鍼治療はなぜ効く?鍼治療のメカニズムと効果を解説!
健康とくらし
2022年03月31日掲載
「肩こりや腰痛がつらい」「体がなんとなく重だるい」。そんな症状にお悩みのとき、解決のための選択肢に入れてみてほしいのが鍼治療です。鍼治療は、筋肉のコリや体の疲れ・むくみはもちろん、さまざまな体の不調の予防改善に役立ちます。そこで今回は、鍼治療はどのような症状に効くのか、鍼治療が効果的な理由は何なのかなどについて、鍼師の平山優司先生に教えていただきました。
平山 優司
美容鍼灸サロンReazza
美容鍼灸サロンReazzaの鍼師。施術歴5年。解剖学の知識と経験をもとにした首、肩、くびれ、美脚の施術を得意とする。
鍼治療とは
鍼治療とは、皮膚および筋肉に極めて細いステンレス製あるいは銀製の鍼を刺入することで、体の不調や疾患の改善を目指す治療です。鍼の長さや太さは、体のどの部位に用いるのか・脂肪や筋肉の厚さ・鍼治療をする目的よって変わります。長さは約1.5cmから5cm程度が一般的ですが、お尻など脂肪が分厚い部位には9cm程度の長いものを使うこともあります。太さは髪の毛くらいの細さです。
鍼治療の施術方法とは
鍼治療には、症状や目的によっていくつかの施術方法があります。
電気鍼
置鍼に微弱な電流を流すことで、さらに効果を高める方法です。
単刺(たんし)
1本の鍼をツボに刺しては抜いてを繰り返し、刺激を与える方法です。
置鍼(ちしん)
筋肉や骨の位置・状態などを把握した上で適切な深さ・角度で鍼を刺し、そのまま10分〜15分程度置く方法です。
刺激の強さは「電気>単刺>置鍼」の順番で、刺激に弱い人には置鍼から、強い人には電気鍼など、患者さんに合わせて適切な施術方法を選択します。「肩こりには置鍼」など、決まった施術方法は特になく、患者・症状・施術者によって施術方法は変化するといえるでしょう。
鍼治療の効果とは
鍼治療では、筋肉や細胞組織への刺激によるアプローチと、全身を巡る「気の流れ」を整えるためのアプローチを複合的に用いています。
筋肉や細胞へのアプローチ
鍼を刺すことで筋肉や細胞組織に”小さな傷”をつける
↓
(1) 傷がついた箇所を修復するために、血液が集まる
=体は「怪我をした」と思い、自然治癒力を使って治そうとする
(2) 必要な酸素や栄養を補給し、不要なものを排除する
=体内で代謝が促進される
(3) 自律神経に作用する
=副交感神経が優位になって体や脳がリラックスする。反対に交感神経が優位になりドーパミンを放出し、痛みを緩和することもできる。
気の流れを整えるためのアプローチ
ツボ(経穴)に鍼を刺すことで体の「気の流れ」を整えることもあります。気が足りないところには気を補い、気が滞っているところは多すぎる気を流すのです。これは中国医学に由来する伝統的な施術方法です。
指圧との違いは?
鍼治療は、指圧に比べて神経の反応の仕方が違うと言われています。施術されているときの体感としては、指圧の方が「気持ちいい」と感じやすいかもしれません。これは、押されているときに感じた痛みや不快感が指を離されたときにスッと引いて楽になるからです。
鍼治療の場合、鍼によって皮膚や筋肉に小さな傷がつくことで体は「怪我をした!治さなければ!」と思い、神経が修復するための反応をします。それが施術後の効果にも関係していると考えられています。指圧と鍼治療どちらが効果的かと一概に言うことはできませんが、両者にはこのような違いがあるのです。
鍼治療はどんな疾患・症状への治療で使われる?
WHO(世界保健機関)で鍼治療が有効とされている疾患・症状には、以下のようなものがあります。
神経系疾患
神経痛・頭痛・目眩・脳卒中後遺症・自律神経失調症・不眠・ヒステリー・ノイローゼなど
運動器系疾患
関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・ねんざや打撲・むち打ちなど外傷の後遺症
循環器系疾患
心臓神経症・動脈硬化症・高血圧・低血圧症・動悸・息切れ
呼吸器系疾患
気管支炎・喘息・風邪の予防
消化器系疾患
胃腸炎・肝機能障害・肝炎など
代謝内分泌系疾患
バセドウ病・糖尿病・痛風・脚気・貧血など
生殖・泌尿器系疾患
膀胱炎・尿道炎・性機能障害・腎炎など
婦人科系疾患
更年期障害・生理痛・月経不順・冷え性・不妊など
耳鼻咽喉科系疾患
中耳炎・耳鳴り・鼻出血・鼻炎・蓄膿症など
眼科系疾患
眼精疲労・仮性近視・結膜炎・かすみ目・ものもらい
小児科疾患
小児神経症(夜泣き、疳の虫、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
このような症状への治療・予防のほか、「美容鍼」と呼ばれる美容効果に特化した鍼治療もあります。顔への鍼治療を施すことで、肌荒れ・肌のくすみ・ハリ低下・シワ・顔のむくみなどの予防改善やリフトアップ効果が期待できます。
鍼治療はどんな人におすすめ?
前項でご紹介したように、鍼治療が有効とされる範囲はとても広いと言えます。だからこそ、「病院と鍼治療院、どちらに行けばいいのだろう」と疑問に思うかもしれません。では、どのようなケースで鍼治療が勧められるのでしょうか。
病院での治療・診断が必要なケースも
まず、基本的には外科的な措置が必要な場合や、急性の痛みや激しい痛み(※1)・発熱や吐き気を伴う場合などは、病院での治療が必要なケースが多いと考えられます。
また、鍼灸師は「病名を診断すること」はできないため、病院で診断を受けてからの方が適切な鍼治療ができるという面もあります。なお、鍼灸院では、来院した患者さんを問診した上で「病院での診断・治療が必要」と判断した場合は、適切な医療機関に紹介しています。その場合は指示に従い、まずは病院で診断・治療を受けましょう。
(※1) ただし、急性症状の中でもぎっくり腰・肉離れ・捻挫などは鍼灸が効果的な場合もあります。
病院では改善しない痛みやコリ・不調などがある人におすすめ
痛みやコリ・しびれなどがあっても病院の検査では「異常なし」とされた場合や、病院では積極的な治療が行われない・積極的な治療ができない場合に、鍼治療で症状が改善することがあります。病院では対処療法(出た症状に対して治療を行うこと)が基本ですが、鍼灸では根本治療が可能だからです。
鍼治療に関するQ&A
Q:鍼治療はどのくらいのスパンで受けるべき?
症状によって異なります。慢性化している症状であれば、おすすめのスパンは1〜2週間に1回定期的に受けることです。このくらいの頻度で受けると、良い状態をキープしやすく、悪化しにくい状態を作りやすくなります。反対に、ぎっくり腰のような急性症状の場合は、2日に1回は治療を受けた方が良いことも。状態や症状によって違うので、鍼灸師と相談してみてください。
Q:鍼治療は痛い?
鍼灸院では、体の状態にあわせて鍼の太さや長さを変えて、できるだけ痛みが少ないように施術しています。しかし、痛みの感じ方は人それぞれなので、中には痛みを感じる方もいます。また、悪い状態のときほど痛みを感じやすい傾向はあります。痛みに関して不安がある方は、施術前に鍼灸師に相談してみると良いでしょう。
まとめ
鍼治療は、筋肉のコリや痛みの予防改善だけでなく、「なんとなく体が重だるい」「疲れが取れない」といった不調にも効果が期待できます。平山先生によると、「気持ちの問題かなと思うことでも、鍼治療を受けたらスッキリすることがあります。」とのこと。つらい肩こりや腰痛、慢性的な疲れ・だるさなどでお悩みの方は、一度鍼灸治療を受けてみてはいかがでしょうか。
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。