医師に聞く、二日酔いの治し方。頭痛や吐き気への対処法・NG行動は?
健康とくらし
2023年08月10日掲載
ズキズキとした頭の痛み・吐き気・胸焼け・全身のだるさ……。飲みすぎた次の日に訪れる二日酔い症状に、悩まされた経験がある方は多いのではないでしょうか?お酒を飲む前に二日酔いを防ぐことができたら嬉しいものですが、二日酔いを予防する方法はあるのでしょうか?また、それでも二日酔いになってしまった場合は、どうすれば早く症状が治るのでしょうか?今回は二日酔いの対処方法と予防法について、地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 赤松晴樹先生に教えてもらいました。
赤松 晴樹
【監修】地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
日本内科学会 認定内科医・指導医。日本消化器病学会認定 消化器病専門医・指導医。日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医・指導医。日本肝臓学会認定 肝臓専門医。
INDEX
二日酔いになるのはどうして?
二日酔いが起きる原因について解説します。どれか一つが原因というわけではなく、複数の要素が重なって二日酔いになると考えられます。
原因1:「アセトアルデヒド」の蓄積
アルコールは、体内に入ると20%が胃から、80%が小腸から吸収されたのち、肝臓で「アセトアルデヒド」という成分に変化します。その後、アセトアルデヒドは「酢酸」という物質になって、水と塩に分解されます。
この際、酢酸に分解されなかったアセトアルデヒドが全身にまわって神経細胞に影響を与え、二日酔い特有の頭痛や全身のだるさを引き起こすと言われています。ただし、アルコールの摂取量が少なくても、体が脱水気味だったり、睡眠不足や疲れ・胃腸の不調などが助長要因となって二日酔いが起こる場合もあります。
原因2:軽度のアルコール離脱症状
慢性的にお酒を過度に飲む人が急にお酒をやめると、めまいや震え・吐き気といった離脱症状に陥ることがあります。たくさんお酒を飲んだ翌日に現れる二日酔いは、軽度の離脱症状とも捉えられるのです。
原因3:調整ホルモンのバランスが崩れるから
アルコールを摂取しすぎると、血圧や尿量、血糖値などをつかさどる調整ホルモンのバランスが崩れやすくなり、そのせいで低血糖や脱水症状が起こることがあります。
原因4:血液や体液の酸性度が上がるから
アルコールを摂取すると、血液や体液の酸性度が上がると言われています。その影響で、体に不調をきたすという説もあります。
原因5:消化管(胃・腸)へのダメージ
アルコールを摂取しすぎると吐き気や胸焼けといった症状が出ることがあります。
日本人は二日酔いになりやすい!
アルコールの分解速度は人によって異なり、早い人の方が二日酔いになりにくく、遅い人の方がなりやすい傾向があります。そして、日本人は体質的にアルコールの分解速度が遅い人が多く、二日酔いになりやすいと言われています。また、日本人はアルコールによる肝臓へのダメージを受けやすいこともわかっています。
二日酔いになってしまったら、まずすべきこと
二日酔いになってしまったら、まずはどうするべきなのでしょうか?
まずは水分補給を!
二日酔いのときは脱水症状になっていることがほとんど。また、アセトアルデヒドを分解・排出するには水分が必要です。そのため、二日酔いの朝は、まずは水分補給をしましょう。水でもいいですが、水分だけでなく糖分と電解質を一緒に摂れる経口補水液やスポーツドリンクがおすすめです。
安静にして体を休めよう
極論を言ってしまえば、二日酔いは時間が経てば治るもの。ですが、無理をすれば回復までに時がかかってしまいます。二日酔いの症状が辛いときは、安静にしてゆっくり休むようにしましょう。
二日酔いのときにおすすめの食べ物は?
二日酔いのときは、ビタミンやミネラルが豊富なフルーツを食べましょう。特にビタミンCは肝臓のアルコール分解や肝臓の活性化に欠かせない栄養素。水分も多く含むので、アルコールによる脱水症状を緩和してくれます。
二日酔いの症状別に解説!対処方法は?
頭痛がひどい場合の対処方法
頭痛がひどい場合は、その原因となっているアセトアルデヒドを薄めて体内から排出する必要があるので、スポーツドリンクや経口補水液で水分補給をしっかりすることが大事です。
また、カフェインの摂取もおすすめです。カフェインには血管を収縮させる作用があるので、アセトアルデヒドによる血管拡張を抑え、頭痛を和らげる効果が期待できます。ただしコーヒーは刺激物なので胃には良くありません。コーヒーを飲むならミルクを入れる、または刺激の少ないぬるめの緑茶がおすすめです。
吐き気がひどい場合の対処方法
吐きけがひどいときは胃腸が弱っているサインなので水分補給を行い調子が戻るのを待ちましょう。よほど辛い場合は、胃酸を抑えるために、市販の飲み薬やクリニックで処方してもらった飲み薬で対処するのが効果的です。また、二日酔いのときは脂っこいものや刺激物をとるのは避けて、なるべくあっさりしたものをとるようにしましょう。
体がだるい場合の対処方法
体のだるさも、アセトアルデヒドが原因のひとつと考えられます。アセトアルデヒドを分解するために水分を補給して、体をしっかり休めることが大事です。
メンタルが落ち込んでいる場合の対処方法
お酒を飲みすぎた翌日、「体もだるいし、頭も痛いし、なんでこんなに飲んでしまったんだ〜」といった落ち込み・反省とは別に、「なんだか気分が晴れない・不安感や焦燥感が募る」といったメンタル症状が出ることも。この理由はいろいろあります。
一つは、アルコールの摂取で体内のカリウムが減るから。神経細胞のカリウムが減ることで神経伝達に支障が現れ、精神的にも不安定になると考えられます。カリウム不足を補う意味でも、カリウムを多く含む柑橘類やキウイフルーツ・バナナなどのフルーツを食べるのはおすすめです。
また、お酒を飲むと「幸せホルモン」として知られているセロトニンの分泌が減少します。そのせいで、不安を感じたり、考えがまとまらないといった状態に陥ったりすることも。この解消には、セロトニンの分泌に必要なタンパク質を摂ることが有効です。胃腸の具合と相談しつつ、肉・魚などを食事で摂るようにしてみてください。また、日光を浴びたり、十分な睡眠をとったりすることも大事です。
病院にいった方がよいケースもある?
基本的に、二日酔いは時間が経過して体内のアルコールが分解されれば自然に治ります。ですが、「頭が痛くて、薬を飲んでも治らない」「吐き気が止まらない」など、上記のセルフケアではどうしようもないときは、内科などの医療機関を受診してもいいかもしれません。
二日酔いのときにやってはいけないことは?
脂っこいものや辛いものを食べる
二日酔いのときは胃が荒れています。そこに辛いものや脂っこいものを食べると、胃液がさらに分泌されて状態を悪化させてしまいます。
長風呂をする・サウナに入る
「二日酔いのときは長風呂やサウナでお酒をぬく」という人がいますが、これはかなり危険です。二日酔いのときは脱水症状を起こしている場合があり、長風呂やサウナは脱水症状をさらに悪化させてしまいます。さらに、お風呂やサウナに入ると血管が拡張するので、頭痛がひどくなることもあります。また、ふらついてお風呂で滑って怪我をする可能性も。さっぱりしたいのであれば、シャワーで済ませたり、ボディシートや水で濡らしたタオルで拭いたりすることをおすすめします。
迎え酒
迎え酒が二日酔いに効くというのはただの迷信です。迎え酒で体の感覚が鈍くなって楽になる気がすることはあっても、二日酔いの解消にはつながりません。それどころか、まだ体内にアルコールが残っていてアセトアルデヒドの分解が終わっていない状態でお酒を飲むと、さらにアセトアルデヒドが蓄積されることになるので、二日酔いの状態がさらに悪化してしまいます。また、迎え酒をすることで連続飲酒になるので、アルコール依存症にもつながる危険性もあります。
二日酔いを防ぐには?飲み会のときに気を付けるポイント
お酒を飲む前・飲んでいる最中・飲んだ後の工夫で、二日酔いは予防することが可能です。
お酒を飲む前にやっておくべきこと
「この日は飲み会がある」とわかっている場合は、前日に睡眠をしっかりとっておきましょう。睡眠不足や疲労で体調が悪いと、自分にとってのお酒の適量は減ります。いつもならビール2〜3杯は平気な人でも、1杯で酔いが回って二日酔いになることも。コンディションを整えておくことが大事です。また、お昼ごはんを抜かずにしっかり食べておくことも大事です。ただし、胃の負担を考えて脂っこいもの・刺激物は避けておきましょう。
お酒を飲んでいる最中に気をつけるべきこと
アルコールの吸収スピードを抑えれば、二日酔いをある程度軽減できる可能性があります。お酒を飲むときは何か一緒に食べるようにしましょう。アルコール以外の水分も一緒にとるのも忘れずに。お酒だけでなく、水や炭酸水・ソフトドリンクなどを一緒に摂ることで、体内でアルコールが薄まり、吸収を抑えられます。アルコールだけを体内に入れないようにすることが大事です。
お酒を飲んだ後にやるべきこと
お酒を飲んだ後、すぐさま寝るのは良くありません。すぐに寝ると、アルコールの分解速度が落ち、二日酔いに陥りやすくなります。また、すぐに横になると、体が平行になることで胃液が逆流しやすくなり、逆流性食道炎を起こしやすくもなります。
飲み会から帰ったらすぐに寝転びたくなるかもしれませんが、飲酒後3時間程度は横にならないようにするのが理想です。起きた状態で体を休めながら水を飲み、ゆっくり過ごすようにしましょう。歩いて帰って酔いを覚ますのも一つの方法です。ただし、酩酊している場合は危険なので、無理はしないようにしてください。
飲みすぎないことが一番大事!自分の「適量」を知ろう!
当たり前のことですが、二日酔いを予防するにはお酒を飲みすぎないことが一番。自分にとっての適量を知っておきましょう。「これ以上飲んだらしんどくなるな」というラインを超えて飲まない、また、疲れているときは適量が減ることを理解し、「今日は調子悪いな」「なんだかお酒が美味しくないな」と感じたら、お水やソフトドリンクを挟むなど、自制することが大事です。
まとめ
今回ご紹介したように、飲み方次第で二日酔いの予防は可能です。飲み会がある前日はしっかり睡眠をとって体調を整えておく、お酒だけでなくおつまみや料理も食べる、水やソフトドリンクを挟む、帰ったらすぐに寝ない……二日酔いで辛い思いをしたくない方は、ぜひこの方法を試してみてくださいね。また、二日酔いになってしまったら、水分をたっぷりとって休息を。体と心を休めて回復に努めましょう。それでも症状がおさまらない場合は、内科などの医療機関に相談してみるのも選択肢の一つです。
地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 赤松晴樹
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。