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カラダにいい油って?正しい油の選び方
健康とくらし
2016年08月04日掲載
油(脂肪)といえば、「摂り過ぎると太りそう」「体に悪そう」というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。確かに摂り過ぎれば肥満を招き、生活習慣病の原因にもなりますが、油を控え過ぎると免疫力が低下したり、肌が乾燥しやすくなったりといった悪影響も。
健康や美容のためには、油も適度に摂取する必要があります。様々な種類の油をうまく選んで摂取して、健康に役立てましょう!
油ってなに?
人間が生きていくために欠かせない3大栄養素は、炭水化物、タンパク質、そして油(脂肪)です。この3つの中でも、油のカロリーは1gあたり約9kcalと最も高いため、日々の食事では健康のために油の摂り過ぎに注意している人も多いかもしれません。油の摂り過ぎは肥満などの原因になりますが、一方で人間が活動するためのエネルギー源として欠かすことはできません。
たとえば人間の脳の60%は脂肪でできているといわれていますし、細胞膜やホルモン、胆汁を作る材料になったり、皮膚に潤いを与えるのも油の役割。油は人間が生きていくためには必要不可欠で、重要な働きをしている栄養素なのです。
油の主な成分は脂肪酸です。油にはバターやゴマ油、牛脂など様々な種類がありますが、その成分はいずれも「脂肪酸」。脂肪酸は、炭素と水素と酸素の3種類の原子で構成され、その構造によって分類され、その働きも異なります。
脂肪酸は分類方法によって、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の大きく2つに分けられます。
1. 飽和脂肪酸…溶ける温度が高く、室温では固体。体内で合成できる。
飽和脂肪酸は一般的に肉や乳製品に多く含まれる酸化しにくい油で、体にとって重要なエネルギー源です。不足すると血管がもろくなり、脳出血を起こすリスクがある一方、摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を増やし心疾患のリスクが高まります。また、心筋梗塞や、肥満、糖尿病を招く危険性があります。
飽和脂肪酸は、結合する炭素の長さによって、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分類されます。
<飽和脂肪酸の分類>
短鎖脂肪酸 | 酢、バターなど | 食品からも摂取できるが、主に腸内発酵で体内で生成される脂肪酸で、脂肪の合成やミネラルの吸収などに使われる |
---|---|---|
中鎖脂肪酸 | ココナッツオイルなど | 長鎖に比べ消化吸収が早く、すぐにエネルギーとして使われ体に蓄積されにくい |
長鎖脂肪酸 | ラード、牛脂など | ゆっくりと吸収されて肝臓や筋肉などの組織に運ばれたのち、余分なものは体脂肪として蓄積される |
2. 不飽和脂肪酸…低い温度でも溶け、10~20℃程度の室温では液体。
不飽和脂肪酸はエネルギー源でもあり、体の各種細胞膜の重要な構成成分です。大きく一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)、多価不飽和脂肪酸(オメガ6系、オメガ3系)と分けることができ、その種類によって様々な働きがあります。一般的に飽和脂肪酸に比べ酸化しやすく、特に多価不飽和脂肪酸は加熱調理には向いていません。
<不飽和脂肪酸の分類>
一価:オメガ9系 | オレイン酸 | オリーブオイル、アボカドオイル、アルガンオイル、カメリアオイルなど |
---|---|---|
多価:オメガ6系 | リノール酸 | べに花油、コーン油、グレープシードオイル、コーン油、ゴマ油など |
多価:オメガ3系 | α-リノレン酸 | エゴマ油、アマニ油など |
EPA | 青魚など | |
DHA | 青魚など |
・一価不飽和脂肪酸
オメガ9系脂肪酸…体内で合成できる
HDL(善玉)コレステロールを下げずに、LDL(悪玉)コレステロールだけを除く働きがあり、動脈硬化や高血圧の予防に効果があるといわれています。腸の働きを活性化し、便秘予防にも効果があります。
・多価不飽和脂肪酸
オメガ6系脂肪酸…体内で合成できないため、食べ物からの摂取が必要(必須脂肪酸)
コレステロール値を下げる働きがありますが、LDL(悪玉)コレステロールだけでなく、HDL(善玉)コレステロールも減少させてしまうため摂りすぎには注意が必要です。また摂りすぎによって、アトピーなどのアレルギー疾患の悪化、動脈硬化を引き起こすリスクも報告されています。
オメガ3系脂肪酸…体内で合成できないため、食べ物からの摂取が必要(必須脂肪酸)
血中の中性脂肪を減らすほか、血栓ができるのを防いだり、不整脈の発生を防止したりと生活習慣病予防の効果があります。不足すると皮膚炎、集中力低下などが起こります。ただし、α-リノレン酸は摂りすぎると前立腺がんのリスクが高まる報告があります。
積極的に摂るならコレ!生活習慣病を予防するオメガ3系
必須脂肪酸であるオメガ6系とオメガ3系脂肪は体内で合成できないため、食べ物から摂取しなければなりません。しかし現代は外食や加工食品などを食べる機会が増えており、コーン油やべにばな油などのオメガ6系の油の過剰摂取でアレルギー疾患や動脈硬化が心配されています。本来オメガ6系:オメガ3系=4:1の比率で摂取するのが望ましいとされていますが、現代人の食生活ではバランスが崩れ、オメガ6系:オメガ3系=10:1になるとも言われています。オメガ6系を控え、オメガ3系のエゴマ油、アマニ油を積極的に摂取しましょう。
<オメガ3系脂肪酸の1日の摂取目安量>
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2015年版」より
(EPAおよびDHAを1g/日以上摂取することが望まれる)
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29(歳) | 2.0g | 1.6g |
30~49(歳) | 2.1g | 1.6g |
50~69(歳) | 2.4g | 2.0g |
70以上(歳) | 2.2g | 1.9g |
エゴマ油
エゴマとは一年草のシソ科植物で、「ごま」とは全く異なるもの。オメガ3脂肪酸が約60%含まれています。 色は製法により様々で、商品によってにおいも異なります。
アマニ油
アマニ(亜麻仁)は、亜麻科植物の種子(仁)のこと。オメガ3脂肪酸が約60%含まれ、商品によってにおいも色も異なるようです。
<摂取時のポイント>
どちらも熱に弱く、酸化しやすい油です。ドレッシングに混ぜるなど加熱せずに食べるのがおすすめ。開封したら冷蔵庫で保存し、できるだけ早く使い切るようにしましょう。
サラダ油の代わりに使いたい!加熱もOKな体にいい油
次にご紹介する飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸は、いずれも酸化がしにくく、炒めものなど加熱調理に向いていますので、普段のサラダ油の代わりとして食生活に取り入れやすい油です。
それぞれ成分の他に、香りや質感が違いますので、取り入れやすいものを探してみましょう。
体に脂肪がつきにくい中鎖脂肪酸のココナッツオイル
バターやラードなどは、摂りすぎると悪玉コレステロールや中性脂肪を増やす飽和脂肪酸ですが、飽和脂肪酸の中でも、体に脂肪がつきにくい種類もあります。それが「中鎖脂肪酸」で、代表的な油がココナッツオイルです。
コーン油やべにばな油など多くの油は「長鎖脂肪酸」で、これらに比べると「中鎖脂肪酸」は体内で約4~5倍早く分解・燃焼されて即座にエネルギーとして使われるため、脂肪として蓄積されにくいのです。
さらに、中鎖脂肪酸は燃焼するときに、ケトン体をつくりますが、これは脳のエネルギーになる物質。そのためアルツハイマー病予防にもその効果が期待されています。
アボカドの栄養ぎっしり!アボカドオイル
アボカドの果実の実を搾って作られるため、アボカドそのものの栄養価がしっかり入っているオイル。オリーブオイルと同じ一価不飽和脂肪酸のオメガ9系脂肪酸ですが、ビタミンEはオリーブオイルの2.5倍多く含まれており、高い抗酸化効果が期待できます。
美容オイルだけでなく食用でも優秀なアルガンオイル
モロッコ南西部にしか存在しないアカテツ科・広葉常緑樹であるアルガンの種子からとり出されるオメガ9系の油。肌や髪などに使う美容オイルとしても人気ですが、ビタミンEが豊富で抗酸化力が高いため食用としても人気。ローストタイプとノンローストタイプがあり、香りを楽しみたい人には、ローストがおすすめです。
酸化しにくく天ぷらにもおすすめ!椿油(カメリアオイル)
ヘアオイルとして日本で昔から愛されてきた椿油は、成分の80%以上がオメガ9系のオレイン酸で、LDL(悪玉)コレステロールを下げる効果が期待でき、食用としてもおすすめ。特に椿油で天ぷらをあげるとカラリと揚がって胃もたれしにくくなります。
監修
辻ウェルネスクッキング 辻ヒロミさん
辻ウェルネスクッキング副校長。管理栄養士、調理師、フードスペシャリスト。
中之島プラザ・フレンチレストラン「ルミエール」で修行。雑誌メゾン、プチフールなどのメニュー、レシピ制作、栄養指導等を務める。
TEL:06-6632-0663 公式サイト:http://www.tsuji-w-cooking.com/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。