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過食症とは?過食の原因と治療法・病院に相談する目安を解説!

過食症は、短期間に大量の食べ物を摂取することが特徴の摂食障害の一種です。単なる食べ過ぎとは異なり、食べ過ぎた後に強い自己嫌悪や罪悪感を覚え、日常生活にも支障をきたすことがあります。この記事では、過食症の原因、治療法、そして病院に相談する際の目安について、ライトメンタルクリニック院長 精神科専門医の清水聖童先生に教えていただきました。

清水聖童

【監修】ライトメンタルクリニック

横浜医療センター・横浜市立大学病院にて初期研修。国立精神・神経医療研究センター病院勤務、tDCS研究に従事。都内精神科・心療内科クリニック勤務し心理療法を研修。さくらライフクリニックにて日中は総合診療に携わりつつ、令和2年11月ライトメンタルクリニック開設・院長に就任。

過食症とは?単なる「食べ過ぎ」との違いって?

過食症は、短期間に大量の食べ物を一気に摂取する行動と、食欲をコントロールできない状態が続く摂食障害の一種です。過食後に強い自己嫌悪や罪悪感を覚えることが多く、心身にさまざまな影響を及ぼします。患者の9割は女性で、思春期から青年期にかけて好発します

過食症は単なる「食べ過ぎ」とは異なり、心理的、生理的な要因が複雑に絡み合った深刻な病気です。過食症の疑いがある場合は、専門医の診断と治療が必要です。早期に適切な治療を受けることで、過食症からの回復が期待できます。

過食症の特徴とは

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大量の食べ物を一気に詰め込む

短時間で通常よりもはるかに多くの食べ物を食べてしまいます。例えば、テーブルに乗り切らないほどの量のごはんや菓子パン・お惣菜・お菓子・カップラーメンなど、普通は複数人で食べる量を一人で一気に食べます。「今日はちょっと食べ過ぎてしまったな」というのとは量のレベルが違うのです。そして、このような過食のエピソードは少なくとも週に1回、3カ月以上続きます

食べる欲求をコントロールできない

過食症の「食べたい」という欲求はコントロールがききません。そのため、食べるのを止めることができない、またはどれだけ食べるかをコントロールできないことがほとんどです。「食べなければいけない」という切迫感に襲われることもあります

隠れて一人で食べる

過食症の人は自分が過食する量が異常だという自覚があるので、過食を他人に見られることを避けるために隠れて一人で食べることがほとんどです。家族が買っておいた食べ物をこっそり食べたり、自分で買ってきた大量の食べ物を自室で食べたりするといった行動をするのが特徴的です。

満腹を超えて食べ続ける

満腹感を感じても食べ続けるのも、過食症の特徴の一つです。大食いの場合は満腹になって食欲が満たされればそこで食べるのをやめられますが、過食症の場合は満腹感を感じても食べることをやめられず、体の調子が悪くなるまで続けてしまうことがあります

過食症の原因は?

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過食症の原因は多岐にわたります。以下はその主な要因です。

生物学的要因

食欲を調節するホルモンの不均衡が過食の原因になることも。特に、過度なダイエットや食事制限が長期化すると、食欲を調節するホルモンのバランスが崩れ、過食を引き起こすことがあります

心理的要因

精神的ストレス

仕事や人間関係などのストレスが過食を引き起こすことがあります。多くの人は、ストレスを感じると食べ物で気持ちを紛らわそうとします。これは「感情的な食事」と呼ばれ、特に高脂肪や高糖質の食べ物を摂取することが多い傾向があります。また、ストレスが増すと、体はコルチゾールというストレスホルモンを多く分泌します。コルチゾールは食欲を増進させ、高カロリーな食べ物を求めるように働くと言われています

「ストレスで暴飲暴食をしてしまう」というのは誰にでもあることかもしれません。たまにであればさほど問題はありませんが、こういった状態が続くと過食症に発展する恐れがあります。

感情的トラウマ

過去の感情的トラウマは、過食の強力なトリガーとなりえます。トラウマを経験した人は、その感情を抑え込むことが多く、これが感情的な食事行動を招くと考えられます。食べ物を使って感情を抑え込むことで、一時的に安心感や満足感を得ようとするのです

また、トラウマを経験すると、自己評価が低くなりがちです。これが過食を引き起こし、自己嫌悪や罪悪感を感じることでさらに過食が悪化するという悪循環に陥ることもあります

うつ病や不安障害

うつ病や不安障害といった精神的な問題は、過食症と関連性が深いと言われています。うつ病が原因で過食症になることもあれば、過食症が原因でうつ病を併発することもあります

環境的要因

極端なダイエット

極端なダイエットが過食の要因になることも。長期間の食事制限で栄養素が極端に不足し、一時的な飢餓状態に陥ることで食欲が強く刺激されます。そして、その反動で食欲を止められなくなってしまうのです。また、厳しいダイエットを続けることで、食事に対する強い執着や罪悪感が生まれ、これが過食の原因になることもあります。

社会的プレッシャー

痩せていることが美徳とされる社会的圧力が、かえって過食行動を誘発することがあります。最近ではSNSの影響で「痩せていないといけない」「(実際には太っていないのに)自分は太り過ぎている」という考えに取り憑かれてしまい、過度なダイエットを始めて摂食障害や過食症を起こすことも

「いつでも食べ物が買える」……食物確保のしやすさ

現代はコンビニエンスストアにいけば、いつでも簡単に食べ物が手に入る時代です。たとえ家に食べ物を置いていなくても、時間に関係なく、いつでも食べ物を買うことができます。こうした環境も、罹患率をあげてしまう一因であるとされています。

過食症の病院での治療法

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過食症の治療は、個々の状況に応じた多角的なアプローチが必要です。どのような治療が行われるかは患者によっても病院の方針によっても異なりますが、一般的には以下のような治療方法が用いられます。

心理療法

認知行動療法(CBT)

認知行動療法(CBT)は、過食の原因となる思考パターンや行動を変えるための治療法です。まず自分がどんな時に過食してしまうのか、その背景にある考え方や感情をよく観察します。次に、その考え方が本当に正しいのかどうかを見直し、より現実的でポジティブな考え方に変えていきます。

例えば、過食症の人は、ストレスを感じたり、自分に自信が持てなかったりするときに、食べ物を過剰に摂ることで一時的に気分を落ち着けようとすることがあります。そのような心理状態を、「自分にはいいところもたくさんあるし、過食はその価値を下げる行動だ」という考えに変えるようにします。

そして、ストレスを感じたときに食べ物以外の方法で気持ちを落ち着ける練習をします。たとえば、リラクゼーションの技術を学んだり、趣味に取り組んだりすることで、健康的な対処法を身につけます。

対人関係療法(IPT)

対人関係療法(IPT)は、人間関係の問題が過食に与える影響を改善するための治療法です人間関係が過食症に与える影響を見直し、改善することを目的としています。

過食症の人は、家族や友人、同僚との関係がうまくいかないことが原因で、過食に走ってしまうことがあります。たとえば、誰かとけんかをしたり、孤独を感じたりすると、そのストレスを「食べること」で解消しようとすることがあります。

IPTでは、まず患者と一緒に、どの人間関係がストレスの原因になっているのかを特定します。その上で、どうすればその関係を改善できるのかを考え、実践していきます。たとえば、感情をうまく表現する方法や、相手とのコミュニケーションを改善するためのスキルを学んだり。また、家族構成の変化や職場での役割の変化にうまく適応するためのサポートも行います。

薬物療法

抗うつ薬

うつ病や不安障害、月経前不快気分障害(PMDD)が合併する場合には、抗うつ薬が症状改善に役立つことがあります。ただし、過食症単体に対する抗うつ薬の有用性は、最新のガイドラインでは否定されています。

抗精神病薬

自己破壊衝動を伴うようなケースにおいては、抗精神病薬が少量用いられることがあります。

食欲抑制剤

食欲を抑制するために、医師の指導の下で食欲抑制剤が使用されることがあります。

栄養指導

専門家による食事指導として、栄養士やダイエットコーチが健康的な食生活をサポートします。一人一人のライフスタイルや状況に合わせた指導が行われます。

サポートグループへの参加

同じ問題を抱える人々や過食症の経験者と交流することで、孤独感を減らし、回復を助けられることがあります。

過食症で病院に相談する目安は?

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病院を受診するべき目安は?

過食症の疑いがある場合、以下のような症状が見られたら専門医に相談することをおすすめします。早期に適切な治療を受けることで、過食症からの回復が期待できます。

  • 短期間に大量の食べ物を食べてしまうエピソードが頻繁に起こる
  • 過食後に強い自己嫌悪や罪悪感を覚える
  • 体重増加や健康状態の悪化が見られる
  • 仕事や私生活など、社会生活に支障をきたしている

過食症の人にどう向き合うべき?

家族や周囲の人に過食症が疑われる場合は、まずは本人が困っている箇所にフォーカスしてコミュニケーションを取るようにすることが大事です。放置したり怒ったりするのはよくありません。過食症は病気であることを理解し、解決に向けた対処を検討しましょう。

とはいえ、過食症は自分自身や周りの力で解決するのがむずかしい病気です。また、過食症単体の問題ではなく、過食症を引き起こしている原因があったり、他の精神疾患が絡んだりしていることもあります。自己対処では解決していないことも多いので、上記のような症状が見られる場合は専門医への受診が勧められます

しかし、本人が病院に行くことを嫌がることもよくあります。そういった場合は、まずは病院を受診することで改善の可能性があることを伝えましょう。それでもまだ受診に抵抗がある場合は、「なぜ抵抗があるのか」その理由を明確にし、その理由を検証しながら見守ってあげることが大切です。

まとめ

過食症は、心理的、生物学的、環境的要因が複雑に絡み合った摂食障害です。うつ病や不安障害・ストレスなどの精神的な健康問題と関連していることも多くあります。過食症は、ただの食べ過ぎとは根本的に異なります。早期に原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。過食症の症状に悩んでいる場合は、専門医やカウンセラーに相談し、必要なサポートを受けましょう。

【監修】ライトメンタルクリニック 清水聖童

※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。

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