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骨粗鬆症ってどんな症状?予防法と治療法を解説

「骨粗鬆症」という言葉を聞いたことがある方は多いかと思います。骨粗鬆症になると、骨の量(カルシウム・マグネシウム・リンといった骨を構成する成分の量のこと)や骨密度が低下して骨がもろくなり、転倒や骨折のリスクが増加。寝たきりにつながることもある、実は怖い病気です。特に女性は、閉経後、ホルモンバランスの変化とともに骨粗鬆症にかかりやすくなるとも言われています。

ですが、早いうちから適切な栄養摂取や運動・生活習慣の改善などを取り入れることで、骨粗鬆症は予防・改善することが可能です。そこで今回は、骨粗鬆症の症状や予防、治療方法について、久野銀座クリニック院長 医学博士の岡村信良先生に詳しく教えていただきました。

岡村信良

【監修】小田原博信会 理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士

平成18年北里大学大学院卒、平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに平成20年に入職、その後院長に就任。

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骨粗鬆症とは?

腰を抑える女性

骨粗鬆症とは、骨の量や骨密度が減少して弱くなった状態のことを指します。人間の骨の量や骨密度は、子供から成長するにつれてどんどん増えていき、20歳前後でピークを迎えます。その後、加齢とともに骨の量や骨密度は減少していきますが、減少の程度は人それぞれ。骨粗鬆症になってしまう人はその減少の程度が大きく、骨がスカスカで脆くなり、ちょっとしたはずみで骨折などの大ケガにつながってしまうのです。

骨粗鬆症の症状とは?

骨粗鬆症それ自体には痛みなどの症状はありません。しかし、転んだり尻餅をついたりなど、ちょっとしたことで骨が折れやすくなります。中でも骨が折れやすいのは、背骨や太ももの付け根の骨・手首の骨など。骨の量や骨密度が減って気づかないうちに骨折していたり、病院で診察を受けて初めて骨折に気づいたりするケースも珍しくありません。

骨粗鬆症の怖さは?

骨粗鬆症になると、以下のようなリスクが生じやすくなります。

骨折のリスクが高まる

骨粗鬆症になると、軽い衝撃や転倒でも骨折しやすくなります。特に、背骨や太ももの付け根の骨・手首の骨などの骨折がよく見られます。これらの骨折によって日常生活が不便になるだけでなく、歩行が難しくなったり、骨折をきっかけに寝たきりになったりすることさえあります。また、一度骨折すると、次の骨折が起きるリスクが高くなります。

背骨の変形を招くことも

骨粗鬆症によって背骨がもろくなると、背骨が圧迫骨折を起こす可能性があります。これにより、身長が縮んだり、背中が丸くなったりすることがあります

慢性的な痛みや動きの制限が出ることも

骨粗鬆症による骨折や骨の変形が起こると、慢性的な痛みに苦しんだり、身体の動きが制限されてしまったりします。痛みや動きの制限によって外出や趣味が楽しめなくなるのはもちろん、日常生活を満足に送れなくなってしまう恐れも。

骨粗鬆症になるのはどうして?

骨のイラスト

骨粗鬆症は、以下のような原因で引き起こされます。

骨の吸収と形成のバランスが崩れる

骨は、「溶けて壊される(骨吸収)・新たに作られる(骨形成)」を繰り返しています。しかし、骨粗鬆症ではこのバランスが崩れ、骨の吸収が増加し、骨の形成が不足します。結果として、骨の密度が低下し、もろくなります。

ホルモンバランスの変化

ホルモンは骨の吸収や形成に欠かせない要素のひとつです。更年期などでエストロゲン(女性ホルモン)の減少が起こると骨の吸収が増加し、骨粗鬆症のリスクが高まります。そのため、男性より女性の方が骨粗鬆症になりやすいとされています。

加齢による骨の変化

年齢とともに、骨の形成が遅くなります。また、骨の構造や組織も変化して骨密度が低下します。このため、高齢者は骨粗鬆症のリスクが増加します。

栄養不足

骨の健康を保つためには、カルシウムやビタミンDなどの栄養素が重要です。これらの栄養素が不足すると、骨の形成が妨げられる可能性があります。

運動不足

運動は骨の健康を維持するために重要です。適度な運動を行わないと骨の形成が減少し、骨の密度が低下することがあります。

疾患の影響

関節リウマチ

関節リウマチは全身の炎症性疾患です。関節リウマチになると炎症性物質が骨を破壊する働きを促し、骨粗鬆症を引き起こすことがあります。また、リウマチの治療にはステロイドが使われます。ステロイドには骨を弱める働きがあるため、さらに骨粗鬆症になりやすくなるとされています。

糖尿病

糖尿病になると血糖値を下げるインスリンの働きが低下します。インスリンの働きが低下すると骨の新陳代謝も下がり、骨粗鬆症のリスクが高まります。さらに、チアゾリジン薬という血糖値を下げる薬も骨密度を低下させるため、骨粗鬆症リスクを上げます。

医薬品の影響

上記の関節リウマチや糖尿病の薬のほか、医薬品によって骨粗鬆症のリスクが高まることがあります。代表的なのは、抗てんかん薬・ヘパリン製剤・ワルファリン・性腺刺激ホルモン(GnRH)作動薬などです。

50代以上の人は要注意!骨粗鬆症のチェックリスト

腰痛の女性の画像

骨粗鬆症のリスクが高くなるのは、更年期に差しかかってからとされています。50代以上で以下のような症状がある方は、骨粗鬆症のリスクが高いと考えられます。早めに予防を始めましょう。

  • 若い頃から3センチ以上縮んでいる
  • 立ち上がる時に背中や腰が痛む
  • 背中や腰が曲がっている
  • 重いものを持つと腰が痛い
  • 閉経を迎えた
  • あまり外出をせず、運動もしない
  • たばこやお酒をよく嗜む
  • 食が細い

上記のチェックリストに当てはまる項目が多い方は、骨粗鬆症のリスクが高いと考えられます。適切な治療やケアを受けることでリスクを減らすことができるので、医療機関に相談してみてください。

なお、女性は骨粗鬆症のリスクが男性より高いとされています。女性ホルモン・エストロゲン分泌が低下し始める50歳以上になったら一度検査を受けて自分の状態を確認すると良いでしょう

受診外来は整形外科が適しています。ただし、内分泌・代謝の異常によって起こる場合もあるため、内科や婦人科などでも診ることもあります。どこで受診すればいいかわからないという方は、かかりつけ医に一度相談してみてください。

骨粗鬆症の診断と治療方法は?

骨密度測定のイラスト

骨粗鬆症の診断は、レントゲン検査などで行われます。このほか、骨の量や骨密度を測定するデキサ法(2重エネルギーX線吸収法)・超音波法・MD法・CT法といった詳しい検査もあります。また、血液検査でわかることも。

治療としては、骨密度の改善を行うのがメインです。飲み薬や注射による薬物療法や、食事療法・運動療法などを組み合わせて治療に当たっていきます。

骨粗鬆症にならない・悪化させないために!予防方法

骨に良い食材の画像

骨粗鬆症予防のために、しっかり摂りたい栄養素

骨粗鬆症を予防し、骨の健康をサポートするためには、食事に気をつけることが重要です。骨粗鬆症の予防と骨の健康を促進するため栄養素について紹介します。

カルシウム

カルシウムは骨の主要な成分であり、骨密度を維持するために重要です。乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)や葉野菜(ほうれん草、小松菜)、豆腐などに多く含まれています。

ビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける栄養素です。日光によって体内で生成される他、サーモンやマグロなどの魚類・卵黄・キノコなどにも含まれています。

タンパク質

タンパク質は骨の形成や修復に欠かせない成分です。肉・魚・豆類・大豆製品などから摂取することができます。

ビタミンC

ビタミンCはコラーゲンの合成をサポートし、骨の組織の健康を保ちます。緑黄色野菜や柑橘類などに含まれています。

カリウム

カリウムは体内の酸性度を調整し、骨の健康をサポートします。バナナ・じゃがいも・ほうれん草などに多く含まれています。

マグネシウム

マグネシウムはカルシウムの代謝をサポートする重要な栄養素です。穀物・ナッツ・種子類・ほうれん草・ケールなどの葉野菜に含まれています。

ビタミンK

ビタミンKは骨のタンパク質の生成に関与し、骨の健康を促進します。葉野菜やブロッコリーなどに含まれています。

健やかな骨を保つには運動も大事!

骨粗鬆症を予防するためには、適切な運動を定期的に行いましょう。運動は骨の健康を促進し、骨密度を維持するのに役立ちます。おすすめの運動は、有酸素運動や筋トレ・バランス運動など。有酸素運動の代表例は、ウォーキング・ジョギング・サイクリング・水泳などです。有酸素運動を行うことで、骨粗鬆症のリスク低減につながります。

また、重量を使った筋トレや自分の体重を利用したエクササイズ(腕立て伏せ、腹筋など)を行うのもおすすめです。負荷をかけることで骨を刺激し、骨の形成を促進することができます。バランス運動は、身体のバランスを改善し、転倒や骨折のリスクを減らすのに役立ちます。ヨガやバランスボールを使ったエクササイズなど、無理のない範囲で試してみてください。

なお、負荷が大きいほど骨を強く刺激することができますが、無理をすると怪我や事故につながります。運動習慣がない場合は特に、少し息が上がる程度の運動からはじめてみましょう

禁煙と過度のアルコール摂取は控えよう

喫煙と過度のアルコール摂取は、骨の健康に悪影響を与える可能性があります。禁煙を心がけ、アルコールの採り過ぎにも注意しましょう。

日光浴もおすすめ

日光浴をすることで、体内でカルシウムの吸収を促すビタミンDが生成されます。1日15分ほどは日光に浴びる時間を作りましょう。

十分な睡眠を

骨を成長させるには、睡眠中に多く分泌される成長ホルモンがカギとなります。質の良い睡眠が取れないと、成長ホルモンの分泌が弱まり、骨粗鬆症のリスクが高くなります。個人差もありますが、毎日6〜8時間ほどの睡眠時間を確保することを心がけてください。

まとめ

骨粗鬆症になると、身体に慢性的な痛みがでたり、動きが制限されたりして、日常生活に支障が出てしまいます。また、骨折のリスクが高くなり、最悪の場合は寝たきりになってしまう恐れも。骨粗鬆症にならないためには、早い段階から予防に取り組むことが大切です。食事で栄養をしっかり摂る・適度な運動習慣をつけるなど、食習慣・生活習慣の改善に取り組んでみてください。

小田原博信会 理事長 久野銀座クリニック院長 医学博士 岡村信良

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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