奥歯がたまにズキズキと痛むのはなぜ？原因と対処法を解説

歯に痛みを感じる原因として、まず考えられるのは虫歯です。虫歯とは、口内に存在する「虫歯菌」が作り出した酸によって、歯が溶けた状態を指します。

初期の虫歯、つまり歯の表面を覆う「エナメル質」が溶けた状態にあるうちは、痛みはほとんどありません。しかし、エナメル質の下にある「象牙質」と呼ばれる部分にまで虫歯菌が達すると、冷たいものを食べたときに痛みが出るようになります。

さらに、「歯髄（しずい）」という歯の奥の部分にまで進行すると、温かいもの（お味噌汁や温かいお茶など）を食べると痛みが増すようになります。さらにズキズキと激しい痛み・何もしていなくても痛みが生じるようになります。

また、過去に虫歯治療済みの歯でも、詰め物や被せ物の下で虫歯が再発して痛みを生じさせているケースがあります。

過去に歯科治療で歯髄をとって（＝神経を抜いて）被せ物をしている場合でも、細菌が再感染を起こして痛みが出ることがあります。菌が被せ物の内部で繁殖し、歯根の先端から歯の外側に菌が出てくると歯根の周囲に炎症が起きるため痛みが生じるのです。このようなケースでは、噛んだときや温かいものを飲んだり食べたりしたときに痛くなります。すでに歯髄（＝神経）がないため冷たいものを食べたり飲んだりしても痛くならず、むしろ冷やすことによって痛みが引くことがあります。

親知らずやその周辺にトラブルが起きて痛みが生じていることもあります。その一つが、智歯周囲炎と呼ばれるものです。（※智歯とは親知らずのこと）
智歯周囲炎は親知らずの周りの歯茎に炎症が起きている状態で、歯茎が赤く腫れて痛みが出ます。悪化すると歯と歯茎の間から膿が出たり、飲み込むときに痛みを感じたり、何もしていなくても痛みが出たり、熱が出たりすることもあります。

歯の周りの歯肉（歯茎）に痛みを感じるなら、歯周病の疑いがあります。歯周病とは、歯と歯肉の間の溝に歯垢（プラーク）が溜まって炎症が起きる病気です。歯周病になると、歯肉が赤く腫れたり、痛みが出たり、歯磨きをする際に出血したりします。また、急性化すると何もしなくても痛みが出ることも。
さらに放っておくと歯の周りの骨にまで炎症が進行し、骨が溶けて歯がぐらついたり、最終的には歯が抜け落ちたりしてしまうこともあります。

なお、30代以上の成人の80％が歯周病にかかっていると言われています。慢性化している場合が多く、歯周病にかかっているけれど自覚症状はまだ出ていないという人が多いのです。そういった人の場合、病気や寝不足・疲れ・ストレスなどで抵抗力が下がった際に、急に歯肉が腫れたり　歯肉を抑えたりすると痛みが出たりします。

歯の内部にある象牙質と呼ばれる部分は、本来はエナメル質や歯周組織に覆われています。しかし、何らかの原因で象牙質が剥き出しになると、冷たいものがしみたり・歯磨きの刺激で神経が反応して痛みを感じたりするようになります。この状態を「象牙質知覚過敏」と言います。この原因としては、「歯周病の進行・不適切なブラッシング・矯正治療を過去にしたことがある・歯ぎしり」などが考えられます。

習慣化してしまっている歯ぎしり、食いしばりなどによって歯や歯骨に強い負荷がかかっていると、痛みが生じることがあります。

歯が割れているケースがあります。歯が割れていると、噛むと痛みが出て、ひどい場合は何もしなくても痛みが生じます。ちなみに、実は歯が割れるというのは歯が抜ける原因の3位。過去に治療したことがない歯や神経がある歯が割れることは非常に稀ですが、すでに治療してある歯や神経を抜いている歯で歯自体の構造が弱くなっていることがあるため、力をかけるとヒビが入ってしまうのです。

奥歯が痛む場合、その原因が口の中だけではない可能性もあります。何らかの病気に関するウイルス感染で神経に影響が出ていたり、頭痛や肩こり・心臓病など、体の病気から痛みが歯に出ていたりするケースも考えられます。奥歯の痛みの原因が明らかに歯ではない場合、他科への受診をすすめることがあります。

代表的なのは上顎洞炎（副鼻腔炎「ちくのう」の一つ）です。上顎洞炎は症状がそれほど強くない状態であっても、歯科検診でレントゲンを撮影したり、症状を詳しく問診することにより、歯科医師が気が付くことがあります。上顎洞炎は歯が原因で起こる場合とそうでない場合があり、歯が原因ではない場合は耳鼻咽喉科へ紹介することがあります。

また、奥歯の痛みとは関係ないかもしれませんが、例えば糖尿病の重症化予防のために歯科検診が有効であるといわれています。高齢者や有病者に関しては全身のコンディションを整えるためにも、定期的な歯科検診は大切です。

何もしなくても痛くて困るときは、市販の痛み止めを飲むと痛みが和らぐことがあります。智歯周囲炎や歯周病、歯髄を取った歯の痛みは、市販の痛み止めで引いてくることがありますが、炎症がひどい場合や歯の痛みが歯髄に由来している場合は痛み止めを飲んでも効かないことがあります。
なお、市販の痛み止めはアセトアミノフェン系もしくはNSAIDs系の2種類に分かれますが、前者は効果が穏やかで、後者の方が強いといわれています。ただし副作用も後者の方が出やすい傾向があるので、安全なのは前者と言えるでしょう。

結論として、「痛みを感じたらすぐに受診したほうがいい」と言えます。というのも、痛みの原因は自分自身ではわかりづらいからです。原因によって対処法・治療法は異なりますので、正しいケアをするためにも痛みが出たらすぐに受診した方が良いでしょう。

奥歯など歯の痛みを予防するために、定期検診はとても大切です。歯科医院に3ヶ月〜4ヶ月に一度は見てもらうことをおすすめします。虫歯の進行状況を確認したり、歯周病の原因となる汚れや歯石がたまるのを防いだりすることができます。また、適切なブラッシングができているかをチェックしてもらうこともできるので、ホームケアを正しく行えるようになります。

歯は人間にとって非常に大切なもの。大人の歯は一度失うと二度と取り戻せません。今回ご紹介した奥歯の痛みも、虫歯や歯周病など進行すると歯を失うリスクさえ伴う疾患と関連している可能性があります。大きなトラブルに発展する前に、痛みを感じたらすぐに歯科医院にかかることをおすすめします。あわせて大切な歯の健康を守るために、定期検診を受ける習慣をつけましょう。