糖尿病になる原因は?糖尿病予防に欠かせない食事の摂り方とポイント
病気・症状と予防
2023年11月10日掲載
加齢や食生活の乱れによって、「糖尿病が気になってきた……」という人も多いのではないでしょうか。糖尿病になると、心血管疾患や神経障害・腎症・網膜症・歯周病などといった健康リスクが増え、日常生活に多大な悪影響を及ぼします。
そんな糖尿病ですが、日頃の食事の摂り方で予防・改善することができます。この記事では、糖尿病にならない・悪化させないための食事の取り方について、管理栄養士の望月理恵子先生に教えていただきました。あわせて糖尿病の原因や健康診断でチェックすべきポイントなどについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
望月 理恵子
【監修】管理栄養士
健康検定協会理事長、管理栄養士、山野美容芸術短期大学講師、服部栄養専門学校特別講師、小田原銀座クリニック栄養顧問、日本臨床栄養協会評議員、サプリメント・ビタミンアドバイザーなど、栄養・美容学の分野で活躍。多くの方が健康情報を学ぶための健康検定協会を主宰するとともに、テレビ・雑誌などで根拠ある栄養学を提供・監修をしている。「栄養学の◯と×」、「やせる時間に食べてみた!」など著書も多数。
INDEX
糖尿病とは
糖尿病は、慢性的な代謝疾患です。糖尿病になると、体内でインスリンというホルモンの作用に問題が起き、食事から摂取したブドウ糖を適切に代謝できなくなります。そのため、慢性的に血中のブドウ糖濃度が異常に高くなる「高血糖状態」に陥り、心血管疾患や神経障害・腎症・網膜症・歯周病などといった健康へのリスクが増加します。
糖尿病の原因は、糖尿病の「種類」によって異なる
1型糖尿病と2型糖尿病がある
糖尿病は、主に1型糖尿病と2型糖尿病に分けられ、症状の現れ方が異なります。症状は、どちらも喉の渇き・多飲・多尿・急激な体重減少・疲労感などです。症状の現れ方は、突然現れることがほとんどの1型に対して、2型は「喉の渇き・多飲・多尿・急激な体重減少・疲労感」といった症状が少しずつ現れます。
1型・2型の原因の違い
1型糖尿病は免疫系の異常をベースにインスリンを生成する膵臓のβ細胞が破壊される自己免疫疾患です。体内でインスリンがほとんどまたは全く生成されないため、外部からのインスリン補給が必要です。対して、2型糖尿病は、主に生活習慣に関連した要因によって引き起こされる代謝疾患です。遺伝的要因も影響しますが、肥満・不適切な食事・運動不足などがリスクを増加させます。
糖尿病の黄色信号?健康診断で注目すべき数値は?
健康診断書で確認すべき指標は?
健康診断の項目では、血液検査からは血糖値とHbA1c、尿検査では尿糖の結果を確認してみましょう 。
・血糖値(FPG)
血糖値(FPG)の値を見ると、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)がわかります。血糖値は、食事をとる前の空腹時と食事をとった後で変動するものです。通常、空腹時は約70~100mg/dl、食後は何を食べたかによって変わるものの140 mg/dL程度まで上がります。そして、食後2時間程で空腹時の値に戻ります。糖尿病の疑いがある場合、空腹時血糖値が正常値よりも高くなります。健康診断で血糖値の値を見る際は、以下を参照にしてください。
- ・空腹時血糖値が100-109mg/dl:正常高値
- ・空腹時血糖値が100-109mg/dl:境界型(糖尿病予備軍)
- ・空腹時血糖値が126mg/dL以上:糖尿病型、糖尿病が疑われる
HbA1c (NGSP)
血中のヘモグロビンの一部が糖とくっつくと、「糖化ヘモグロビン」という物質に変化します。この血中のヘモグロビンのうちの糖化ヘモグロビンの割合をHbA1cといいます。この値は1〜2ヶ月前の血糖の平均値を反映した数値のため、前日や当日などの食事や運動などの影響は受けません。また、血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなり、HbA1cは高くなります。健康診断の結果でHbA1cの値を見るときは、以下に記載する人間ドック学会の基準を参照にしてください。HbA1cが6.0%以上の方は、念のため詳しい検査をする必要があります。
- ・5.5%以下:基準値
- ・5.6〜6.4%:要注意
- ・6.5%以上:糖尿病型、糖尿病が強く疑われる
尿糖(尿検査)
健康診断で尿検査をすることがあります。その際に調べるのが、尿糖や尿たんぱく・尿潜血・尿沈渣・尿比重です。この中で、糖尿病リスクを測るのに特に注目すべき項目は「尿糖」です。尿糖とは、尿中に含まれるブドウ糖(血糖)のこと。尿糖が出ている場合は、糖尿病リスクが高くなります。通常、血糖値が160〜180mg/dL程度になると、尿の中に糖が出るようになります。
「再検査が必要」と言われたら、どうすればいい?
再検査が必要な場合には、その旨を内科、内分泌内科などの医療機関で伝えましょう。必要な血液検査をしてくれます。
糖尿病予防には食事が重要!健康的な食事の摂り方とポイント
2型糖尿病だけでなく、1型の場合にも食事管理は重要です。適切な食事管理をすることで、インスリン治療の効果が出やすくなります。
炭水化物の選び方と摂取量に注意
炭水化物は血糖値に大きな影響を与えるので、どんな種類の炭水化物を取るのか、その選択が重要です。砂糖が多く使われているものはもちろん、白米やパン・小麦由来の麺類なども、血糖値が一気に上昇しやすいので、摂りすぎに注意を。
炭水化物の多い食品の中でも、食物繊維を多く含む穀物や豆類などは、ブドウ糖がゆっくりと血中に吸収されるため、血糖値の急激な上昇を防ぐと言われています。白米よりも玄米や雑穀米、小麦のパンよりも全粒粉パン、麺類も全粒粉パスタや豆を使った麺などを選ぶのがおすすめです。
食物繊維で血糖値の急上昇を防ごう
食物繊維は糖の消化吸収を遅らせ血糖値のゆるやかな上昇に役立ちます。食物繊維を多く含む野菜や果物・海藻類・きのこ・全粒穀物・豆類などを積極的に食べるようにしましょう。
また、「食事の際に最初に野菜(サラダなど)を食べると血糖値の上昇を緩やかにできる」とよく言われますが、これは理にかなっています。上記したように、食物繊維には糖の消化吸収を遅らせる働きがあるので、野菜や海藻など食物繊維を多く含む食品を最初に食べることで、血糖値のゆるやかな上昇につながります。また、それらをよく噛んで食べることでお腹が適度に満たされるため、炭水化物の摂取量を少なくでき、血糖値が急上昇しにくくなります。
お菓子やジュースなど高糖質な食品は避けて
お菓子やジュースなどには砂糖が多く含まれているため、血糖値の急激な上昇を招きます。糖尿病予防のためには、これらはできるだけ避けたいところです。甘いものが食べたい・間食がしたい場合は、砂糖を含むおやつではなく、砂糖の入っていないフレーバーティーや果物、ナッツ、ヨーグルトなどを適量食べるようにしましょう。
なお、「果物であれば糖分をさほど気にせずにたくさん食べても大丈夫」と思っている方がいますが、そういうわけではありません。果物に含まれる糖質は、主にショ糖(砂糖)・ブドウ糖・果糖の3 種類。このうちすぐに血糖値を上げるのはブドウ糖だけなので、お菓子と比べて果物は血糖があがりにくいとされています。
ただし、果糖もブドウ糖と同じカロリーを持つため、とりすぎれば体重や中性脂肪が増え、血糖値を悪化させます。
糖質ゼロ商品も、取り過ぎには注意を
最近は「低糖質」のお菓子や「糖質0」のジュースをよく見かけますが、こういったものを選ぶのもおすすめです。ただし、食べすぎ・飲み過ぎには注意しましょう。
糖質0などでも、よく見ると「人工甘味料」を使って甘味を出しているものもあります。人工甘味料を多く摂る人は、摂らない人に比べて肥満や糖尿病を発症するリスクが高いとも報告されているので、糖質0だからといっても摂りすぎには注意が必要です。
食事記録をつけよう
日々の食事記録をつけて、自身の食事習慣を把握しましょう。どんなものを口にしているのか、どのくらいの量を食べているのかを可視化することで、必要な修正を加えやすくなります。
糖尿病予防のための食事計画を
朝ごはんのポイント
起きてすぐ、空腹状態で糖質が高い食べ物や炭水化物を食べると、血糖値が急上昇してしまいます。上記したような食物繊維を多く含む食品を食事の最初に意識してとりましょう。朝にしっかり食物繊維を摂っておけば、お昼の血糖急上昇を抑える働きが期待できます。
昼ごはんのポイント
おすすめは、和定食のような主食・主菜・副菜の揃ったもの。ラーメンやうどんなどは、糖質量が多くなりやすく、おすすめしません。もしどうしても食べたいのであれば、野菜やきのこ、海藻などをトッピングしたり、サラダや小鉢を追加したりして、食物繊維を意識してとりましょう。昼にしっかり食物繊維を摂っておけば、夕食の血糖急上昇を抑える働きが期待できます。また、たんぱく質を多く含むもの(肉や魚、卵、大豆製品、乳製品)も一緒にとることで腹持ちし、間食や夕食の食べ過ぎ予防にもつながります。
夜ごはんのポイント
夜は朝よりも同じものを食べたとしても血糖値が上がりやすくなっています。夜遅い時間の食事は血糖値をあげやすく、さらに高血糖が朝まで続くこともあるため、できるだけ早い時間に食べましょう。また、糖質の多いものは控えてください。どうしても夜遅くなる場合は夕方に軽食を食べ、遅くの食事はおかずだけにするなど分食をしましょう。
まとめ
糖尿病は、さまざまな合併症を引き起こす可能性をはらむ怖い病気です。しかし厄介なことに、糖尿病、特に2型は初期症状がほとんど出ないため、なかなか自分では異常に気付けないのです。そこで大事になるのが健康診断と、血糖値の急上昇を防ぐための食事習慣です。ぜひ今回ご紹介した食事方法を取り入れて、糖尿病にならない・悪化させないことを心がけましょう。
管理栄養士 望月 理恵子
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。