アレルギーの子供に手作りケーキを!管理栄養士に教わる代替食材の知識
健康とくらし
2018年01月25日掲載
市販のケーキには食物アレルギーに関わる食材が使われていることも多いため、食物アレルギーを持つお子さんに食べさせるのは難しい場合があります。でも、クリスマスや誕生日などの特別な日には、やっぱりケーキを食べさせてあげたいものですよね。
そこで、おうちでアレルギーを持つお子さんでも食べられるケーキを手作りしてみるのはいかがでしょうか。今回は管理栄養士の辻ヒロミさんに、アレルギーの原因食物(以下「原因食物」と表記)に替わる食材の選び方や、ケーキを作るときの注意点、手作りケーキを美味しく可愛く飾る工夫などをインタビューしました。
※ケーキ作りに使う材料や作り方に関して不安を感じる方は、調理前に必ず主治医に相談しましょう。
辻 ヒロミ
監修
辻ウェルネスクッキング近鉄あべのハルカス校 副校長。管理栄養士・調理師・フードスペシャリストの資格を持つ。日本国内だけではなく、フランスをはじめとしたヨーロッパ各国・北米・東南アジアの国々を訪問し、体に優しい食品や食材を探求。おいしくてヘルシーな料理を研究して、栄養調理講師としてテレビでも活躍中。
INDEX
子供に多い食物アレルギーは?
小さな子供の体は、腸管の免疫システムや骨組みがまだしっかりと完成していない状態のため、特定の食品に対してアレルギー反応を起こしてしまうことがあります。子供のアレルギーの原因食物として多いのは、以下の7つの食品です。
- 卵
- 牛乳
- 小麦
- 落花生
- そば
- エビ
- カニ
これらは症例数が多く、症状が重篤で生命に関わるケースもあるため、消費者庁が定める食品表示法やその他関連法令で、これらは「特定原材料7品目」としてすべての食品に表示義務が課せられています。
消費者庁|アレルギー表示に関する情報――アレルギー表示とは[PDF]
なかでも子供に多く見られるのは、卵・牛乳・小麦アレルギーです。これらは、ほとんどの市販のケーキに使われている食材です。最近はアレルギーの原因食物を使っていない「アレルギー対応ケーキ」を扱うお菓子屋さんも増えてきていますが、同じ施設内で原因食物を扱っていることも多いため、100%安全とは言い切れません。
このような背景から、ケーキはおうちで手作りした方が親御さんにとってはより安心ではないでしょうか。
鶏卵アレルギーの子供のためのケーキ作りのポイント
鶏卵アレルギーのお子さんに手作りケーキを作るときは、一般的なケーキのレシピから鶏卵を抜いてしまえばOKです。確かにケーキは鶏卵を加えた方が味にコクが出たり、生地が柔らかくなったりはしますが、抜いたからといって必ずしも美味しくなくなることはありません。あっさりした味わいでも美味しく食べられるスポンジケーキや、そもそも鶏卵を使わないチーズケーキ・ムースケーキなどがおすすめです。
牛乳アレルギーの子供のためのケーキ作りのポイント
牛乳アレルギーのお子さんにケーキを作るときは、牛乳以外のミルクを活用しましょう。最近では豆乳やアーモンドミルク・ライスミルク・ココナッツミルクなど、いろいろな種類のミルクを一般的なスーパーで手に入れることができます。ただし、大豆アレルギーやナッツアレルギーを併発している場合は、豆乳やアーモンドミルクはNGです。アレルギー症状にあわせて最適なものを選ぶようにしてください。
これらは、基本的に牛乳と同じ扱い方をして問題ありません。レシピの牛乳を代替ミルクにして、同量を使用しましょう。ココナッツミルクやアーモンドミルクは風味や香りが強いため、苦手な方は少し量を減らして水を足して伸ばしてみてください。
牛乳アレルギーのお子さんの場合、同じ乳製品である生クリームも食べることができません。とはいえ、せっかくのケーキにデコレーションができないのは寂しいので、ココナッツミルクや豆乳で代替クリームを作ってみましょう。
ココナッツミルクを使ったホイップクリームの作り方
①缶詰のココナッツミルクを少し置いておきます
②下の方に水気が沈み、上の方に濃厚でこっくりとした成分が分離したら、上澄み部分を取って砂糖を加えて泡立てます
③なめらかなクリーム状になったら完成です
豆乳を使ったホイップクリームの作り方
①豆乳に植物性の油とレモン汁・砂糖を少々加えて泡立てます
②なめらかなクリーム状になったら完成です
豆乳を使ったカボチャクリームの作り方
①皮をむいたカボチャを茹でて、ペースト状にします
②1に豆乳を少し加え、なめらかなクリーム状になったら完成です
ココナッツミルクホイップは、スポンジケーキやロールケーキに使うのがおすすめです。豆乳ホイップは、酸味があるのでチーズケーキやティラミスなどに向いています。豆乳カボチャクリームは、絞り袋に入れてトッピングとして使うと可愛く仕上がります。
小麦アレルギーの子供のためのケーキ作りのポイント
小麦アレルギーのお子さん用のケーキを作るときは、小麦粉の代わりに米粉やおからを使うようにしましょう。そうすれば、スポンジケーキはもちろん、チーズケーキやシフォンケーキなども作ることができます。米粉やおからを使用するとモチッとした食感になりますが、小麦粉を使ったケーキとはまた違った美味しさを楽しめます。乳製品が食べられるお子さんなら、生クリームでデコレーションをしたり、チョコレートが食べられるならチョコレートペンで絵を描いてあげたりすると、華やかさがアップします。お誕生日やクリスマスにもふさわしいケーキになりますよ。
アレルギーを持つ子供にケーキを作るときの注意点
1.ケーキ作りの前に、調理器具の洗浄を徹底する
アレルギー症状の程度によっては、原因食物が肌に触れただけでアレルギー反応を起こす場合があります。原因食物が触れた調理器具(包丁・まな板・ボウル・鍋・食器用スポンジなど)で作ったケーキを食べて、アレルギー反応がおきるお子さんもいます。そうならないためにも、ケーキ作りを始める前には使用するすべての調理器具をしっかりと洗浄するようにしましょう。
2.特定原材料以外の任意表示の原材料も確認する
現在のアレルギー表示に関する法令では、特定原材料7品目(卵・牛乳・小麦・落花生・エビ・カニ)は表示が義務づけられており、その他のアレルギーの多いバナナやキウイフルーツ・オレンジ・くるみ・大豆・ゼラチン・ゴマなどは「特定原材料に準ずる20品目」に定められ、食品表示を奨励されています。
「原因食材が入っているとは知らずにうっかり食べてしまった」という事態を防ぐためには、任意表示の原材料もきちんと確認をしたうえで食材を選ぶことが大切です。
3.“原材料の原材料”にも注意する
“原材料の原材料”にも、アレルギーの原因食物が含まれていることがあります。例えば、ムースやゼリーを作るときに使うゼラチンは、動物性タンパク質でできています。そのため、牛肉・豚肉アレルギーを持つお子さんがゼリーを食べると、アレルギー反応が出てしまうことがあるのです。
また、チョコレートには大豆由来のレシチンという成分が乳化剤として用いられています。大豆アレルギーを持つお子さんの場合、ケーキのデコレーションに用いるチョコレートプレートやチョコレートペンに注意が必要です。
このほか、ジャムに含まれるペクチンは南国系のフルーツ由来の成分です。キウイやパイナップルなどにアレルギーがある場合、ジャムを食べてアレルギー反応が起きる恐れがあります。
子供にもっと喜んでもらうための工夫
食物アレルギーがあるお子さんは、食に対してストレスを感じていることがあります。「アレルギーがあっても、楽しく食べられるんだよ」と教えてあげるために、お子さんと一緒にケーキ作りをしてみるのも良いでしょう。フルーツを一緒に切ってデコレーションしたり、チョコレートペンで一緒に絵を描いてみたり。卵が平気なら、卵白とお砂糖を使ってアイシングにチャレンジしてみるのもおすすめです。ぜひ挑戦してみてください。
監修 辻ウェルネスクッキング副校長 辻 ヒロミ
辻ウェルネスクッキング URL:http://www.tsuji-w-cooking.com/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。