中が伸びてきたので上唇をふっくらさせたいといった人に適しています。
あご先に入れて横顔を整える
あご先にヒアルロン酸を注入することで、横顔のラインを整えることができます。この施術は「Eライン形成」などとも呼ばれていて、鼻先と顎先を結んだライン上に軽く唇が触れるよう、ヒアルロン酸であごの高さを出します。
ヒアルロン酸注射のリスクとよくある失敗とは?
ヒアルロン酸注射は非常に有効なエイジング治療ですが、万能な治療方法ではありません。もちろん全員が当てはまるわけではありませんが、以下でご紹介するようなリスクや失敗が起こりえるということも知っておきましょう。
ヒアルロン酸注射のリスクは?
血管塞栓
ヒアルロン酸が血管に入り込んでしまうと、血管塞栓による血流障害が発生するリスクがあります。最悪の場合、皮膚壊死や視力低下・失明などを引き起こす恐れがあります。また、静脈閉塞によって神経圧迫による神経症状が出ることも。このリスクは完全にゼロにすることはできません。特に、ほうれい線やほうれい線の根本周辺には血管がたくさんあるため、万一のリスクがあることを理解した上で治療を受けるかどうかを判断する必要があります。
アレルギー
ヒアルロン酸はもともと体内に存在する物質なので、安全性が高いといわれています。しかし、稀にヒアルロン酸注射でアレルギー反応を起こす人もいます。
ヒアルロン酸注射のよくある失敗とは?
注入した箇所にしこりができてボコボコになった
ヒアルロン酸製剤にはいくつかの種類があり、部位によって適切な粘度の製剤を用います。この選定が適切でなかったり入れ方に問題があったりした場合、しこりができボコボコになってしまいます。このような場合は、溶解剤で一度ヒアルロン酸を溶かし、必要であれば時間を置いてから入れ直すことになります。
目の下に注入したらヒアルロン酸が青白く透けて見える(チンダル現象)
クマや目の下のくぼみを改善するためにヒアルロン酸を入れると、ヒアルロン酸が青白く透けてしまうことがあります。これはチンダル現象と呼ばれていて、よくある失敗のひとつといえます。ご自身のクマやくぼみに対してヒアルロン酸が適切かどうか、しっかり医師と相談する必要があります。
注入した場所がむくむ・違和感がある
ヒアルロン酸の注入後、数日間はむくみや違和感が生じることがあります。通常は数日で改善しますが、続く場合は施術した医師に相談すると良いでしょう。
すぐに吸収されて元に戻ってしまった
ヒアルロン酸はもともと体内にある成分のため、外から注入しても時間とともに吸収されていきます。半年から1〜2年ほどかけて吸収されるといわれていますが、よく動かす部位は吸収スピードが早い傾向が。2〜3回と施術を繰り返すことです改善されていくので、長いスパンで治療を考えた方がよいでしょう。
不自然にボリュームが出過ぎてしまった
ヒアルロン酸の量が多すぎたことや、適切でない箇所に入れてしまったことが原因で、不自然にボリュームが出過ぎてしまうことがあります。例えば、口横のマリオネットラインにヒアルロン酸を入れる施術で、口元が不自然に膨らんで突出した印象になることも。
また、施術を繰り返していく中でヒアルロン酸が蓄積され、結果ボリュームが出過ぎてしまうこともあります。いわゆる「ヒアル顔」と言われるような、ヒアルロン酸で頬などがパンパンになった状態です。自分では見慣れてしまうので、客観的な視点で入れすぎていないか考えることが大事です。
このような失敗ケースがあるため、ヒアルロン酸注射をする際は、施術経験が豊富な医師のもと、慎重に判断することが必要なのです。
まとめ
今回ご紹介したように、ヒアルロン酸注射はとても汎用性が高い施術です。ほうれい線・おでこの横ジワ・顔全体のコケ感・たるみ感などの改善に効果が期待できます。また最近では、肌を育てる・肌質を整えるのに適したヒアルロン酸製剤も登場していて、肌のハリ不足や小ジワなどの悩みの改善策としても人気です。とはいえ、ヒアルロン酸注射には失敗談やリスクがあるもの事実。ぜひ一度カウンセリングを受けて、ご自身で納得した上で施術を検討してみてくださいね。
LECINQ clinic院長 長谷川 佳子
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。