人生を変えるかもしれない「正しい靴の選び方」
健康とくらし
2017年11月16日掲載
赤ちゃんの頃から老人になるまで、歩く上では一生お世話になる「靴」。それだけ長い時間を共有するのに、その“選び方” に意識的な人は少ないのではないでしょうか。
自分に合った靴ではだし気分で歩けたら、どんなにすてきなことでしょう。
でも、そのためには自分の足のサイズだけではなく、足の形や歩き方などを複合的に考えた靴選びが必要です。そこで今回は、シューフィッターのバチェラー(上級)資格を持つ澤田かおるさんに、自宅でできる自分の足の形・歩き方のチェック方法を教えていただきました。
これを読めば、明日から靴ずれしない人生が踏み出せるかも?
(以下は澤田さんのインタビュー内容です)
澤田かおる
シューフィッター
百貨店の婦人靴専門店で20年以上勤務する。幼児・子供靴からシニア靴までアドバイスができるバチェラー(上級)資格保有者。ご主人もシューフィッター資格を持っている。
INDEX
あなたの足はエジプト型・ギリシャ型・スクエア型?
自分に合った靴を選ぶためには、まずは自分の足の形を知ることが大切です。足の形は大きく分けてエジプト型・ギリシャ型・スクエア型があります。自分の足の指の形を見て、どのタイプに当てはまるか確認してみましょう。
・エジプト型
親指が一番長ければ、あなたの足は「エジプト型」です。日本人の約6割がエジプト型だと言われています。この足の形は第5趾(小指)が靴にあたりやすいので、実際の足のサイズより大きめの靴の方がフィットする場合もあります。このタイプの方には、親指を圧迫しにくいオブリーク型の靴(靴先のカーブが親指に傾いている、下の写真のようなもの)がおすすめです。
・ギリシャ型
第2趾(人さし指)が一番長ければ、あなたの足は「ギリシャ型」です。以前は欧米人に多い足型でしたが、最近では日本人にもこの足型の方が人口の約4割以上を占めるようになってきました。靴は足の長さ通りのサイズを選べばOKで、写真のポインテッドトゥのようなつま先が細めの靴も合いやすいという利点があります。
スクエア型
第1趾から第3趾(中指)まで長さがほぼ同じで、第5趾との差がほぼなければ、あなたの足は「スクエア型」です。この足型の方は非常に珍しく、日本人の約1割しかいないと言われています。第5趾がかなり圧迫される足なので、1~2サイズ上のものを履いてみると良いでしょう。どうしても第4趾(薬指)や第5趾が靴先に当たって痛みがちなので、写真のようなつま先に余裕がある靴を選んでみてください。
ちゃんと歩けてる?靴底を見て「歩き癖」をチェックしよう
自分に合った靴を選ぶためには、歩き方の癖もチェックしてみましょう。そのために、まずはいつも履いている靴の底を見てください。
・O脚・X脚の人の靴底って?
靴裏の外側面が平行気味にすり減っている方はO脚気味、かかとに対して並行気味の位置が減っている方はX脚気味だと言えます。ヒールの場合は、ヒールが外に曲がっていればO脚気味・後ろに倒れていればX脚気味です。
O脚・X脚傾向にある方は、かかとのホールドがしっかりとした靴を選んで歩行がぶれないようにすると良いでしょうチェック方法はとっても簡単。靴のかかとをつまんだときに、グニッと簡単に曲がるものはNGです。靴のかかとには通常「芯」が入っているのですが、芯が長くて丈夫であればあるほど良い靴です。
・すり足になっている人の靴底って?
靴底のつま先が減っていたり傷がついていたりする方は、「すり足」になっていることが予測されます。そのような方は、写真のようなつま先がローリング(上方にロール)している靴を選んですり足にならない工夫をしましょう。このローリングタイプの靴は転倒予防効果もあるので、こけやすいお子さまや高齢者の転倒予防にもおすすめです。
ご自身でチェックするだけではなく、シューフィッターの在籍するお店で歩行の様子を見てもらってアドバイスを受けるのもおすすめです。専門の機械で自分の歩き方を数値で知るのも面白いですよ。
スニーカー・パンプス・サンダル・革靴。それぞれの靴の選び方
スニーカー
メーカーごとに違いはあるのですが、スニーカーを選ぶときは革靴よりもワンサイズ上から試してみましょう。心地よい歩行を目指すのであれば、はやりのスリップオン(スリッポン)タイプよりも甲がしっかり止まるスニーカーを。それも紐やマジックベルトで固定されるものを選ぶと良いでしょう。
パンプス
履き口が広く浅い構造のパンプスは、脱げにくくするために幅が小さめに作られています。ですので、サイズを指標にしつつも以下の3つのポイントを試着して確認してください。
1.かかと
かかとと足の間に隙間がなく、フィットしていることがポイント。また、かかとが柔らかいと足が安定しないので、パンプスのかかとを指でつまんで潰れないものを選びましょう。
2.履き口
立ったときに、履き口に指がほんの少し入って“スーッ”と甲のラインをなぞれるくらいがおすすめです。履き口はきつすぎると痛く、緩いと脱げたり足が前に滑ったりする原因になるので、きちんと確認するように。
3.つま先
つま先に10mmくらいの余裕があるか確認をしましょう。きついながらも、靴の中で足の指が自由に動かせる余裕が大切です。また、爪が当たっていないかもチェックしてください。
サンダル
サンダルは、歩いたときに足が前に動くものです。その動きを予測して、立ったときにつま先に5mm程度の余裕があり、かかとは0〜3mm外に出るかを確かめてください。
また、つま先だけで歩きがちな靴なので、土踏まずが合っているものを選びましょう。土踏まずが浮いていると爪先立ちで歩いているような状態になり、指の付け根が痛むことがあります。
革靴
これはすべての靴に言えることなのですが、足の曲がるところ(ボールジョイント)と靴の曲がるところが一致することが大事です。どこでも曲がる革靴は長く歩くと疲れやすいので避けましょう。
靴ずれしない靴選びのポイント
靴ずれの最も大きな原因は、足の大きさに合っていない靴を履いていることです。例えば大きい靴を履けば靴の中で足が動いて靴ずれになりますし、逆にきつすぎると足の骨が靴にあたって痛むことも。
靴ずれを防ぐには、紐・ベルトなどで足を固定できるものや、なじみやすい天然皮革製品を選ぶことが大切です。靴が足になじむまで、緩衝材になってくれるパッドをあてるのもおすすめ。靴の内部に足に圧迫をかけそうなミシン目などの凹凸がないかを確認することも重要です。
また、自分の足で骨などが出っ張っている箇所があるとその部分が靴ずれしやすくなるので 自分の足をよく観察するのも大事です。
大きい靴・小さい靴を買ってしまったときの応急処置方法
・大きい靴は部分パッドで調整しよう
大きい靴はパッドを入れて調整します。ただし、全面パッドは指先が圧迫されたり、逆にかかとが浅くなったりとバランスがとりにくいので、不要な部分はカットするなどの工夫が必要です。専門のお店で入れてもらうのが良いでしょう。
・小さすぎる靴はストレッチャーで伸ばしましょう
小さい靴は、市販のストレッチャーなどで伸ばすのが一般的です。しかし、力加減が難しいので買ったお店などに相談するのが一番良いでしょう。自宅でできる対策としては、ドライヤーで10秒~15秒ほど熱を加えて、親指でなじませるというテクニックがあります。しかし、革の靴以外にはあまり効果がありませんし、素材によっては熱で傷んでしまうこともあるので、やはりプロにおまかせすることをおすすめします。
お気に入りの靴を長く履き続けるためのポイント
靴の寿命は買った日からの毎日のケアで決まります。
靴を買ってすぐにしたいのが、撥水スプレーをかけること。これだけで雨の日の予防だけでなく、汚れもつきにくくなります。また靴は1日履いたらブラシでほこりを払い、形を整えて買ったときと同じ状態に戻しましょう。洋服を脱いだらハンガーに掛けるように、靴もシューキーパーに入れるのが理想です。
特に気をつけたいのは、雨などでぬれたときのお手入れです。布を水でぬらして固く絞り、靴の表面や内部を拭いて水分や汚れをとります。「革は水に弱い」というイメージをお持ちの方がいますが、拭く程度なら問題ありません。汚れが取れたら薄紙などを詰めて自然乾燥させ、乾いたらブラシングをしたりクリームでケアをしてあげましょう。
まとめ
これからの人生も履き続けるものだからこそ、靴の選び方はしっかりと理解しておきたいもの。正しく歩ける靴を選ぶことが、自分の足で健康に生きられる「健康寿命」を伸ばすことにもつながります。ご自身だけではなく、パートナーやお子さま・ご両親にもこの知識を教えてあげてみてくださいね。
また、今回ご紹介した知識はごく一部です。正しい靴を選ぶには、自分の足の長さや甲の高さを知ることも大切です。気になる場合は、お近くのシューフィッターのいるお店に訪問することをおすすめします。無料で親身に相談に乗ってくれるシューフィッターとの出会いも、良い靴を選ぶ第一歩になりますよ。
監修
澤田かおる
足と靴と健康協議会 URL: http://www.fha.gr.jp/
撮影協力
健康靴の店 コンドル URL: https://www.facebook.com/Takarazuka9283condor/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。