つらい夏風邪の原因は?症状とウイルスの種類、予防・対処方法を解説!
病気・症状と予防
2024年05月22日掲載
風邪というと、季節の変わり目や寒くなってきた頃にひきやすいイメージあるかもしれません。しかし、実は意外にも多いのが、暑い季節にひく夏風邪です。ただでさえ暑くて体がだるくなりやすい夏に、熱が出たり頭痛がしたり嘔吐下痢などがあったりすると、とても辛いものですね。そこで今回は、夏風邪の症状や原因の他、種類・予防法などについて、久野銀座クリニック院長 医学博士の岡村信良先生に教えてもらいました。
岡村信良
【監修】小田原博信会 理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士
平成18年北里大学大学院卒、平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに平成20年に入職、その後院長に就任。
夏風邪とは?原因・症状と種類を解説
夏風邪の原因
夏風邪の原因は、通常の風邪と同じくウイルス感染が主な要因です。風邪を引き起こすウイルスの種類は、なんと200種類以上。このうち、アデノウイルス・エンテロウイルス・コクサッキーウイルスが夏風邪を引き起こしやすいといわれています。
夏風邪の症状は?
夏風邪の症状としては、一般的な風邪と同様に鼻水やくしゃみ、喉の痛み、発熱などがあげられます。これらの症状は主にウイルスによる免疫反応によって引き起こされます。
厄介な種類の夏風邪も
アデノウイルス・エンテロウイルス・コクサッキーウイルスに感染すると、以下のような種類の夏風邪にかかることがあります。
アデノウイルス熱
主な症状:喉の痛みや腫れ・咳・結膜炎・頭痛・高熱・下痢など
アデノウイルス熱は、幼児から小学生くらいまでの子供がかかりやすい夏風邪です。喉の痛みや腫れなどの症状が出やすく、38度から39度の高熱が3〜5日ほど続きます。結膜炎の発症を伴うことも。
なお、アデノウイルスは夏にプールでの接触やタオルの共用、水などを介して感染することがあったことから、「プール熱」と呼ばれることもありました。現在では、プールが感染の原因となることは少なく、単に「アデノウイルス熱」と呼ばれるようになっています。
子供に多い夏風邪ですが、大人もかかることがあります。ほとんどの場合は子供を看病しての二次感染です。子供ほどひどくはならないケースが多いですが、まれに原因ウイルスであるアデノウイルスによって肺炎などの呼吸器系疾患や消化器疾患を起こすこともあります。
手足口病(エンテロウイルスまたはコクサッキーウイルス感染)
主な症状:手や足、口などに水疱性発疹・発熱など
エンテロウイルスやコクサッキーウイルスに感染すると、手足口病という種類の夏風邪を発症することがあります。4歳くらいまでの乳幼児に多い疾患で、手足や口周りなどに水ぶくれのような発疹が現れます。熱はさほど高くはなく、発熱しないケースも。
大人の場合は幼少期にすでに感染して耐性ができていることも多いので、発症する人は多くはありません。ですが、手足口病の原因ウイルスは複数あるので、子供の頃にかかっていても大人になってから発症する人もいます。その場合は重症化しやすく、38度以上の発熱やひどい発疹を伴うケースもあります。
ヘルパンギーナ(エンテロウイルスまたはコクサッキーウイルス感染)
主な症状:急な発熱・口内に水ぶくれ発疹ができる・喉の痛みなど
エンテロウイルスやコクサッキーウイルスに感染すると、ヘルパンギーナという夏風邪を発症することがあります。ヘルパンギーナは夏に子供の間で流行しやすい急性ウイルス性咽頭炎で、38度以上の高熱や口内の水ぶくれ状の発疹・喉の痛みなどを引き起こします。
子供に多い夏風邪ですが、免疫力が落ちていたりすると大人でもかかります。その場合は39度以上の発熱など、重症化することがあります。
夏風邪を予防するための対策
夏場に風邪を引くと、寝苦しさや暑さでとても辛いもの。体調管理を怠らず、予防策をしっかりと行いましょう。
夏は意外に体が冷えやすい!体を冷やさない対策を
夏は冷房の影響で体が冷えやすい時期です。体が冷えて体温が下がると、免疫力も低下しやすくなるので、風邪をひきやすくなってしまいます。オフィスや電車・お店の中など冷房が強いことを想定して、さっと羽織れる衣類やブランケットを持っておくのがおすすめです。また、「今日は体が冷えたな」と感じたら、湯船でしっかり体を温めてあげることも大事です。このほか、氷の入った飲料やアイス・かき氷などが美味しい季節ですが、冷たいものの食べ過ぎ・飲み過ぎには注意を。
手洗い・うがいを忘れずに
ウイルスや細菌は手を介して口から体内に侵入することが多いので、こまめな手洗いとうがいが大事です。外出先から帰ったら、手洗いうがいを忘れず行うようにしましょう。
「喉がイガイガする・乾燥している」と感じたらマスクを
ウイルスは乾燥した環境を好むため、空気が乾燥して喉などの粘膜が乾きやすくなっていると、そこからウイルスの感染が起こりやすくなります。「喉に違和感がある」「喉がイガイガする」などの不快感があったら、マスクを着用して喉を保護しましょう。
部屋の換気を
夏は冷房を入れるため、部屋の換気を怠りやすくなります。密閉された部屋はウイルスが繁殖しやすいので、定期的に窓を開けて換気を行い、空気を入れ替えましょう。
栄養バランスの取れた食事を
風邪をひきにくい丈夫な体づくりには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。朝昼晩3食ちゃんと食べること、栄養の偏りがないように肉・魚・野菜・果物・穀類などをバランスよく食べることを意識しましょう。
十分な睡眠を
しっかり睡眠を取らないと、体の疲れが取れにくく、免疫力や体力も落ちやすくなってしまいます。夏風邪を予防するためには、睡眠時間を十分に確保し、体を休めるように意識しましょう。
子どもがいるご家庭は特に注意を
アデノウイルス熱・手足口病・ヘルパンギーナ熱などは、大人がかかることもありますが、基本的には子どもがかかりやすい病気です。子どもがいるご家庭では、「体を冷やしすぎない・うがい手洗いの徹底・部屋の換気」など、ここまでご紹介した予防方法をより徹底するように意識してみてください。子どもへの感染を防ぐことで、大人に感染が広がるリスクも減らすことができます。
夏風邪にかかってしまったら。病院には行くべき?
熱が続いたり吐き気や嘔吐があったりで、日常生活に支障が出るような場合は、最寄りの内科などの医療機関で診察を受けましょう。自宅で対処する際は、無理に体を動かさず、水分摂取をこまめにしてゆっくり休むことが大事です。
食事は、胃腸に負担をかけない消化の良いものを。定番ですが、お粥や温かいうどんは体も温まって消化も良いのでやはりおすすめです。水分を多く摂れる野菜スープも良いでしょう。栄養を摂取しないと回復が遅れてしまうため、食欲がない状態でもできるだけ食事を減らさないように意識してみてください。
なお、子どもの場合は高熱が出ていても、元気があって食事も水分も取れていれば数日の自然経過で熱が下がり、症状が落ち着いていくことがほとんどです。焦らずにまずは経過を観察しましょう。ただし、以下のような場合はすぐに受診をしてください。
- 38.5度以上の高熱が3日以上続いている
- 呼吸が苦しそう
- 嘔吐を繰り返す
- 痙攣を起こしている
- 意識が朦朧としている
- 食事や水分が取れずぐったりとしている
また、生後3か月未満の場合、抵抗力が弱いので38度以上の熱がある場合はすぐに受診しましょう。夜に医療機関を受診すべきか、救急車を呼ぶべきかなどの判断が難しい場合は、全国共通の子ども医療電話相談「#8000」に電話をかけて相談できます。都道府県によって相談時間が異なるので、事前に以下のサイトを確認しておきましょう。
まとめ
夏風邪の原因はウイルス感染であり、症状は通常の風邪と同じです。暑い時期に風邪をひくと辛いですから、日頃から体を冷やさない・手洗いうがいをする・部屋をこまめに換気して空気を入れ替えるなどの対策を。また、免疫力や体力が落ちると風邪をひきやすい状態になるので、食事や生活習慣などの基本を改めることも大事。今年の夏は風邪知らずで健康に毎日を過ごせるよう、今から整えていきましょう。
小田原博信会理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士 岡村信良
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