長引く咳の原因はマイコプラズマ肺炎?症状・原因と予防方法を解説!
病気・症状と予防
2024年06月11日掲載
乾いた咳が出てなかなか治らない……そんな症状がある場合、それは単なる風邪ではなくマイコプラズマ肺炎かもしれません。マイコプラズマ肺炎は、近年増えている呼吸器感染症の一つ。
子どもがかかりやすい病気とされていましたが、実は大人にも感染し、重症化したり合併症を引き起こしたりする恐れがあります。そこで今回は、マイコプラズマ肺炎の症状や原因・危険性・治療法・予防方法などについて、内科・呼吸器内科医の荒牧竜太郎先生に教えてもらいました。
荒牧 竜太郎
【監修】内科・呼吸器内科医
1998年埼玉医科大学 卒業。1998年福岡大学病院 臨床研修。2000年福岡大学病院 呼吸器科入局。2012年荒牧内科開業。
マイコプラズマ肺炎の原因とは?危険性と症状
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマと呼ばれる一般の細菌とは異なる構造を持つ細菌が原因となって引き起こされる呼吸器感染症の一種です。
特に秋から冬にかけて発症しやすく、約40%の子どもが1歳までに、約65%の子どもが5歳になるまでに感染するといわれています。
一般的な肺炎と比べて咳嗽(がいそう:咳き込むこと)が強い場合が多く、軽症から中等症のものが多いと言われていますが、場合によっては重症化することがあります。
マイコプラズマ肺炎にかかる原因は?
マイコプラズマ肺炎にかかる原因としては、マイコプラズマ肺炎の病原体が含まれる患者の咳やくしゃみによって感染する飛沫感染が代表的です。また、細菌が付着した手で口や鼻を触ることによって感染する接触感染によって発症することもあります。
感染力はそこまで強くないため、幼稚園や学校などで感染が広がるケースはそこまで多くありません。しかし、家族内などの接触が多い人同士(濃厚接触)では感染リスクが高まる傾向があります。
マイコプラズマ肺炎の危険性
基礎疾患を持っている人は重症化しやすい
マイコプラズマ肺炎の患者は約8割が子供ですが、大人でもかかることがあります。大人の場合は重症化しやすく、肺炎や気管支炎などの合併症を引き起こすことがあります。特に高齢者や免疫力が低下している人、基礎疾患を持っている人は注意が必要です。
合併症のリスクがある
マイコプラズマ肺炎は、さまざまな合併症を起こすことがあります。喘息を持つ人の場合、喘息発作を悪化させるリスクがあります。その他、神経症状や筋肉痛、関節痛、耳痛など、さまざまな合併症を引き起こすとされています。
抗生物質が効かないケースも
マイコプラズマ肺炎の治療は抗生物質で行われます。しかし、マイコプラズマは一般の細菌とは構造が異なり、一般の細菌に見られる細胞壁を持っていません。そのため、細胞壁の合成を阻害して細菌を殺す、ペニシリン系やセフェム系などの抗菌薬は効き目がありません。
そのため、治療にはマクロライド系と呼ばれる抗菌薬が用いられますが、最近ではこのマクロライド系の抗菌薬が効かないケースが増えているというデータも。マイコプラズマ肺炎の患者数が年々増えているのは、これが一因とも指摘されています。
気づかず人に移しやすい
マイコプラズマ肺炎の症状は風邪と似ているうえに、人によっては症状が軽いことも多々あります。そのため「ちょっとした風邪だろう」と外出してしまい、感染を広げてしまうことがあります。
マイコプラズマ肺炎の症状は?
マイコプラズマ肺炎の症状には、以下のようなものがあります。
乾いた咳
乾いた咳が長引きます。重症化すると激しい咳を伴うことがあります。
軽度の発熱
熱が出ることもありますが、一般的には軽度です。高熱が出たとしても、長引くことはあまりありません。
喉の痛み
喉の痛みや炎症がある場合があります。
疲労感・倦怠感
疲れがなかなか抜けず、常に身体がだるく、倦怠感を感じることがあります。
呼吸困難
重症化すると呼吸困難に陥ったり、胸部に強い痛みが生じたりすることがあります。
マイコプラズマ肺炎と風邪・百日咳との違いは?
マイコプラズマ肺炎と風邪の違い
マイコプラズマ肺炎と風邪の違いは、原因となる病原体にあります。風邪はウイルスによって引き起こされる場合が多いですが、マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマと呼ばれる細菌によって引き起こされます。また、風邪に比べてマイコプラズマ肺炎は、症状が長引きやすいという特徴があります。
マイコプラズマ肺炎と百日咳の違い
マイコプラズマ肺炎の特徴的な症状である、長引く乾いた咳。「咳が続く」という意味で似ているのが、百日咳です。百日咳は百日咳菌によって引き起こされる疾患です。風邪の様な症状からはじまり、特徴的なコンコンコンという咳が出て、その後ヒューと言う短い吸気の咳が3週間ほど続くのが特徴。このため、咳が長引き呼吸が苦しくなることもあります。
マイコプラズマ肺炎と百日咳は見分けがつきにくいので、咳が続く場合は診察を受けて、適切な検査や治療を受けましょう。
マイコプラズマ肺炎の予防・治療方法は?
マイコプラズマ肺炎の予防方法
マイコプラズマ肺炎の予防で重要なのは、原因となる細菌を体内に入れないようにすることです。飛沫・接触で体内に入ることがほとんどなので、以下のような習慣を身につけることで細菌の侵入を予防することができます。
マスクを着用する
外出時や人混みの中ではマスクを着用し、飛沫感染を防ぎましょう。
人混みや密閉された空間を避ける
多くの人が集まる場所や換気の悪い場所を避けることで、感染のリスクを下げることができます。
手洗い・うがいをしっかり行う
万が一細菌が体内に侵入しても、体の免疫力が高ければ発症を抑えることができます。十分な睡眠時間を確保し、免疫力が下がらないようにしましょう。
充分な睡眠をとる
栄養バランスの取れた食事をしっかり摂ることも、免疫力を維持するのに欠かせない要素です。栄養バランスの取れた食事を心がけ、免疫力を下げないように気を配りましょう。
栄養バランスの取れた食事をとる
栄養バランスの取れた食事を心がけ、免疫力を下げないように気を配りましょう。
マイコプラズマ肺炎にかかったら?治療方法を紹介
マイコプラズマ肺炎の症状は風邪と似ていることから、風邪と自己判断して治療が遅れ、重症化してしまうことがあります。市販の風邪薬などを飲んでも咳が止まらない・激しい空咳が続くという場合は、早めに病院で診てもらうようにしましょう。病院では、血液検査やレントゲンで診断を行います。マイコプラズマ肺炎と診断されたら、その後は抗菌薬による服薬治療で経過を観察します。
まとめ
かつては小さな子供に多いと言われていたマイコプラズマ肺炎ですが、最近では大人の発症も多くみられます。風邪や百日咳など、似たような症状が出る別の疾患もあり、見分けがつきにくいのも、この病気の厄介な点です。症状を早く治すためにも、人にうつさないようにするためにも、乾いた咳が長引く場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。
内科・呼吸器内科医 荒牧竜太郎
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