ノロウイルスの感染経路・原因を詳しく解説!発症後の症状と正しく予防する方法とは?
病気・症状と予防
2024年01月31日掲載
冬になると度々ニュースになる、学校や会社などでのノロウイルスの集団感染。ノロウイルスは感染力が非常に高いため、集団感染がしばしば起こります。しかし、ノロウイルスには予防接種のワクチンや特効薬がありません。そのため、普段からいかに予防し、かからないように気をつけるかが大事だと言えます。そこで今回は、ノロウイルスの感染経路や原因、発症後の症状や予防方法などについて、岡村信良先生に詳しく教えてもらいました。
岡村信良
【監修】小田原博信会 理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士
平成18年北里大学大学院卒、平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに平成20年に入職、その後院長に就任。
INDEX
ノロウイルスとは?症状の特徴、風邪などとの違い
ノロウイルスとは
ノロウイルスは、急性胃腸炎を引き起こすウイルスのひとつ。ノロウイルスが消化管に侵入し、腸の上皮細胞に感染した場合に炎症を引き起こします。
ノロウイルスの症状
感染から12〜48時間以内に、強いおう吐や吐き気・腹痛・37〜38度前後の軽度の発熱といった症状を引き起こします。症状は1~2日ほど続き、後遺症なく自然に回復することが多いのですが、小さい子供や高齢者など、免疫力が弱い人は重症化する恐れがあるので注意が必要です。
風邪や他の感染症との違い
ノロウイルスは、10~4月頃までの秋口から春にかけて流行する傾向があります。また、ノロウイルスの感染は主に経口感染です。感染力が非常に強く、ごく少量のウイルスが体内に侵入しただけでも感染します。ドアノブなど物品に付着したウイルスを触って、その手で鼻や口に触れることで起こる接触感染や、咳やくしゃみなどの飛沫感染によって広がることもあります。
ノロウイルスが冬に流行るのはなぜ?感染経路や発症しやすい人は?
ノロウイルス感染症が増えるのは冬期間と言われています。これはなぜなのでしょうか。
まず、ノロウイルスは低温・低湿度な環境下を好みます。気温20℃の環境では3~4週間の生存期間であるのに対し、気温4℃の環境では8週間生存できるという報告も。くわえて日本の冬は乾燥しているのでウイルスも空間を浮遊しやすく、さらに私たちの粘膜も乾燥によってウイルスが付着しやすい状態にあります。これも冬に感染者が増える理由です。
また、冬は、旬を迎える牡蠣などの二枚貝を食べる機会が増える季節です。二枚貝は海水を大量に体内に取り入れるため、消化器官に海水中のノロウイルスが蓄積・濃縮されることがあります。加熱しないとウイルスの活性を失わせることができないため、加熱不十分な牡蠣などを食べることでノロウイルスに感染する可能性が高くなるのです。
ノロウイルスの感染経路とは
ノロウイルス感染症は、何らかの理由でノロウイルスが口から体内に入ることで感染します。主な感染経路としては以下が考えられます。
経口感染
経口感染とは、ノロウイルスに感染している食品を生食・加熱不十分な状態で食べることによる感染です。感染源として代表的なのは生の魚介類で、中でも牡蠣などの二枚貝から感染するケースが多くなっています。
また、ノロウイルスは感染者の便やおう吐物の中にも存在しています。感染者や看病した人が手洗い不十分なまま食材・食器に触れることでノロウイルスが食品に付着し、それを食べた人が感染してしまうケースもあります。
空気感染
感染者のおう吐物に含まれたノロウイルスが空気中に舞い上がることがあります。ウイルスを含んだ空気を吸い込むことで感染が広がる可能性があります。
接触感染
感染者の手や体表面に付着したウイルスに直接触れることで感染が広がります。感染者の手や感染者が触れた物に触れた場合、ウイルスが伝播する可能性があります。
飛沫感染
感染者がくしゃみや咳、おう吐することでウイルスを含んだ飛沫が空気中に飛散します。感染者と同じ空間にいた場合、ウイルスを含んだ空気を吸入してしまい、ノロウイルスに感染してしまうケースがあります。
ノロウイルスが他人にうつりやすいのはどうして?
ノロウイルスは、アルコールや熱・乾燥などへの抵抗力が高く、掃除や除菌をしてもなかなか死滅しません。さらに、ノロウイルスは人体から排出された後も、自然環境下で一定期間生きることができます。例えば、感染者のおう吐物に含まれたウイルスが空気中に飛散し、12日以上経ってから他の人に感染したという事例もあります。ノロウイルスが他人にうつりやすいのは、このような生存力の高さが関係しているのです。
ノロウイルス感染症を発症しやすいのはどんな人?
ノロウイルスに特に注意が必要なのは、子供やお年寄りの他、免疫力が低下している人です。反対に健康で体力のある人の場合、感染しても発症しなかったり、軽い風邪のような症状で済んだりすることもあります。
ノロウイルス感染のチェックポイントと家族が感染したときの対処
ノロウイルスの症状は、風邪や他の食中毒などの症状と似ていることがあります。ノロウイルスかも?と思った場合は、以下の1と2をチェックしてみてください。いずれも当てはまるのであれば、ノロウイルスへの感染が疑われます。
1. ノロウイルスを疑うべき症状
強いおう吐・吐き気・腹痛・37度〜38度前後の発熱
2. 12時間〜48時間以内の行動
- ・牡蠣やホタテなどの二枚貝を生、または加熱不十分で食べた
- ・家庭内や職場・学校でノロウイルスに感染した人がいる
- ・感染した人のおう吐物の掃除をした
これらの条件が当てはまりノロウイルスが疑われる場合は、まずは病院を受診しましょう。
ノロウイルスかも?と思ったら、まずは病院へ
ノロウイルスの症状は、風邪などの症状と似ています。しかし、ノロウイルスは非常に感染力が強いウイルスです。感染者もその周りの人も、十分注意して行動・対処する必要があります。そのため、「ノロウイルスに感染したかも」と思ったら、まずは病院に行って確定診断を受けることが大事です。また、おう吐や下痢の症状がひどい場合、脱水症状・血圧の低下を起こすこともあります。病院でブドウ糖などの輸液を点滴することで、脱水症状を防ぐことができます。
家庭内でノロウイルス感染者が出た際の対処方法
家庭内で感染者が出た場合、これ以上感染者を増やさないためにも手洗いやうがい、アルコール消毒などの感染対策を徹底することが大切です。また、家族が感染者の便、おう吐物を処理する際は、素手ではなく、必ず使い捨てエプロンやマスク・手袋を装着して行いましょう。ウイルスが飛散しないように便、おう吐物を静かに拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(200ppm以上)などで消毒するようにしてください。
ノロウイルスを予防するために、特に気をつけるべきことは?
ノロウイルスにはワクチンはない!だから予防が重要!
ノロウイルスにはワクチンがありません。治療は、「点滴によって脱水を防ぐ」「出ている症状を抑えるための投薬」などの対症療法に限られます。だからこそ、感染しないよう予防することが重要です。
体が弱っているときは、生の二枚貝は食べないで
牡蠣やホタテなどの二枚貝の生食は、ノロウイルス感染のリスクが高いと言えます。疲れていたり病み上がりだったり、体の抵抗力が弱くなっていると思われるときは特に注意を。二枚貝を食べる場合は、生食ではなく火を通した方が安全です。ただし、ノロウイルスは熱にも強いという特徴があります。調理する際は、中心部を85〜90度以上で90秒以上加熱するようにしてください。
生ものを切った後のまな板・包丁は、その都度熱湯消毒を
生ものを切った後のまな板や包丁、生ものに触れた布巾や調理器具は、その都度熱湯で1分を目安に消毒するように習慣づけましょう。
手洗い後の共用タオルに注意して
今はコロナの影響もあって手洗いが習慣化されている人も多いとは思いますが、ノロウイルス予防にも手洗いは有効です。ただ、一つ注意したいのは、共用のタオルです。タオルにウイルスが付着している恐れがあるので、使い捨てのペーパーなどを利用した方が安全です。
人からの感染を防ごう
家庭内や職場で誰かがノロウイルスにかかった場合、感染した人の便やおう吐物などからの二次感染に注意する必要があります。おう吐物を処理する際は、必ずビニール手袋やエプロン・マスクなどを着用するようにして、処理後はすぐに処分しましょう。また、石鹸でしっかり手洗いをし、うがいも忘れずに。
まとめ
ノロウイルスにかかると、おう吐・下痢や発熱など、辛い症状に見舞われてしまいます。また、感染力が非常に強いため、家庭内や職場・学校などで他の人にうつす恐れも。自分自身がかからないようにするためにも、二次感染を防ぐためにも、ノロウイルスにかからないよう日頃からの予防が大切です。特に冬場はノロウイルスの感染が拡大する時期なので、今回ご紹介した予防対策をぜひ心がけてみてくださいね。
小田原博信会理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士 岡村信良
URL: https://kuno.odawaragc.com/
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