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猛暑で急増中!大人の「あせも(汗疹)」
病気・症状と予防
2015年06月18日掲載
あせも(汗疹)というと、子どもによく見られる疾患というイメージがありますが、近年の猛暑と節電ブームの影響で、大人でもあせもに悩む人が増えています。
特に大人の場合は症状がひどく、治りが遅い場合がありますので、たかがあせもと油断せず、あせもをつくらない生活を心がけましょう。
あせもって何?
暑い季節になると見られるあせもは、医学的には3種類に分けられます。
紅色汗疹(こうしょくかんしん)
一般的に“あせも”とよばれる、赤いあせものことです。小さな赤いブツブツでかゆみがあり、発汗するとチクチクと刺すような感覚があります。
水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)
白いあせもとよばれ、直径1~3mm程度の小さな水ぶくれがたくさんできます。かゆみがないなど自覚症状が少ないため、数日のうちに自然に治っていることが多いでしょう。
深在性汗疹(しんざいせいかんしん)
赤みやかゆみはほとんどありませんが、体内に熱がこもって熱中症を引き起こすことがあります。
あせもができる原因
汗には体温調節という大切な働きがあります。汗が蒸発するときに体の熱を奪うことで、体がオーバーヒートすることを防いでいるのです。
しかし、高温の場所に居続けたり、激しい運動をすることによって大量の汗をかき続けると、汗の出口が詰まってしまいます。出口から外へ出られなくなった汗は、表皮という皮膚の表面にある0.2mmほどの膜のなかにもれだします。汗には、ミネラルなども含まれていますから、もれた表皮のところで炎症が起こり、あせもとなってしまうのです。
なぜあせもは子どもに多い?
人間の体には汗のでる汗腺が約230万個あるとされていますが、大人も子どももほとんど同じ数。つまり体の小さな子どもでは、大人に比べて汗腺の密度が非常に高いため、あせもが発症しやすい状況にあるのです。
汗腺はほぼ全身に分布していますが、特にあせもができやすいのは、首まわりやわきの下、ひざの裏やひじの内側、お腹まわりや足の付け根などです。女性なら乳房の下にもできやすいでしょう。いずれも、汗をかきやすく、熱気や湿気がこもりやすく、皮膚がこすれて摩擦を受けやすい場所によくできます。
あせもの予防法
ますます暑くなる夏に向けて、あせもをつくらない生活を心がけましょう。
①汗をかいたらすぐにふきとり、肌を清潔に保つ
汗をかいたら、シャワーを浴びたり、すぐにふきとるようにしましょう。汗をふくときは、乾いたタオルよりも、水でぬらしたタオルのほうが、汗の成分をよくふきとれます。またふきとる際はゴシゴシこするのではなく、押さえるようにふくと、皮膚のバリア機能を守ることができます。
②通気性・吸湿性のよい服を着る
汗をかいたら着替えることが大切ですが、仕事中などは着替えられない場面も多くあります。最近は吸汗速乾素材を使用したインナーなども数多く販売されていますので、それらを利用して、濡れたままの状態が続かないように気をつけましょう。
③屋内であればエアコンを使用し、高温多湿の環境を避ける
風通しの良い、涼しい環境にいれば、あせもができることはまずありません。
エアコンを適度に使って、涼しい環境を心がけましょう。湿度は50%程度を目安にするとよいでしょう。
④お風呂やシャワーはぬるめにし、石鹸を使いすぎない
たっぷり汗をかいたからといって、石鹸をたっぷり使って、ナイロンタオルでゴシゴシと体を洗うのはNG。皮膚のバリア機能が弱まって炎症を起こしやすくなります。同じく熱いお湯につかったりシャワーを浴びたりするのも避け、ぬるめのお湯で汗を流しましょう。
⑤ベビーパウダーを使う
赤ちゃんにはよく使われるベビーパウダーは、大人のあせも予防にも使えます。ベビーパウダーには汗を吸着して皮膚を乾燥させる働きがありますから、風呂あがりなど清潔な状態の皮膚にして軽くはたいておくといいでしょう。ただし、あせもができてしまったときは、汗の出口をふさぐ可能性もありますから、使用は避けてください。
あせもの治し方
かゆみのない、水晶様汗疹(白いあせも)はそのままでも自然と治ります。
一方、紅色汗疹(赤いあせも)がたくさんできた場合は、塗り薬で治します。あせもをかきむしることでさらに悪化させてしまいますから、かゆみを抑えることが大切です。
かゆみが軽い場合は、上記のスキンケアに加え、あせも用の軟膏が多く市販されていますから、まずはそれで様子をみましょう。
かゆみが強い場合は、ステロイド外用剤を使うといいでしょう。市販されているステロイド外用剤には、効果の強さによって、weak(弱い)、mediam(普通)、strong(強い)の3つに分けられます。薬局で薬剤師と相談の上、自分に合ったものを選び、使用上の注意をしっかりと守って使います。ステロイド軟膏を数日続けても治らない場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。
あせもが悪化すると
あせもを放置してかきむしると、炎症が悪化しさらに治りにくくなってしまいます。
とびひ
あせもをかきむしったり、そのまま汗をかき続けたりすると、連鎖球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が皮膚の表面で繁殖する場合があります。かゆみをともなう水ぶくれができ、それが破れるとほかの場所や他の人にも、まるで”飛び火”のように簡単にうつってしまうことから「とびひ」と呼ばれます。子どもに多い感染症ですが、最近では大人にもみられることがあります。
とびひの症状がみられたら、すぐ皮膚科を受診しましょう。抗生物質の入った軟膏や飲み薬で治療します。
あせものより(エクリン汗孔炎)
あせもをかきむしったことによって、黄色ブドウ球菌が汗の出口から皮膚の深いところまで侵入、小豆大ほどの硬いしこりができ、少しずつ大きくなって赤くなり、盛りあがっていきます。この場合もすぐ皮膚科へ。抗生物質の飲み薬で治療します。特に2歳以下の乳幼児に多く見られる症状ですが、大人もできることがあります。
本当にあせも?重症化しやすい「汗荒れ」
あせもと間違えやすいものに、「汗荒れ」があります。汗をかいた後そのまま放置しておくと、汗の水分が蒸発、皮膚の上に残ったミネラルやアンモニア成分が刺激となって、かゆみや赤みをともなった炎症を引き起こします。いわゆるかぶれの一種で、かきむしって重症化しやすいのが特徴です。
なりやすいのは、皮膚が薄く乾燥しているところや、洋服との摩擦が起こりやすいところ。首まわりやお腹まわりは、特になりやすいところだといえます。
汗荒れはこまめに汗をふくことで予防できますから、汗をかいたら早めにふきとるようにしましょう。
監修
南森町いしだ皮フ科 院長 石田祐哉先生
2003年京都大学医学部医学科卒業。皮膚科専門医。
TEL:06-4801-0177 公式サイト:http://osaka-ishidaclinic.com/
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。