暮らし あと押し eo

eo健康

市販の痛み止めや風邪薬の正しい選び方・飲み方。処方薬との使い分けも

自分自身で健康を意識して手当てをするセルフメディケーションは、税制の優遇もあって近年注目されています。ドラッグストアなどで市販の痛み止めや風邪薬を購入する機会は増えているのではないでしょうか。そこで知っておきたいのが、市販薬の正しい選び方や飲み方。また、市販薬と処方薬の使い分けも理解しておきたいところ。そこで今回は、薬剤師の尾上雅英先生に痛み止めと風邪薬の正しい選び方や飲み方・市販薬と処方薬の使い分け方について教えていただきました。

尾上雅英

公益財団法人 田附興風会医学研究所 北野病院 薬剤部 部長

京都薬科大学卒業、神戸薬科大学大学院修了。京都大学医学部附属病院に勤務。 2013年4月より現職。専門領域は、医療薬学・臨床薬理学・がん薬物療法など。

公益財団法人 田附興風会医学研究所 北野病院 薬剤部 部長 尾上雅英

そもそも市販薬と処方薬は何が違う?よく効くのはどっち?

処方薬を手渡す様子

市販薬と処方薬、それぞれの定義

まず知っておきたいのは、市販薬と処方薬の違いについて。それぞれの定義は以下です。

市販薬とは

医師による処方箋を必要とせずに、ドラッグストアなどで購入できる医薬品。一般用医薬品・OTC医薬品とも呼ばれる。

処方薬とは

医師の処方箋を必要とし、薬剤師による調剤によって処方される医薬品。

市販薬にはどんな薬がある?

市販薬には、痛み止めや総合感冒薬(風邪薬)・アレルギー治療薬・整腸剤・胃腸薬などさまざまな種類があります服用のリスクに応じて、第一類医薬品・第二類医薬品・第三類医薬品と区分が分けられています。

市販薬より処方薬の方が効果は高い?その理由

結論から言えば、市販薬よりも処方薬の方が効果は出やすいといえます。その理由は3つ。

市販薬よりも処方薬の方が有効な理由
  • 市販薬よりも薬剤の種類が多いため、症状に応じて多様な選択ができるから
  • 市販薬より有効成分を多く配合量できるから
  • 医師の診察の元、ひとりひとりの症状に応じた薬を出せるから

上記の理由から考えると、初期症状や軽度の症状であれば市販薬で対処してもいいでしょう。一方、症状が本格的になっている場合や、「いつもの様子が違うな」と感じる場合は、病院で診察を受けて処方薬を出してもらいましょう

痛み止めの種類と正しい選び方

体調が悪そうな様子

痛みをとりたいのか?熱を下げたいのか?症状によって選んで

市販の痛み止めには、「痛みを抑える作用」と「熱を下げる作用」がありますしかし成分によって、痛みを抑える作用に優れているものと解熱作用に優れているものがあります病態に合わせて使い分けるようにしましょう。

痛みを抑えるのが得意な成分
ロキソプロフェン

ロキソプロフェンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤のひとつ。痛みの知覚に関与するシクロオキシゲナーゼという酵素をブロックする作用があるため、痛みを抑える効果に優れています。なお、ロキソプロフェンが含まれている市販の痛み止めは、「ロキソニン」のみです。

イブプロフェン

イブプロフェンも、非ステロイド性消炎鎮痛剤のひとつ。ロキソプロフェン同様、鎮痛作用に優れています。市販薬では成分単体で使われていることは少なく、カフェインや痰切りなど他の成分と複合されて用いられています。総合感冒薬(風邪薬)にもよく配合されています。

熱を下げるのが得意な成分
アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、解熱鎮痛薬のひとつ。体温調整をする中枢神経に働きかけるため、熱を下げる効果に優れています。また、ロキソプロフェンやイブプロフェンよりも安全性が高いため、子供への投薬にも適しています。一方で、ロキソプロフェンやイブプロフェンのようにシクロオキシゲナーゼに作用するわけではないので、痛みを抑える作用はあまり高くありません。

消炎鎮痛成分以外の配合成分にも目を向けて

痛み止めを選ぶ際は、「痛みをとりたいのか、熱を下げたいのか」の観点で、ある程度の取捨選択ができます。しかし、それでもまだたくさんの種類があるはずです。例えば、同じ鎮痛消炎剤「A」という製品でも、「A」の他に「Aプラス」があったり「Aデラックス」があったりします。値段にも違いが見られます。 ここでチェックしたいのは、消炎鎮痛剤以外の配合成分です。

おそらく、お持ちの「Aプラス」や「Aデラックス」には、カフェインや痰切り・胃を守る成分・ビタミンなどが配合されているのではないでしょうか。こういったその他の配合成分を見て、自分自身の体質や病態に合うものを選ぶといいでしょうなお、ご自身で見ても分からない場合は、薬剤師に相談することをおすすめします。

痛み止めの効果的な飲み方・飲むタイミング

頭痛に悩まされ薬を飲もうとする様子

痛み止めは、痛みが出たらすぐに飲んで

痛み止めは、痛みが出たらすぐに飲むのがおすすめです。我慢していると、痛みの原因物質が増加し、さらに痛みが強くなっていく可能性があります。

胃への負担が気になる方は、胃を守る成分が配合されたタイプを

「薬は食後に飲んだほうがいいのでは?」と思っている方もいるかもしれませんが、痛み止めの場合は食後でなくても問題ありません。胃が荒れないか心配な方は、胃の粘膜を守る働きのある成分が配合されている痛み止めを選ぶと安心です。

痛み止めは飲みすぎても耐性がつくことはない

様々な錠剤

痛み止めを服用して効き目が減ることはない

痛み止めは服用するほどに耐性がついて効かなくなる……と思っている人は多いかもしれません。それゆえに痛くても我慢する人も多いのではないでしょうか。しかし、これは誤解です。痛み止めを飲んで体に耐性ができることはありません。例えば1カ月のうちの数日間、生理痛を抑えるために痛み止めを服用しても、耐性ができて効かなくなることはありません。

飲みすぎると「痛みを感じやすい体質」になってしまう恐れがある

ただし、痛み止めを飲みすぎると、体が痛みに対して過敏に反応するようになっていきます。ほんの少しの痛みでも、とても強い痛みに感じられてしまうのです。そのため、頻繁に痛み止めを服用せざるを得なくなり、さらに痛みへの反応が過敏に……という悪循環に陥ってしまいます。
※一般的な飲みすぎの目安は、1カ月に10日以上の服用を3カ月続けている状態を指します

配合成分によっては習慣化しやすいものも

また、痛み止めの中でもカフェインを含むものは習慣化しやすく、依存性が高いと言われています。「頻繁に頭痛になる」「毎月必ず生理痛になる」といった方は、カフェインが含まれていないものを選ぶといいかもしれません。

市販の風邪薬の種類と正しい選び方

市販の風邪薬

市販の風邪薬(総合感冒薬)ってどんな薬?

市販の総合感冒薬は、熱や悪寒・頭痛・鼻水・咳といった風邪の初期症状を和らげるための薬ですここで覚えておいてほしいのは、総合感冒薬は風邪を“治す”薬ではないということ。風邪の多くは風邪ウイルスに感染して発症しますが、市販の総合感冒薬にウイルスを死滅させる成分は入っていません。そもそも風邪ウイルスを退治するのは、薬ではなく自分自身の自然治癒力です。総合感冒薬は、各種有効成分によってすでに現れている症状を緩和させ、自然治癒力をサポートする役割をしています。

風邪薬(総合感冒薬)は、配合成分をチェックして病態に合ったものを選んで

市販の総合感冒薬は、複数の有効成分が配合された複合薬です例えば、解熱剤や痰切り剤・抗ヒスタミン剤(鼻水を抑える)などがひとつになっているのです。しかし、製品によってどの成分が多く配合されているのか・どの成分が入っていないのか違いがあります。症状に合わせて選ぶことが大事なので、分からない場合は薬剤師に相談しましょう。

市販の風邪薬と処方薬との違い・上手な使い分け方

市販薬と処方薬

市販の総合感冒薬と、風邪で病院を受診して処方される薬との違い

前述したように、市販の総合感冒薬は、ひとつの薬にいくつもの有効成分が配合されています。一方、処方薬は基本的には成分ごとに薬が分かれています。そのため、患者の症状を見て必要な成分と必要ない成分を判断し、適切な薬を出すことができます。

現在は病院でも風邪に対して抗生物質は出さない

風邪を引いたとき、「早く治すために抗生物質をもらいたい」と病院に来る方が一定数います。一昔前までは、風邪の患者に抗生物質を処方するケースは珍しくありませんでした。しかし近年、抗生物質の不適切な使用による耐性菌の増加(※1)が問題になっているため、抗生物質の使用を是正する動きが世界中で活発化しています。このような動きの一環として、厚生労働省からは「風邪に対して抗生物質は出さない」という方針が示されています。本来、抗生物質は細菌に対して効くものであって、風邪のウイルスを死滅させる効果はないからです。こういった流れにより、現在では風邪に対しての抗生物質の処方は基本的には行っていません。

※1耐性菌:抗生物質の使用によって新たに現れた、抗生物質に抵抗できる・薬剤の効かない菌のこと

市販薬と処方薬、風邪薬の上手な使い分け方

なんとなく熱っぽい・頭が痛い・喉が痛いなど、「もしかして風邪かな?」と感じたら、市販の総合感冒薬を飲むといいでしょう。初期段階に服用することで、それ以上の悪化を防いでくれます。本格的に症状が出ているのであれば、病院で診察を受け、適した処方薬をもらってください。

市販薬・処方薬、薬を飲むときに気をつけるべきこと

薬を飲む様子

他の人が処方された薬を飲むのは絶対だめ!

他の人が病院で処方してもらった痛み止めや風邪薬をもらって飲んだり、もらった処方薬を他の人にあげたりするのはやめましょう。処方薬は、病院での医師の診察のもと、患者の状態や年齢・体重などを考慮した上で出されています。他の人が使うと、思わぬ副作用や体調不良を招く恐れがあります。

おうちに常備薬を置くなら、必ず市販薬を

前述したように、処方薬の使い回しはNG。そのため、風邪薬や痛み止め・腹痛止め・湿布などを常備薬として家に置くなら、必ず市販薬にしてください。

薬の使用期限を確認して!

医薬品には、食べ物の賞味期限と同じように、有効期限があります。医薬品の種類によって異なるので常備薬を使うときはその都度確認を。また、「錠剤が溶けかけている」「粉薬がべとついてきている」といった変化が見られる場合は、使用期限内でも破棄しましょう。

薬の保管条件も確認して!

医薬品によっては湿気や温度などで品質が変わってしまうものがあります。多くの一般薬は室内で保管できますが、直射日光が当たって高温になりやすい窓辺や湿度が高くなりやすいバスルーム・洗面所などは避けましょう。また、医薬品によっては冷蔵庫での保管・遮光が必要なものもあるので、それぞれの保管条件を読んでその通りに保管してください。

まとめ

市販薬の最大のメリットは、手軽に購入できること。病院に行く時間がないとき・病院が開いていない時間でも、身近なドラッグストアで手軽に手に入ります。対して処方薬の場合、医師の診察のもと自身の病態や体質に合ったものを出してもらえるので、より高い効果が期待できます。

日本人は、欧米の人々に比べて薬を敬遠する傾向があるといわれています。「この程度の痛みならそのうち治まるだろう」と我慢してしまうのです。しかし、早めの服薬が症状を緩和し重症化を防ぐ鍵になることも。今回ご紹介した内容を踏まえて、市販薬や処方薬を上手に活用してください。

公益財団法人 田附興風会医学研究所 北野病院 薬剤部 部長 尾上雅英

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

おすすめ記事一覧