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産後クライシスはいつまで続く?原因と対処方法を解説!

出産後、夫婦関係が急激に悪化する「産後クライシス」。「子供が生まれて本当なら一番幸せな時期なのになぜ…」と思う方は多いかもしれません。しかし、産後クライシスはどの夫婦にも起こり得ることなのです。その理由は、産後クライシスはただの夫婦喧嘩ではないからです。では、産後クライシスとはどういった状態なのでしょうか。また、なぜ起きてしまうのでしょうか。そこで、今回は夫婦問題研究家で離婚カウンセラーの岡野あつこ先生に、産後クライシスの原因や解決方法などについて伺いました。

岡野あつこ

夫婦問題研究家

NPO日本家族問題相談連盟理事長。株式会社カラットクラブ代表取締役。立命館大学産業社会学部卒業、立教大学大学院 21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験を生かし、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。これまでに25年間、3万件以上の相談を受ける。『最新 離婚の準備・手続きと進め方のすべて』(日本文芸社)『再婚で幸せになった人たちから学ぶ37のこと』(ごきげんビジネス出版)『離婚カウンセラーになる方法』(ごきげんビジネス出版)など著書多数。

夫婦問題研究家 岡野あつこ

産後クライシスとは?

夫婦仲が急激に悪化する産後クライシスの様子

産後クライシスとは、子供が産まれてから数年間のうちに夫婦仲が急激に悪化することです。子供が産まれてから、子供が幼稚園や保育園に上がるくらいまでの4〜5年間に起きやすいといえます。場合によってはもっと長く続くこともあります。

産後クライシスではどんなことが起きる?

険悪なムードが漂う夫婦

産後クライシスでは、以下のようなことが起こりえます。
このような状態に該当する場合は、産後クライシスに陥っている可能性があります。

  • ちょっとしたことで夫にイライラする
  • 感情的になり、夫に対して攻撃的になる
  • 喧嘩が絶えず、お互いに家にいてもくつろげない
  • 夫婦間での会話が減る
  • 配偶者に対して愛情を感じなくなる
  • 配偶者との触れ合いが苦痛に感じる
  • 配偶者からの愛情を感じられず冷たくされていると感じる
  • 夫が外出ばかりで家におらず、家事・育児に非協力的なことに不満を感じる
  • 妻が子どもにしか目を向けず自分を放置していることに不満を感じる

産後クライシスはいつまで続く?

イライラする妻

産後クライシスは4〜5年続くことが多いといえます。産後の体調回復、夫婦の子育ての状況や環境、夫の出産や子育てへの理解度によって異なりますが、産後クライシスに陥ると、長期戦になると考えた方が良いかもしれません。
また、いったんは危機を乗り越えても「あのとき夫が手伝ってくれなかった」という感情が根強く残る方は少なくありません。そのため、産後クライシスは50代前後での熟年離婚の原因になることさえあるのです。反対に、「産後の大変な時期に夫が支えてくれた」と感じている方の場合、熟年離婚は起きにくいと言えます。

産後クライシスの原因は?

夫に強くあたる妻

産後クライシスは、通常の夫婦喧嘩とは異なります。夫婦喧嘩の場合、性格や気質にともなうイライラやストレス・衝突が原因となることが多いですが、産後クライシスの原因はもっと複雑です。

産後のホルモンバランスの変化

女性の体は妊娠、出産を経てホルモンバランスが大きく変化し、そのせいで精神的に不安定になることがあります。子供が産まれて本当は幸せなはずなのに、自分ではコントロールできないほどのイライラやストレスを感じたり、憂鬱感や不安感が募ったりしてしまうのです。ホルモンバランスが妊娠前の状態に戻れば状況は改善しやすいですが、なかなか戻らない場合、産後うつ状態になる方もいます。

産後の生活の変化と、それにともなう男女間のすれ違い

産後は、生活が大きく変わります。女性は妊娠〜出産を経ているので、自然とその準備ができていることが多いのですが、男性は変化についていけていないケースがあります。妻はやることがたくさん、でも夫は何をしていいかわからない、そんな夫を見て妻はイライラする……そのような状況に陥りやすいのです。また、産後の生活の変化にすぐには適応できない男性もいます。そこで「子供が産まれたんだから当たり前でしょ」からスタートしてしまうと、喧嘩やすれ違いが起こりやすくなってしまいます。

“産んだ女性”と“産んでいない男性”での熱量の違い

赤ちゃんを産んだ女性と産んでいない男性の意識の違いも、産後クライシスに影響を与えます。女性は、妊娠から出産という壮大なプロジェクトを終えて気持ちが高まっているので、パートナーにも同じように思ってもらいたいと感じます。しかし、相手に同じ熱量を感じられない場合、幻滅感や失望感が募ってしまうのです。

産後の夫婦関係の変化

子供が産まれると、夫婦関係には変化が生じやすくなります。「妻が子供ばかり可愛がって自分を無視している」そんなふうに感じる男性も。また、産後にセックスレスになってしまうのも、産後クライシスを招く要因になります。男性側の浮気につながることも少なくありません。

育児や家事に対する協力度の違いや不満

家事育児に対する協力度の違いや不満も、産後クライシスの原因になります。今は働く女性が増えているので、子供が産まれたらすぐに仕事に復帰する方も少なくありません。また、経済的な理由で仕事を休めない、育休がとれないケースもあるでしょう。こういった状況では、どうしても女性側の負担が大きくなります。そこで、「夫が協力してくれない」「手伝ってくれない」となると、不満が募り、産後クライシスに陥りやすくなります。

産後クライシスに対処するには

夫婦で和やかに話し合う様子

産後クライシスに対処するにはどうすればよいのでしょうか?出産前の予防方法と出産後の対処方法についてご紹介します。

産後クライシスを予防するポイント

妊娠中から夫婦間のコミュニケーションを大切にする

妊娠中から、夫婦間でのコミュニケーションを大切にするよう意識しましょう。関係性の良いときに、互いの育児や家事に対する思いや考えを共有しておくことは非常に大事です。また、早いうちから、「夫婦間で何か問題が起きたときは、解決策を話し合うテーブルを設ける」という習慣をつけておくのもおすすめです。

子供が産まれる前から男性側も育児への意識を高められるようにする

赤ちゃんが生まれる前に、夫を父親教室などのイベントに連れていくのも良い方法です。こういったイベントでは、例えば赤ちゃんと同じ重さの荷物を持って歩いてみたり、子供との接し方を学んだりすることができます。妊娠や出産・育児について深く学ぶ機会になるはずです。

産後クライシスの対処方法

「こうするべき」ではなく「こうしてほしい」とリクエストしてみて

産後に「夫が手伝ってくれない」とイライラする女性は多いですが、多くの男性は悪気があって手伝わないわけではありません。「どうしていいかわからない」ということがほとんどなのです。
妊娠から出産にかけて、女性の方は精神的に大きく成長するものですが、男性側は自分が産んでないため妻の成長についていくことができません。ですから、産後はまだ“わかっていない”夫に対して「こういうことをしてくれるとありがたい」「こうしてほしい」と、女性側がリードして教えてあげるようにしてみましょう。
ただし、このとき「あなたはこうするべき」「手伝うべき」と、“べき論”で語ってしまうのは良くありません。「こうしてほしい」と、リクエストとして伝えていくと、相手もわかってくれるはずです。自分がしてほしいことを説明してあげるというイメージを持ってみてください。

リクエストしてもダメな場合は…

それでもダメな場合は、がっかりするのではなく考え方を変えてみましょう。自分が理想の母親になるべく、自分がなんでもできるマルチな存在を目指してみるのもひとつの方法です。相手に文句を言ってストレスが溜まるよりも建設的で、かつ不満が残らずに済むケースもあります。

夫は妻がゆっくり休める時間を作れるようにして

産後は、赤ちゃんの夜泣きがひどかったり、ミルクを数時間おきにあげないといけなかったり、ホルモンバランスの影響で具合が悪くなったりします。そんな時期だからこそ、女性がゆっくり休める時間を作ることは非常に大事です。夫側は、奥さんがつらそうなときに、「ベビーシッターさんを頼もうか」「僕が面倒見るから1時間でも寝て」「僕が子供を見ているからランチに行ってきて」などと言ってあげる気遣いが必要です。
ただし、なかには「赤ちゃんを他人には預けたくない」という女性もいます。そういった場合、「シッターさんを頼もうか」の一言が喧嘩の火種になってしまうことも。こういった状況にならないためにも、互いの価値観を知り、すり合わせておくことは非常に大事なのです。

夫は妻にねぎらいを妻は子供だけでなく夫にも愛情を

産後クライシスの解決のために大事なのは2点。ひとつは夫が子供を産んだ後の妻をどれだけねぎらって協力できるかどうか。もうひとつは、妻が出産前と同様に夫を愛せるかどうかです。夫は、育児や家事をできるだけ手伝い、妻をフォローする必要があります。一方、妻は子供にだけ愛情を注ぐのではなく夫に対しても愛情をもち、それを示すことが大事です。

解決が難しいときは頼れる第三者・サービスを利用する

夫婦だけでは解決が難しい場合は、信頼できる第三者に協力を仰いでみてください。例えば、夫の家族や友人に入ってもらったほうがスムーズに解決する場合もあります。また、子育てカウンセラリングや夫婦カウンセラリングを専門としている施設に相談するという方法も。どんな方法が適しているかは夫婦の関係性によっても妻・夫のタイプによっても異なりますので、効果的な方法を選ぶことが大事です。

まとめ

産後クライシスの原因となるのは、「女性のホルモンバランスの変化」や「出産や育児・家事への意識や価値観の違い」「夫婦間のコミュニケーション不足」など、いずれも出産前後のタイミングで噴出しやすい問題ばかりです。しかし、夫婦それぞれの行動・考え方しだいで深刻化を防げるともいえます。また、見方を変えれば、産後クライシスは夫婦の絆・家族の絆を深めるチャンスともなりえるのではないでしょうか。夫婦で力を合わせてこの時期を超えられれば、その先にはさらなる幸せな家族生活が待っているはずです。

夫婦問題研究家 岡野あつこ

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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