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わき汗が保険で治る!? 最新治療と、自分でできるわき汗ケア
病気・症状と予防
2015年07月16日掲載
汗染みで着たい洋服が着られなかったり、電車のつり革で人目が気になったり、大事なプレゼンのときに限ってわき汗が気になってしまったり…。そんなわき汗に悩まされている人は、意外に多くいるのではないでしょうか。 そのような方のために2012年から病院で、わき汗治療が保険適用になりました。今回は、病院で受けられるわき汗の最新治療と、自分でできるわき汗ケアをご紹介します。
わき汗診断チェックリスト
まずは、次のチェックを行ってみてください。
- 両わきに同じくらい汗をかく
- わき汗で生活に支障が生じている
- 週1回以上わき汗を多くかく
- わき汗は25歳以前からだ
- 同じような症状の家族がいる
- 睡眠時はわき汗がひどくない
上記の項目のうち2つ以上当てはまり、過剰なわき汗に半年以上、悩まされている人は、わきの下に異常な汗をかく病気「腋窩多汗症(えきかたかんしょう)」かもしれません。
「腋窩多汗症<原発性局所多汗症>」とは、特別な原因となる病気がないのに、わきの下の発汗が週1回以上起こり、日常生活に不便を感じる症状です。手足や頭部も多汗症はありますが、わきの下の多汗症をこう呼びます。多汗症に悩む人は、思春期から中年世代までの社会的活動が盛んな年代に多いといわれています。
男女の比率はほぼ同等で、明らかな原因が存在しない「原発性多汗症」と、何らかの病気や使用している薬が原因となる「続発性多汗症」に分けられます。続発性多汗症は、原因となる病気を先に治療する必要があります。
わき汗のメカニズム
わきの下は、もともと汗腺が多いうえに、気温や運動からもたらされる温熱刺激による発汗と、緊張やストレスからもたらされる精神的な刺激の両方で発汗が促進されるため多汗が起こりやすい部位です。
また、精神性の発汗は、だれにでも起こりうることですが、汗は自分の意思でコントロールできるものではなく、
「大事なプレゼンになると汗が出始め、意識するとさらに出てしまう」
「汗のにおいが周りに不快感を与えているのでは…と考えると、さらに汗をかいてしまう」など、心理的な要因が作用し、必要以上に多くのわき汗が出て、日常生活に支障をきたしている人も少なくありません。
保険でできるわき汗の治療とは…
2012年から重度の「腋窩多汗症<原発性局所多汗症>」と診断されると、健康保険が適用されるようになりました。多汗症の重症度は、「どれくらい汗が気になるか」「どれくらい日常生活に支障があるか」という視点で診断されます。
まず病院の治療では、塗り薬が処方され、これで7~8割の人が改善します。けれども塗り薬で効果がない人には、これまでは神経を切断したり、汗腺を除去したりする手術が行われていました。ところが最近は、手術という治療法でなくとも、ボトックス®注射でわき汗の治療ができるようになりました。
ボトックス®注射は、美容のシワ取りでも知られていますが、世界80か国以上で認可されている治療法です。ボトックス®は、ボツリヌス菌がつくる天然のタンパク質から精製された薬で、これをわきの下に直接注射することで交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックし、発汗を抑えます。
注射にかかる時間は、診断や検査の時間を除けば、5~10分程度です。
注射後は、ほとんど副作用もなく1回注射すると4~9か月持続するので、年1~2回の治療で汗を抑えることができます。この注射は、日本でもこれまでに、まぶたや顔面けいれん、肩や首の筋肉の張りによる異常姿勢、脳卒中に由来する手足のつっぱりの治療としても使われてきたもので、安心して行える治療です。
この治療が健康保険で1回約3万円(2015年2月現在、3割負担の場合、診療費は別)で行えます。
腋窩多汗症か、腋臭症かは、自分では判断しにくいもの。また、腋窩多汗症を治療することで、汗の臭いが軽減することはよくあることです。まずは、信頼できる医療機関に相談してください。
自分でできるわき汗ケア
わき汗を抑えるツボ
人間の体には様々なツボがありますが、その中にはわき汗を抑えてくれるツボがあります。日常生活で、わき汗を少しでも抑えたいと思った時に即効性のあるツボをご紹介します。
《胸》両乳首の上あたりから両わきを結ぶ線上の位置を両手で覆うようにして圧します。
《わきの下》わきの下にある肋骨の一番上の部分を握りこぶしで押し当てて、ぐいぐいと圧します。
また、わき汗は自律神経と密接に関係しています。自律神経を自分でコントロールすることは難しいですが、呼吸法や脳に異なる情報を入れるなどで副交感神経を優位に働かせることで緊張やストレスを緩和させてくれます。
「呼吸法」でリラックス
いつでも、どこでもできるセルフケアとして「呼吸法」がオススメです。まず目を閉じて4秒かけて息をゆっくりと鼻から吸いこみます。そして、ゆっくりと4秒かけて鼻から吐く、をくり返します。気分が和らぐまで繰り返すと良いでしょう。
脳に異なる情報を入れる
お気に入りの音楽を聴いたり、お香やアロマなどの香りをかいだり、脳に全く異なる情報を入れてあげると、いい作用を及ぼします。
取材・執筆
増田美加
医療ジャーナリスト
監修
藤本智子先生
都立大塚病院皮膚科医長
東京医科歯科大学皮膚科臨床講師
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。