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コンタクトレンズで失明!? アカントアメーバ角膜炎
病気・症状と予防
2015年03月19日掲載
初めてコンタクトレンズを購入したときは、誰でも眼科医の処方をしっかり守り、正しい手順で装用するのですが、慣れてくると初心を忘れてしまいがち。無理な装用や、自己流の雑な管理が続くと、目には大きな負担がかかり、目の病気につながります。
中でも近年増加しているのが、「アカントアメーバ角膜炎」。角膜が溶解して失明に至ることもある、恐ろしい目の病気です。
身近に潜むアカントアメーバの恐怖
アカントアメーバ角膜炎の感染者のおよそ90%がコンタクトレンズ装用者と言われています。
「アカントアメーバ角膜炎」の原因であるアカントアメーバは、土や水道水の中など身近なところに常在している、目に見えないほどの原生動物です。
アカントアメーバは健康な角膜には侵入できないため通常は無害です。しかし、コンタクトレンズを装用していると角膜に傷がつきやすくなり、その傷からアカントアメーバが侵入します。また、アカントアメーバは、細菌をエサにしているので、保存液の交換や擦り洗いを怠って消毒ができていなかったり、レンズケースを定期的に交換していないなど、レンズやレンズケースが細菌に汚染された状態で放置すると、大繁殖して角膜に感染しやすくなるのです。
アカントアメーバ角膜炎の症状
目の痛みや目やに・異物感などの症状があり、人によっては強い痛みを感じることもありますが、初期では自覚症状があまりなく、ゆっくりと進行します。そのため異変を感じて病院に行ったときにはかなり進行していることも少なくなく、また、初期症状が角膜ヘルペスや角膜真菌症と似ているため、診断が難しい病気と言われています。
進行すると慢性的な目の充血、強い痛み、視力低下が現れ、ひどい場合は角膜の中央が白く濁り、角膜に孔(あな)が開いたり視力低下が進行して失明に至ることもあります。通常は片眼の目だけにおこしやすい疾患です。
治療
アカントアメーバ角膜炎は、特効薬が開発されていないため、現在のところ抗真菌薬や消毒薬を点眼し、直接、アメーバに侵された角膜を削って取り除くという治療がされていますが、完治するまで数カ月かかることもあります。また、なんとか完治したとしても角膜に大きく傷が残ってしまい、視力が戻らないことがあるため、角膜移植術が必要となることもあり、難治性の病気とされています。
このようにアカントアメーバ角膜炎にかかると治療が難しいため、日頃から正しいコンタクトレンズケアを行い、予防をすることが最善策なのです。
アカントアメーバ角膜炎にならないために今日から出来ること
アカントアメーバ角膜炎を予防するには、まずはコンタクトレンズの管理や取り扱いが大事です。
きちんとケアしているつもりでも、最近主流の「MPS(マルチパーパスソリューション)」と呼ばれる洗浄と保存が一体型になったコンタクト用剤は消毒力が弱く、浸けておくだけではアカントアメーバにはあまり効果がありません。
アカントアメーバ角膜炎にならないために、今日から出来ることを行いましょう。
装用時間、使用期間を守る
コンタクトには適切な装用時間が指定されています。それを無視して長時間装用すると、当然角膜に負担がかかります。その結果、角膜を傷つけてしまい、傷からアメーバーが侵入するというリスクが発生するのです。トラブルの発生率が高いのは12時間以上の装用です。医師が指示する装用時間を守り、自宅に帰ったあとは外すなどして、長時間の装用は避けましょう。
また、1日や2週間、1カ月用のレンズを使用期間を過ぎて使うことや、つけっぱなしで寝てしまうことなどはもってのほかです。必ず決められた期間を守り、 新しいレンズに交換してください。
コンタクトを外す前に必ず手洗いをする
コンタクトを装用前、また外すときに手から雑菌やアカントアメーバがレンズに付着する可能性があります。必ず石鹸で手洗いをしましょう。
消毒液をレンズケースに継ぎ足して使わない
MPS消毒液を継ぎ足して使うと消毒力が低下します。必ず毎回捨てて新しい液を使ようにしましょう。
擦り洗いした後、レンズは両面をすすぐ
コンタクトレンズはしっかり擦り洗いし、物理的に雑菌やアカントアメーバをすすぎ流してから消毒を行うのが鉄則です。
指定された消毒時間を守る
決められた最低時間は消毒液に浸し、しっかり殺菌を行いましょう。
消毒したレンズはすすいでから装着する
取り出した後にすすがず装用するのもNGです。アカントアメーバは消毒だけでは完璧に除去されません。
レンズケースは使用後に水道水で洗い、乾かす
ケースは使うごとに必ず洗って、しっかり乾燥させましょう。アカントアメーバは乾燥に弱いのですが、乾燥していない湿ったケースにはアカントアメーバが生き残っている可能性が高くなります。
同じレンズケースを3カ月以上使わない
レンズケースを毎回キレイに洗っていてもアカントアメーバが完璧に除去できていない場合があります。長期間同じレンズケースを使い続けると残留しているアカントアメーバが徐々に増殖するので、レンズケースは3カ月に1度は新しいものに変えるようにしましょう。
3カ月ごとに定期検診をうける
医師によるコンタクトレンズの処方を守って装用していても、眼の状態は常に変化するものです。特にレンズを長期間装用している人は酸素不足で角膜内皮が減少するという可能性もあります。3カ月に一度は眼科医の定期検診を受けましょう。
近年コンタクトレンズは手軽に通販などで手に入ることもあって定期検診の受診者が減少、さらにコンタクトレンズの長時間にわたる装用や誤った使い方をして目のトラブルは増加しています。年間でコンタクト装用者の10人に1人はアカントアメーバ角膜炎だけではなく、角膜の傷や角膜潰瘍など角膜障害が発生しているとも言われています。
目は生涯必要な大切な器官です。長く目の健康を保ちながらコンタクトレンズ生活を続けるためにも、自身の使用法を見直し、目に合ったコンタクトレンズを医師に処方してもらうようにしましょう。
監修
医療法人湖崎会 湖崎眼科 副院長 湖崎 亮先生
近畿大学医学部卒
医学博士 眼科専門医
日本コンタクトレンズ学会 会員
日本角膜移植学会 会員
ARVO(The Association for Research in Vision and Ophthalmology)会員
ASCRS(The American Society of Cataract and Refractive Surgery)会員
※上記掲載の情報は、取材当時のものです。以降に内容が変更される場合がございますので、予めご了承ください。