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女性の体調コントロールに。低用量ピルの効果・副作用と正しい使い方

生理不順や生理前の体調不良・イライラ・肌荒れなどに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。それらの予防改善策として有効なのが、低用量ピルの服用です。ですが、低用量ピルを服用することに不安や漠然とした抵抗感を感じている方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、低用量ピルの服用で得られる効果や副作用・注意点・正しい飲み方などについて、産婦人科医の柴田綾子先生に教えていただきました。

柴田 綾子

淀川キリスト教病院 産婦人科医長

2011年3月に群馬大学医学部医学科を卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を経て、2013年4月より淀川キリスト教病院 産婦人科で勤務。2020年4月から淀川キリスト教病院 産婦人科医長を務める。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

淀川キリスト教病院 産婦人科医長 柴田 綾子

低用量ピルとは?

低用量ピルとは?

ピルとは、女性ホルモンが含まれたホルモン剤のこと。中でも、副作用を抑えるために含まれるホルモンの量をできるだけ少なくしたものを「低用量ピル」と言います。排卵を抑えて避妊することや月経痛の改善目的に作られた薬ですが、月経周期を一定にし、体調管理をしやすくするのもピルの大きな役割です。
なお、ピルには低用量ピルのほか、中用量ピルと呼ばれる種類もあります。中用量ピルは基本的に長期的に服用するものではなく、生理日を移動したい場合など限られた状況で用いられます。

低用量ピルの効果とは?

低用量ピルの効果とは?

ピルを毎日1回服用し続けることで以下のような効果が得られます。

月経周期を安定させる

低用量ピルの服用によって体内で分泌される女性ホルモンのバランスを制御できるようになるため、月経周期を安定させることが可能です。使用方法によっては生理を早めたり遅らせたりすることもでき、スケジュールに合わせて生理がくるタイミングを調整することもできます。

なお、低用量ピルで月経移動することによる体への悪影響はなく、特に頻度や回数の制限もありません。欧米では、10年ほど前から低用量ピルで生理の回数を減らす治療が行われています。日本でも77日間や120日間連続内服して生理を止めておくタイプのピルもあります。生理回数を減らすことで、体が楽になるだけでなく、子宮内膜症や月経前症候群の軽減に役立つとされています。ただし、低用量ピルでずっと生理を止めておくと、まれに不正出血が出てしまうことはあります。

生理痛や月経前症候群の緩和

低用量ピルを服用することで子宮内膜が薄くなるため、月経痛や月経量を減らすことが可能です。また、ピルの服用で女性ホルモンの変動が少なくなるため、女性ホルモン変動によって引き起こされる月経前症候群(生理前のイライラ・体調不良・不快症状など)を改善する効果が期待できます。

ニキビや肌荒れの改善

ホルモンバランスは肌の状態にも大きな影響を与えます。黄体ホルモンが増える生理前は、皮脂の分泌が高まりニキビができたり肌荒れが起きたりする人が多いかもしれません。低用量ピルを服用すると、男性ホルモンの作用が抑えられるので、ニキビや肌荒れの改善効果が期待できます。実際に、皮膚科でもニキビ改善に低用量ピルを服用することがあります。(全ての皮膚科で処方しているわけではありません)

なお、低用量ピルのニキビや肌荒れへの効果はピルの種類によって異なります。ただし、どのピルが1番効果が高いということはありません。ピルに含まれている黄体ホルモンの相性には個人差があるので、人によって効果がある種類は異なります。ニキビや肌荒れに悩んでピルの服用をする場合は、医師と相談して自分に合うものを試して見つけていくと良いでしょう。

避妊効果

低用量ピルの服用は、女性自身ができる避妊方法の一つです。ピルの服用による避妊効果は99.7%とも言われており、コンドームなど他の避妊方法に比べて格段に高い効果が得られます。基本的に、ピルの避妊効果は7日間連続で内服すると「8日目」から出てくるとされています。なお、ピルの服用をやめると、2〜3日で避妊効果はなくなります。

低用量ピルの副作用は?

低用量ピルの副作用は?

飲み始めに起きやすい体調不良

ピルを飲み始めた最初の頃は、吐き気や不正出血・胸の張り・頭痛といった副作用が出ることがあります。飲み始めのこういった軽い症状については、様子をみながら服用を続けて大丈夫です。通常2〜3ヶ月飲み続けるうちに体が慣れてきて軽減することがほとんどです。もしも症状が強い場合は、低用量ピルの種類の変更や中止を医師に相談しましょう。

血栓症のリスク

ピルの重大な副作用として、血栓症があります。ただし血栓症のリスクは決して高いものではなく、一万人に3〜9人程度と言われています。また、医療機関でピルを処方する際は、必ず事前に問診を行ってリスク評価が行われます。なお、片頭痛持ちの方や40歳以上の人、1日15本以上喫煙をする人、手術前の人、糖尿病の人の場合、血栓症のリスクが高くなると言われているため、事前の問診にてピルの服用が不可と判断されることもあります。

低用量ピルを飲み続けても体に影響はないの?

近年の研究では、ピルの長期服用が将来の妊娠に影響することはないと報告されています。ピルの服用を終了すると約3ヶ月以内に通常の生理周期に戻ると言われています。

低用量ピルによってガンのリスクが上がる?下がる?

ピルの服用がガンのリスクに影響することがわかっています。

ピルの服用でリスクが下がるもの:卵巣がん・子宮体がん・大腸がん

卵巣がんは、毎回排卵のたびに卵巣の皮が破れて修復するという作業が繰り返されることによってリスクが上昇すると考えられています。ピルの服用により排卵を抑えることでそのリスク軽減につながります。子宮体がんについては、ピルの服用で子宮内膜を薄く保つことができるため、そのリスクが軽減すると考えられます。大腸がんについては、メカニズムははっきりわかっていませんが、データとしてリスクが下がることが確認されています。

ピルの服用でリスクが少し上がるもの:乳がん・子宮頸がん

乳がんと子宮頸がんのリスクは少し上がることがわかっています。過剰に心配する必要はありませんが、不安な方は医師に相談してみましょう。

低用量ピルを服用する際の注意点

低用量ピルを服用する際の注意点

必ず医療機関で処方してもらいましょう

ピルを服用したい場合、先の血栓症のリスクなども踏まえて、必ず婦人科などの医療機関で処方してもらってください。またピルにはさまざまな種類があり、人によって適した種類が異なります。自分に合ったものを服用できるようにするためにも、必ず医療機関で相談しましょう。

ピルの効果を得るには「正しい飲み方」をする必要がある

ピルの効果を得るには、正しい飲み方をする必要があります。一般的な低用量ピルの場合は、以下の飲み方が基本です。

【ピルの正しい飲み方】
生理が始まった初日から服用を開始。毎日1錠を決まった時間に服用します。3週間飲んだら、1週間休薬(または1週間偽薬を飲みます)。この間に生理がきます。この4週間セットを繰り返していきます。

※1週間休薬は21錠セットのピルになります。
※28錠セットのピルでは、休薬する代わりに偽薬を1週間服用する形になります。
※77日間、120日間連続して服用する低用量ピルもあります。

なお、飲み忘れた場合、飲み忘れが1錠(1日)なら気づいた時にすぐに服用すれば避妊、月経痛や月経前症候群に対する効果は大きく変化しません。飲み忘れが2錠以上(2日以上)の場合は、1錠をすぐに服用し、残りは予定の時間に服用してください(1日に2錠服用)。

ただし2錠以上飲み忘れた場合は、その後に7日間連続で服用するまでは避妊効果が減っている恐れがあります。月経痛や月経前症候群に対する効果は、2日以上飲み忘れた場合も、その後に服用を再開すれば効果が大きく減ることはありません。飲み忘れがあると不正出血が出やすくなりますが、服用を再開して不正出血が止まれば大きな心配はしなくて大丈夫です。

「低用量ピルを飲んでいるからコンドームは不要」というわけではない

ピルの服用により、コンドームよりも高い避妊効果が得られます。しかし一方、ピルの服用では性感染症の予防をすることはできません。性感染症の予防の観点から見れば、コンドームの着用が望ましいといえます。

まとめ

生理周期とともに毎月体調がすぐれない期間が訪れるというのは、心身ともに辛いものですよね。今回ご紹介したように、低用量ピルは、生理にともなう女性特有の悩みを改善し、体調をコントロールをしやすくしてくれるお薬です。生理不順や月経前症候群など、生理にともなう悩みを抱えている方は、一度婦人科で相談してみてはいかがでしょうか。

淀川キリスト教病院 産婦人科医長 柴田 綾子

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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