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消毒はしなくてもOK!? あっと驚く傷の手当ての新常識
健康とくらし
2014年03月27日掲載
ケガややけどをしてしまったら、最初の手当てにまずは患部を消毒することが大切だと思っている方は多いかもしれません。しかし最近は、消毒をせずに傷を比較的早く治し痛みを軽減させ、傷跡も残りにくいという、これまでの常識を覆す手当てが注目を集めています。
薄着をする機会も多くなるこれからの季節、ケガをしてしまった時はあっと驚く手当てで傷をキレイに治しましょう。
傷ができて治るまでのメカニズム
「傷」にも切り傷や擦り傷、刺し傷など実にさまざまな種類がありますが、簡単に言えば「皮膚の損傷」です。
人間には元々、自己治癒力がありケガをすると、傷を修復しようと体内では次のようなことが起こります。
【傷が治るメカニズム】
①傷口から出血すると止血しようと血小板が集まってくる
②白血球が傷で死滅した組織や細菌を除去する
③コラーゲンを生成する細胞(線維芽細胞)が集まり傷口をくっつける
④表皮細胞が集まり、傷口をふさぐ
このメカニズムをよく理解して、傷を治す必要があります。
傷は消毒しない、乾燥させない「湿潤療法(モイストヒーリング)」
一般的にケガをすると、消毒液をつけて傷口にガーゼを当てるという処置がされてきましたが、実際にはこの方法は傷を治すためには、あまり良い方法ではないことが分かってきました。
消毒液は悪い菌をやっつけると同時に、傷を良くする細胞までやっつけてしまうので、消毒液を使うことは逆に傷の治りを妨げることがあります。また、菌は目には見えずに至るところに存在していて無菌にすることはできないので、傷口は水道水で洗浄するだけで問題ありません。
傷口からジュクジュクとした透明の滲出液が出てきますが、実はこの滲出液の中に細胞培養液が含まれていてケガの治癒にとても役立つのです。ジュクジュクしていると膿と思ってしまう人もいるかもしれませんが、膿というのは感染性の滲出液のことを指しますので、感染があれば「腫脹・疼痛・発赤・局所熱感」という炎症の徴候が出ますが、そのような徴候が見られなければ感染を起こしていないと考えて差し支えはありません。
滲出液が傷口を常に覆って適切な湿潤環境を保つことで皮膚を再生させようという考えが最近、お医者さんたちの間で推奨されている「湿潤療法」です。
<湿潤療法での治癒の仕組み>
湿潤療法のメリット
●傷が比較的早く治る
傷を治すための成分である滲出液で傷口がつねに満たされるため、その効能を最大限に活用でき、治癒も比較的早くなります。
●痛みが軽減される
ガーゼで覆った場合、滲出液が吸収されて傷口が乾燥してしまうことがあります。そうなるとガーゼを取り替える時などに、新たにできた皮膚も引っ張られ痛みを伴います。
適切な創傷被覆材で傷を密閉して乾燥を防ぐだけでも痛みは軽減されます。
●傷跡が残りにくい
傷口を湿潤状態に保つことで、かさぶたが作られず、皮膚の組織がスムーズに再生されます。
擦り傷や切り傷、あかぎれなど日常的に起こるケガの場合は、家庭でも「湿潤療法」を行うことができます。下記の手順で行いましょう。
擦り傷や切り傷、あかぎれなど日常的に起こるケガの場合は、家庭でも「湿潤療法」を行うことができます。下記の手順で行いましょう。
家庭でできる湿潤療法
①傷口から出血している場合はまず止血を行う
②消毒液は使わずに、傷口を水道水できれいに洗う
③適切な「創傷被覆材」を使用して患部を保護し、傷を乾かさないようにする
④創傷被覆材の表面に滲出液が染み出してきたら、交換をする
最近は湿潤療法を用いた絆創膏が薬局で販売されているので、それを活用するのもいいですが、家庭で処置をする場合は傷の観察のためにも必ず1日1回は交換してください。
ただし、噛み傷や刺し傷、裂傷などは患部奥深くにまでばい菌が入り込んでいることがあるので、病院で診察を受けましょう。重いやけども同様です。
「湿潤療法」は従来の手当てよりも、傷跡が残りにくい手当てですが、紫外線で色素沈着が起きると言われているので、上皮化(皮膚の再生が完了)してから3カ月くらいは、直射日光を避けてください。
傷をキレイに治すには、まずは最初の“手当て”が重要なのです。
監修:かねしろクリニック 金城信雄
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医。平成5年に島根医科大学(現 島根大学医学部)卒業後、外科医、総合診察科医として救急患者や重症患者を診察し、数多くの手術を担当。「かねしろクリニック」では創傷処置として湿潤療法を行っている
かねしろクリニック
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